悪役令嬢vs悪役令嬢
学校の教室で、アリエルから声をかけられた。
「エリス、ちょっと来てくれるかな」
「何かしら?」
「花壇が大変なんだよ」
急いでアリエルと一緒に、学校の校舎の裏に行く。
花壇へ行って目にしたのは、枯れ果てた花の姿だった。
「そんな…」
「今まで何も問題なかったのに…急にどうして…」
「これを見ておかしいと思わないかい?」
私は周りを見まわして違和感に気付く
「ここの花壇だけ枯れてる?」
「おそらく人為的なものだろうね」
「根拠は?」
「塩が撒かれていたのさ」
「でもどうして…花を枯らしても無意味だわ、誰も得をしないもの…」
「真の目的が花を枯らすことじゃないとしたら?」
アリエルの言っている意味が私にわからない
「君が手入れをしている花壇だからだと僕は考えている…つまり目的はエリス、君自身だと思う」
「私に対する嫌がらせって事?」
「そうなるね」
ふと私は考え込む
「心当たりは無いわ」
ローラを虐めていたグループが候補に浮かんだものの後ろ盾無しに行動するはずがない。
爵位は私の家の方が上なのだ。
私に対して何かの行動を起こすならば、私の家と同等クラス以上の貴族なはずだ。
今のところ、該当する人物には心当たりがない。
「これで終わりとも思えないし、しばらくは気をつけたまえ」
「ありがとうアリエル」
そう言ってアリエルと別れた。
「さてと…」
「私だったらお花を枯した後、何をするかなぁ…」
元祖悪役令嬢としては負けていられない。
「学校で私が困る事…制服を切り刻んだり、机や椅子をボロボロにするって言うのも良いわね」
私に直接しかけて来ないのならば、私に関わりのある物を壊して困らせる。
よくあるパターンだ。
私は教室に戻ると自分の机と椅子にこっそりと魔法陣を描いた。
対象の破壊をトリガーとして発動する魔法をトラップとしてしかけておく。
制服や教科書を含め、おおよそ自分の触れる物には次々と魔法をかけておく。
「どちらが真の悪か、格の違いを見せて上げるわ」
悪い事をするなら、悪役令嬢である私の右に出る者はいないだろう。
次の授業は体育なので女子更衣室で着替えをしていた。
周りを見回すと、女の子達が下着姿で着替えをしている。
「同性でも下着は気になるのよねぇ…」
主にデザインや色、材質と言ったものに興味が惹かれる。
下着は男の子に見られるより、女の子から見られる方がシビアなのだ。
「女の子同士の場合、デザインと品質チェックが入るから厳しいのよ」
「かと言って、下着姿をお見せするような殿方はいないのですけれども…」
前世ですら異性の前で下着姿になるような状況は発生していない。
「まぁこの話題は虚しいので触れないでおきましょう…」
ふとローラに視線が行く、最近ブラをつけるようになったので胸をさらけ出すような事はない。
ローラはクラスの女子から注目の的だった。
プロポーションを気にする女子がローラの胸を見るなと言う方が無理なのだ。
(うんうん、わかるぞ君たち。挫折と敗北感を味わっているのね)
ロッカーに制服を入れると、私は女子更衣室を後にした。
基礎体力作りとか言う運動の課題で、グランドをローラとランニングで周回してる。
「ローラ頑張ってー」
私は周回遅れのローラを励ましながら並走する。
「私が走れない体質だってわかってるでしょ…」
ランニングは巨乳に対して天敵ともいえる科目なのだ。
学校も酷い課題を学業に組み込んだものである。
私は胸の大きいローラが羨ましいのだが、逆にローラは私を羨ましがっていた。
巨乳にも数々のデメリットがあるらしい事は聞いている。
このランニングが苦手なのもデメリットのひとつなのだけど。
「それでもローラの胸にはあこがれるわよね…」
その時突然、校舎で女性の悲鳴があがった、方向的には女子更衣室の近辺だ。
(やっぱりそう来たか)
私が駆けつけるとトラップの被害者が更衣室の床に座り込んで居た。
私の制服を切り裂いたのでトラップが発動したのだ。
発動したトラップはモンスター召喚。
召喚対象はスライムだ、もちろん肉食のスライムは召喚しない。
それでも、女の子が魔物に襲われたのだ、悲鳴ぐらいあげるだろう。
あと、スライム系の魔物と接触するのが苦手な女の子が多い。
蛇が毒の有無にかかわらず嫌らわれるのと同じで、有害無害の区別なく嫌われる生き物のひとつだったりする。
召喚したスライムは粘度の高い白濁の体液を吹きかけると言う攻撃をしてくる。
対象者は白濁の体液まみれになると言うトラップだった。
その女の子は顔や衣服に粘度の高い白濁の体液をかけられ放心していた。
集まった野次馬が騒がしくなる
「どうして校舎に魔物が…」
と声がする
「あ、これ私のペットなの」
と私は取り繕った。
実際、肉食でないスライムならばペットにする人も一定数居るのだ。
「学校にそんな物持ってくるんじゃありません!」
と女教師に怒られた
「この娘を保健室に運びまーす」
と言って、2人でその場を離れる。
校舎の誰も居ない所へ行く
「貴女、お名前は?」
「カーラ・マンデイよ」
「どう言う事か、説明してくれるかしら?カーラ」
「単純に貴女が気に入らなかっただけよ」
「どうして?」
「貴女、男子に注目されてるでしょ」
「はい?」
(むしろ悪い噂されて困ってるんすけどぉ)
「貴女が花壇に行くと男の子が群がるじゃない」
あれは私がスカートで体育座りをしているからだ
(ちゃんと足を見えない角度にしてガードしてるつもりだったけど、見放題だったのかしら…)
男の子が注目しているのは私じゃなくて、私のパンツだろう。
「そんな理由で花壇のお花を…」
「男の子の視線を独り占めする貴女が気に入らなかったのよ」
(くっ、事実を伝えるのは負けのような気がする…)
「あんなに熱心な視線は見た事はないわ、みんな貴女に夢中だった…」
「気に入らないわ、貴女と私に、どんな差があると言うの!!」
(パンツが見えるか、見えないかだよ!)
カーラには、私の物には魔法がかかっているので、手出しをしたらまた酷い目に遭うぞと脅しておいた。
安全な魔物が召喚される保証はどこにもないのだ、この次は命に関わる魔物が召喚されるかもしれない。
そのリスクを考えれば手出しをしようと考えるよりは諦めた方がマシなはずだ。
そう言う趣旨の話をカーラにしたのだ。
カーラと別れて、更衣室に戻る。
試しに切断された制服を着てみたが、制服は上着の丈が異常に短い。
ヘソ出しルックな上に、スカートの長さはタオルを腰に巻いたような長さしかない、これでおじぎをしたら後ろでパンツが全開になるパターンだ。
初めて会った時のローラと同じ恰好になっていた、これで下乳がはみ出さないのはさすが私と言う所だろう。
「どう言う切り裂き方をすればこうなるのよ!」
(この世界では普通の恰好、この世界では普通の恰好…)
とりあえず自分に言い聞かせてみたが、前世での常識を持っている私はどうしても恥ずかしくて赤面してしまう。
新しい制服が仕立て上がるまでは、数日はこの恰好のままなのだ。
(なんと言う罰ゲーム)
その後、リリスからこんな忠告が届いた。
「カーラは、貴女を破滅させる事のできるキャラクターの一人よ、破滅フラグに気をつけなさい」