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勘違いしないでよね

校庭でマリーと出会った。


「今日はパンツ履いてないよ、全部洗濯しちゃった、てへぺろ」

(またお前かー)


「なんだかスースーするー」

とマリーは、スカートをヒラヒラさせる。

(おいヤメロ)


美少女がそんな事をすれば、どうしても男子生徒の視線を集めてしまう。

(マリーは男子を空気ぐらいにしか思ってないから困るのよねぇ)


マリーを女子更衣室に連れて行こうと思い

「とりあえず、校舎の中に入りなさい」

と言ってマリーの手を引く


校舎の入口付近にさしかかった時、突然、突風が吹いたのである。


ラッキースケベが発動したのだ。


(迂闊、私とした事が……履いてないと言った時点で気付くべきだったのに!)


ノーパンの女の子に何事も無く、無事に過ごせましたで終わったら、ガンジーでも助走をつけてゲームディスクを叩き割るだろう。


マリーのスカートが太ももまでめくりあがり、更に上昇を続ける


とっさに私は閃光魔法を発動した。


チェレンコフ光(閃光魔法)!」


辺り一面、激しい閃光に包まれ背景が真っ白になる。


「目がぁー、目がぁー」

マリーに注目していた数人の男子が、顔を両手で覆って転げまわった。


「ふー、なんとか間に合ったわね」


男子の視力と引き換えに、この世界の平和は守られたのだ。



その日の夕方、急に天気が変わって雨が降ってきた

「困りましたわ、今日は傘を持ってきていませんのに…」


これからどうしようかと考えていると、隣からスっと傘を差し出された。


「これを使いなさい」


そこに金髪ツインテールの女の子が立っていた。


「かっ…勘違いしないでよねっ」

「べ…別にアナタのためなんかじゃないんだから!」


(ツンデレ、キター)


名前はソニア・ブロドリック、魔法学校高等部2年生なので先輩である。

プロフィールを取得したと言う事は攻略キャラなのだろう。


先輩は傘を1本しか持っていないみたいだ。

「でも、1本しか無い傘を私が使ったら、先輩がお困りになるのでは?」


「先輩の言う事が聞けないって言うの?アナタ生意気ね…」


「でも…」


「なっ、なによ、先輩の私に逆らう気?」


「そこまで言うのならお借りしますわ、後でちゃんとお返し致しますので…」


「アナタ、バッカじゃないの?そんな傘なんていらないわよ」

「デザインが気に入らないから、捨てようと思ってた所だったのよ」


「本当よ?」

と言って、チラチラ私を見てくる


「先輩は、お優しいのですね」


「ホラ、また勘違いしてるぅー、そう言うの困るのよねっ」

「とにかく、返す必要なんてないわ、いらないゴミをアナタに押し付けただけよ」


と言って去って行った。


(ああ、今日はとっても良いもの(ツンデレ)が見れた…)

とほっこりする私だった。



ローラが虐められていた事件から数日が経ち、今ではすっかりローラと仲良くなっていた。


「私の事はローラと呼び捨てにしてください」

とローラから懇願された


「わかったわローラ、じゃあ私の事もエリスと呼び捨てにしてくださいな」


「それはさすがに…」

下級貴族が上級貴族を、呼び捨てにできないと抵抗されたが


「交換条件よ、ローラ」

と言って渋々承諾させたのだ。

それ以来、お互い「さん」付けはしなくなった。



「今日はエリスにお弁当を作って来たのよ、お昼、ご一緒しましょう」

「それは楽しみですわ」


「ねぇローラ、最近はどう?また虐められてないかしら?」

「大丈夫よエリス、私を虐めていたグループは解散したらしいわ」


「まぁ知らなかったわ」

「リーダーの女の子が転校してしまったのよ、その後、すぐ解散になったみたい」


つまり、リーダー格の女の子の権力が消えた結果、グループの後ろ盾がなくなって解散したのである。


「まぁ、転校するような事情が、何かあったのでしょうか…」

エリスは自分が関わっている事に気付いていなかった。


「もし、また虐められた時には、私に相談してくださいね」


「ありがとう、エリス」

と言ってローラに抱きしめられた。


「ギブ…ギブ…」

いつか見た光景が繰り返される。



「ローラはソニア先輩をご存じかしら?」

「ええ、知っているわ、私も助けて頂いた事があるので」


ローラが廊下を歩いていた時、制服のボタンが弾け飛んだらしい。

そこにソニア先輩がお裁縫セットを持って駆け付け、ボタンを縫い付けて直してくれたそうだ。


ローラがお礼を言うと先輩は


「勘違いしないでよねっ」

「貴女は私の、お裁縫の実験台にされたのよっ」

と言って走り去って行ったらしい。


「あの時は先輩に助けられたわ」

「そうだったの…」


「ところでローラ…()()()()()()()()()()()って、本当ですの?」

私は血の涙を流していた。


「ローラは先輩のクラスを知ってるかしら?お会いしてお礼を言いたいわ」


「クラスは確か、2ーBね、私もお礼を言いたいから同行させて」

「では、一緒に行きましょう」


先輩の教室へ行くと、ソニア先輩は数名の女子に囲まれていた。


先輩を囲んでいる女子は

「ソニア先輩、ありがとうございました」

と口々にお礼を述べている。


「まぁ、貴方たちも先輩に親切にして頂いたのですね」


「私は手作りのクッキーを分けて頂きました」

「作りすぎたのよ、全部食べたら太っちゃうじゃない、私を太らせる気なの?」


「私は泣いている時にハンカチで涙をぬぐって、励まして頂きました」

「私が泣かせたと勘違いされるじゃない、私が後輩を泣かせたって噂されたらどうするのよ!」


「私が足を挫いた時、保健室まで背負ってくれました」

「ダイエットの運動中だったのよ、私にダイエットさせないつもりなの?」


「椅子が壊れた時に直してくれました」

「DIYにハマっていたのよ」


「ラベリスト山で遭難した時に救助してくれました」

「たまたま近くでキャンプしてたのよ」

(ラベリスト山って確か8千メートル級の山よね…)


あちらこちらから感謝の声が聞こえる

「ヤキソバパンを買ってきてくれました」とか

「恥ずかしくて買えないBL本を、かわりに買ってきてくれた」とか


(あれ、パシリにされてない?)


私は借りた傘を先輩に返却して丁寧にお礼を言った後、教室に戻った。


半分眠りながら聞いていた歴史の授業が終わる頃、やっとお昼休みの時間になっていた。


今は教室でローラと一緒にお弁当を食べている。

話題は必然的にソニア先輩の話になった。


「ソニア先輩は立派な人だったわね」


「それにとっても優しい人よね」

「初対面の時はとまどったけど、今では一番尊敬する先輩なのよ」

とローラは言った。


彼女はあの言動と態度のせいで、初対面の人からは敬遠されがちだった。

私にはどうしてあんなにツンツンしてるのかわからない。


私はソニア・ブロドリックのプロフィールを把握しているので、彼女の影の努力を知っている。


貴族が裁縫とか、椅子の修理なんてできるはずがないのだ。

あれは、困っている人を見て助けになりたいと思った彼女が、努力して身につけた技術だったのだ。


(本当、いい人なのに、素直じゃないのよね…)

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