プロローグ
私は東雲涼花20代後半の独身OL、世間で言う腐女子に分類され、オタクと言われる女子である。
乙女ゲームの収集をし、2.5次元のミュージカル舞台に足繁く通う日々を過ごしていた。
そんなある日、ふとぼんやり眺めていたテレビに深夜アニメの新作が流れていた。
それは女の子が悪役令嬢になって乙女ゲームの世界に転生した恋愛ストーリーだった。
「世の中ではこう言うラノベ流行ってるのかしら…」
荒唐無稽な話ではあるが、自分がイケメン男子に囲まれてチヤホヤされる、そんな世界も悪くはないと思ってしまう。
そんなアニメの設定に惹かれた涼花は、毎週リアルタイムで視聴する程度にはハマっていた。
ある日、アニメの第5話の視聴を終えた後で、少しお酒を飲んだらそのまま寝てしまったのだ。
だが朝目が覚めた時、時計を確認して青ざめる、目覚ましをかけ忘れたのであった。
「大変!会社に遅刻しちゃう!」
急いで着替えて家を出る、朝食は抜きだ。
全力疾走で駅に向かっていく。
「このままだと間に合わないわね、ショートカットするしかないか」
普段は通らない道を走り抜ける。
何本目かの交差点にさしかかり、信号のない横断歩道を全力疾走で駆け抜けようとしたその時だった。
横断歩道にトラックが突っ込んで来たのである。
「あっ」
と思った時は既に遅かった。
薄れゆく意識の中でふと思い出したのは乙女ゲームの世界に転生するアニメの話だった。
「もし…かしたら……私も……」