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83 第一章
前回のあらすじ
司祭様マジ強い。
ところ変わって、ここはギルドの執務室。
今俺は、ここに司祭様と対面になるように、ソファーへと腰を下ろしていた。
お互い沈黙続きで何やら気まずい。
早く来てくれ、ロココちゃん! と俺の心がそう叫びそうになった瞬間。
「……あなたはなぜここにいるのですか?」
司祭様の綺麗なソプラノボイスが俺の耳へとすっと入ってきた。
なんて可憐な声なんだろう。
思わず聴き入ってしまいそうになってしまったぜ。
「……それは俺にもわからん。理由なら、ロココちゃんに聞いてくれ。俺は彼女に呼び止められてここにいるだけだからな」
俺がここにいる理由を完結にまとめていってみた。すごい俺、マジで要約力抜群。
その俺の返事に司祭様は怪訝なお顔をあらわにする。いや、美女は怪訝なお顔でも美女だな。その表情もまた美しかった。
だが、何だ。この司祭様はなぜもまあ、あの冒険者然とした男を貶していたのかが気になるな。ちょっと探りを入れてみるか。
「しかし、まあ、何だ。司祭様はどうしてあの男をボロクソに言っていたんだ? 何か悪いことでもされたのか?」
すると、司祭様は怪訝な表情から真面目に表情になる。
「……私はとある迷宮に潜るために強い冒険者を探しています。なのでこのギルドに依頼を出したのです」
ああ、確かミミカちゃんがそんな事を言っていたな。
「それで実力のほどをはかるため、一緒に討伐依頼を受けたのですが……」
「まるで話にならなかったと?」
「はい、そうですね。あの実力では迷宮の第一層すら危ういでしょう。あの程度の男でもここのギルドではCランクなのですから死なれては困るでしょう?」
「……まあ、それは確かにな」
へえ、この司祭様、意外にもあの冒険者の男の心配をしていたんだな。だけど言い方がキツすぎるのはイカンと思うが。
「それで司祭様のお眼鏡に叶う冒険者はいたのか?」
「……………………」
俺の問いに司祭様は眉を潜めた。
どうやらお眼鏡に叶う冒険者はいなかったらしい。返事を聞くまでもなく顔を見ただけでわかる。
「……その様子なら、いなかったようだな」
「ええ、でも期待している冒険者はいます」
「へえ、それは名前を聞いても?」
司祭様のお眼鏡に叶う冒険者がいたとは驚きだな。
「マナブという冒険者なのですが、あなたは心当たりはありませんか?」
この司祭様はどうやら俺のことを御所望らしい。このような美女に望まれるなんて嬉しい限りです、はい。
しかし、今までの話を察するに、この美女はもしかしてシスターシアンの友人のモニカではないだろうか?
シアンが言っていた通り、プレ教の司祭様で高ランクの冒険者を探していて、そして迷宮に潜ると言ったら、もうこの美女がモニカで間違いない。
うーん、ここで俺がマナブだって事を普通に言っても面白くないからな。
ここは少しとぼけてみるか。
「……いや、知らないな。そのマナブという冒険者がどうかしたのか?」
司祭様は少しだけ悩むようなそぶりを見せると、ゆっくりと話し出す。
「……私の友人が言っていたのです。「信頼できて強い冒険者を探しているのならマナブさんを頼ってみてはいかがですか?」と言われたのです」
「……………………」
シアンはそんな風に俺のことを伝えてくれていたのか。これは嬉しいぞ。
嬉しすぎて思わず涙がちょちょぎれるところだったわ。人伝に褒められるって何だがハッピーな気分になれるね。
「だが、そのマナブだってまだCランクになったばかりの冒険者だぞ? 司祭様、あんたがさっきボロクソに言っていたやつも同じCランク何だが、そこのところはどう思っているんだ?」
俺の問いに司祭様はゆっくりと頷くとこれまた綺麗な声で話し出す。
「ええ、確かに友人も確かにそう言っていましたが、同じCランクでもピンキリでしょう。強い方もいれば、先程の冒険者のように弱い方もいます。それに私は実際にこの目で見たものしか信用しないタチなので」
はっきりとした声でそう言った司祭様。
その表情は真剣なものだった。
俺はソファーへともたれかかりながらこういう。
「……まぁ、確かにそうだな。人聞きの実力よりも実際に見た方がそいつの実力もわかるってもんだ」
「でしょう? だから私は一度マナブさんのいう方とお手合わせを願いたいのです」
「お手合わせ?」
何やら真剣な表情で剣呑な事を言っている司祭様。
お手合わせって俺と戦いたいってことか?
いやいや、まてまて。
俺は女性には手を上げない主義なんだ。
ワ◯ピースでいうところのサ◯ジみたいなポジション。あと信念。
そういう感じだから、俺はどうにか断る方向へと頭を捻っていると司祭様から声が上がる。
「お手合わせといっても、軽いものです。ただ数回打ち合うだけの」
「そうなのか? だが先程の冒険者とのやり取りを見るに少し不安があるんだが? そのマナブという冒険者がボコボコにされてしまうのではないか?」
まぁ、実際問題、俺をいくら殴ろうが蹴ろうが全くの無傷だろうけどな。
神様印のチートをなめてもらっちゃ困るぜ。
「いえ、そのようなことはしません」
「本当か?」
「はい、少し骨が折れるくらいだと思います」
「……いや、十分にそんなことなんだが……?」
真摯な眼差しでそう言われてしまった。
だが、いくら純粋な目で見られても、骨を折られるのを黙って許容する奴なんてこの世にはいない!(M男はのぞく)
俺はM男ではないので、ここは遠慮させていただ来たいところです。
俺がそう心の中で思っていると、司祭様はキョトンとした表情で俺を見つめていた。
「え……? もしかして骨が折れたあとの心配ですが? それなら心配ありません、私が責任を持って《治癒魔法》で治して差し上げますから」
「《治癒魔法》……か」
少し自慢げにそう呟いた司祭様。
まぁ、気持ちはわからんでもない。
この世界で《治癒魔法》のスキルはかなり重宝されるそうなのだ。
小さい頃にその《治癒魔法》の片鱗を見せるだけでも教会やら何やらが来て、その子供を引き取りに来るらしいからな。
その際に結構なお金を両親に払ってくれるのだと。この前シアンとお茶している時に聞いた。
「はい、ですのでいくら怪我しようが私が治して見せますので、全く問題ないですよ。骨が折れても、内臓が飛び出ても」
うへぇ、ちょっとそんなグロテスクな表現はやめてほしい。俺、グロ耐性あんまりないんだから。耐性なさすぎて血を見ただけで倒れるレベル。献血とかアホなん? 俺は絶対に無理だ。
親にもらった体を傷つけるわけにはいかないからな!
「いや、さすがにそこまで激しい戦闘はしないだろう? いくら治るといっても」
「ですが、本気でやっていただかないと迷宮へ潜った時に私が困ります。それにそのマナブさんももしかしたら死んでしまうかもしれませんして……」
なかなかに優しい理由だった。
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了




