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前回のあらすじ
ミミカちゃんとおしゃべり
今まさに噂の司祭様は、一人の冒険者といい争っていた。
何を言われたのかと聞きたいくらいに男の冒険者の方は怒声を発しながら感情をあらわにしている。
顔とかすんごく真っ赤になって血管がぶち切れそうになるんじゃないかってくらいに。
「……マナブさん、司祭様が心配です。すみませんが、どうか仲裁してきていただけませんです?」
冒険者然とした男のあまりの怒りのむき出しように、司祭様が心配になったのか、ミミカちゃんが不安げな表情で俺にそう言ってくる。
正直面倒極まりないが、ここは美少女であるミミカちゃんの頼みだ。断るのは野暮ってものだろう。
「ああ、まかせておけ」
俺は二つ返事でそう言ってニヤリとニヒルに笑う。
決まった。
これはもうミミカちゃんが惚れてしまうだろうな(ありえない)。
ネコ耳獣人美少女の不安げな視線を背中に受けながら、俺は口喧嘩をしている二人の元へと近く。
近くで見ると、司祭様のお顔はとんでもなく整っていた。
サラリと伸びる髪は艶のある桃色。
瑠璃色の瞳は鋭く男の冒険者を睨んでいるが、その瞳がまた彼女の魅力を引き立てていた。
そして法衣を持ち上げる胸部はなかなかのものだった。さすがにシスターシアンの神乳に比べると見劣りするが、この司祭様もなかなかどうしていいものをお持ちである。
手に持つ錫杖も黄金色の輝きを放ち、とても高級そうに見える。
俺はしばらく、この司祭様の魅力あふれるお胸様に目を奪われていた。
すると、男の方が近づいてきて、ギロリと効果音が鳴りそうなほど力が入った目で俺を睨みつけられた。
……何この血走った目、こわっ。
しかも、睨むだけで何も喋らないのが、またこわい。コミュニケーションをはかるにはまずは自分から積極的に行くことが大事だ。
ここは俺から話しかけることにしよう。
「おいおい、ここは言い争いをする場所じゃないぞ」
「うるせえっ!! すっこんでろ!! おめえには関係ない事なんだよ!!」
唾が飛んできそうなほどの距離で睨めつけられる。
正直この距離で喋りかけないで欲しい。
俺のパーソナルエリアに滅茶苦茶入り込んでいるんですけど!
半径三メートルは近づかないで欲しい。
俺のそれほどの距離感を所望する。
「いや、関係なくないな。その女性は俺の知り合いなんだ」
「だからなんだよ!! そんなの関係ねえ!! こちとらそのクソアマに謝罪してもらわなきゃ気が済まねえんだよ!!」
「謝罪……?」
この厳つい顔の冒険者は何を言っているのだろうか? 美少女であるこの司祭様に謝ってもらうことなんてないだろうに。
美少女に謝ることはあっても、謝らせることなんてことはない。美少女のいうことは絶対厳守。だから美少女というのは人生イージーモー ドなのだ。
俺が心の中で訳のわからない持論を展開していると、冒険者然とした男が大声で声を上げる。
「そうだ!! 謝罪だ!! そのアマ! 俺のことをザコとかゴミだとか言いやがった!! 絶対に許せねえ!!」
「……なるほど」
ザコ……それとゴミ……ね。
一体どんなことをすれば、そのようなことをいわれるのかちょっと興味が湧いてきた。
しかし、この美少女である司祭様から言われたのであれば、ご褒美だと思うやつもいるんじゃないのか?
しかし、どうやらこの男にはご褒美にはならなかったようだな。この男はドMではないらしい。今回は運が悪かったね。
俺が厳つい顔の男に冥福を祈っていると司祭様が挑発的な声で男へと言葉を放つ。
「……ザコやゴミにそう言って何が悪いのでしょうか? あなた程度の実力でCランクになれるのであれば、誰だってCランクになれるのではないでしょうか」
「……てめえっ!!」
男の顔にピキッと青筋が浮かんだのが見えた。
顔面に青筋が浮き出るほど怒るって相当興奮しているようだ。これはマジで切れる五秒前かもしれん。
しかし、この男もCランクだったのか。
何だが親近感が湧いてくるな。自分と同じランクのやつに会うとな。
「何でおめえにそこまで言われなきゃいけねえんだよ!! 少し顔がいいからって調子に乗ってんじゃねえぞ!!」
「別に調子に乗っているわけではないわ。私はただ事実を言ったまでよ。あと別に私の容姿を褒めてくれなくてもいいわ。あなたみたいな実力もない人に褒められても、ちっとも嬉しくないから」
うわっ、司祭様マジで辛辣だな。
そこまで言わなくてもいいのに、何だが同じ男としてあの冒険者の男のことがかわいそうになってきた。
司祭様の言葉のナイフを受けて、男は額の青筋がさらにピキピキと立ち上がる。
「……ふ、ふざけやがって!!」
男は拳を握りしめると、司祭様に向かって殴りかかった。
司祭様に迫る拳。
俺が止めに入ろうと、体を動かす前に司祭様の体がブレて、男の拳を難なく交わした。
あれ? もしかして司祭様、意外とお強いのかもしれない。
そして、その司祭様は男のガラ空きとなった背中に錫杖の先をたたき込んだ。
「──グッ!」
苦しそうな声を上げ、派手な音を立てて倒れる男。
……いや、あれは痛そうだ。何てったってあの固そうな錫杖がめり込むほど叩き込まれていたからな。本当にかわいそうだ。あれ、立てるかな。
「私に触らないでください、汚らわしい。これだから男の人は嫌なのです」
衣服をパンパンと手で払いながら、嫌悪をまるで隠そうとしない表情を男へと向けている。
が、その男はというと床に倒れたまま、全く起き上がる気配が無い。
……死んでいるんじゃ無いのか?
「……うぅ」
あ、生きてた。
呻き声をあげた男は背中を打たれた痛みなのか、全く立ち上がれない。
「おいおい、なんだなんだ?」
「喧嘩か?」
ざわついていた周りが、さらにざわついてきた。司祭様を囲うように、酒盛りをしていた冒険者や街の野次馬根性逞しい奴らがわらわらとあつまってきた。いわゆるザ・ヒマジンというやつである。
「何何〜? この騒ぎは〜」
そしてそのザ・ヒマジンの群の中から現れる一人の美少女。
銀髪をはためかせながらやってきたのは、我らがギルドマスターのロココちゃんである。
「ロココちゃん、来るのが遅かったな。司祭様と冒険者の男のバトルはもう終わってしまったぞ。司祭様の圧倒的な勝利でな」
「あらら、それは残念だね」
俺の軽口に、ロココちゃんは少しだけ困ったように笑ったがすぐにいつもの笑顔に戻った、
「でもギルド内での揉め事はご法度だよ。一応話を聞きたいから奥の部屋まで良いかな?」
「ええ、構わないですよ」
ロココちゃんが司祭様へそう告げると、司祭様は意外にも素直に頷くと、そのまま奥の部屋へと歩いていった。
俺はその後ろ姿を眺めていたら、ツンツンと脇腹を突かれた。
その方へと顔を向けると、そこにはにっこり笑顔のロココちゃんがいた。
「……何だ、まさか俺も一緒に行かないといけないのか?」
「そのまさかだよ♪」
「おいおい、勘弁してくれよ。俺はただ喧嘩の仲裁をしようとしていただけだぞ?」
「まあまあ、マナブくんもあの司祭様とは無関係ってわけでは無いと思うからさ。ちょっと話を聞くだけで良いからついてきてよ」
「……無関係じゃない……? それはどういうことなんだ?」
「それは、あの司祭様に直接聞いてみてね♪」
ロココちゃんの意味深な視線。
少しだけ、気になるな。
しょうがない、今日の依頼は諦めて、あの司祭様とちょっと話してみるか。
「あ、そこに倒れている冒険者君は医務室に運んでおいてね〜♪」
ロココちゃんの軽い声を後ろで聴きながら。
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了




