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頑丈チートで異世界最強!  作者: 瀬戸くろず
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79 プロローグ



前回のあらすじ

 エメさんご乱心




「ふう、エメさんにはすこし悪いことをしたかな」


 エメさんを抱き枕にした日の昼下がり。

 俺は依頼を受けるためにギルドへと向かっていた。


 結局あの後、シルクちゃんのまざり昼近くまで一緒に寝てしまった。左右を金髪の美幼女、美少女に囲まれて、幸せな二度寝を体験できたことに喜びもひとしおだ。


 その状況を思い出すと、ついつい顔がにやけてしまう。……はっ、いかんいかん、こんなにやけた顔をしていたら母親に手を握られた幼女に「お母さん、あのお兄ちゃん歩きながらニヤニヤ笑ってるよー」からの「しっ! 見ちゃいけません!」のコンボを食らってしまうところだった。ふー危ない危ない。


 そうして俺が額の汗を拭っていると、


「……もしかして君はマナブくんではないかな」


 ふと、俺の後ろから渋い男の声がかかる。


 ……何だ? 俺に話しかけてくる男がいるとは驚きだなと、声の方向へと顔を向けると、そこには厳めしい面構えをしたがっちりとした体格の大男が立っていた。

 そして、その後ろには仲間の冒険者であろう複数人がこちらへ見て佇んでいた。


 大男はミスリルのフルプレートに、腰には大振りの剣を携えている。

 一目見ただけで強者だとわかるオーラのようなものを纏っていた。


 ……しかし、俺にこんな知り合いがいたか? 頭をフル回転させて記憶を探っていると、大男の方から助け舟が出された。

 

「……忘れてしまったのか? ほら、水精霊の水辺でバジリスクの処理を私に頼んだだろう?」


「ああ、あの時の。……確か、イルガだったな?」


 そう言われてやっと思い出した。

 バジリスク討伐をした時、持って帰るのが面倒だし、あの水辺に放置しておくものいかんと思って後処理を頼んだ人か。


 何だか、久しぶりすぎて忘れていた。

 しかしまあ、この人もよく俺のことを覚えていたものだな。


「そうだ、ようやく思い出してくれてようだな」


 厳しい顔で笑うイルガ。

 ……失礼だがその顔を見たら子供が泣き出しそうなほど怖かった。

 口には決して出さないが。


「それで、俺に何か用か?」


「まあ、すこしだけな。ちょっと今から話せないか?」


「それは別に構わないが、後ろの仲間たちはどうするんだ? 俺はあまり大人数でいるのは好きじゃないんだが」


 知らない人とってのが後につくけどな。

 知っている人が一人しかいない集まりとかに呼ばれてら、マジ地獄だ。その知っている人が誰かに呼ばれたら、後に残るのはぽつんと取り残された俺一人だけ。これはマジ泣ける。


「いや、あいつらは気にしなくていい。先にギルド言ってもらうからな」


 そう言うと、イルガは仲間たちの元へ行き、一言二言喋ると、仲間たちはギルドのある方向へと歩いていった。


「待たせたな、では行こうか」


「いや、いい。それよりどこで話す?」


「それならうってつけの場所がある、ついて来てくれ」


 イルガはそう言うと、またニヤリと笑った。

 ……だからその顔は本当にやめたほうがいいぞ。と心の中で注意しておいた。







「ここだ」


 そう言ってイルガが指をさした先には、シックな雰囲気の酒場だった。


 二階建てのやや奥行きのある木造で、一階が酒場になっているようだ。通りに張り出すようにテーブルやイスが何席か並んでいる。


 なかなか酒場に行く機会がなかったため、よくわからないが、結構良さげな酒場な気がする。周りの建物とかと比べても、この酒場は一番大きいし、一番いい作りをしている。素人目の俺から見てもそう思えた。


 酒場の名前は『銀杯亭』


 建物の壁にかかる大きな看板を目にしながら、俺とイルガは店内へと入る。


 店内はまだ昼だと言うのに、結構な人で賑わっていた。酒をあおるもの、食事を楽しむもの、それらをしながら談笑するものがワイワイと楽しげにしていた。なかなかに悪くない雰囲気の酒場だ。


 すると、こちらへと向かってくる一人のウエイトレス。紺色のすこし膝上のジャンパースカートがいい雰囲気を醸し出していた。


 こちらを見て、にっこりと笑顔を向けるとハリのあるいい声を張り上げる。


「いらっしゃいませ! あ、イルガさん! この間は薬草ありがとうございました」


「いや、いい、依頼のついでだからな。それよりいつもの席は空いているか?」


「はい! もちろん空いています! ではご案内しますね」


「よろしく頼む」


 笑顔がまぶしいウエイトレスさんについて行くと、そこはこの酒場の隅の席。

 仕切りがあり、周りからの視線が気にならない俺好みのいい席だ。


 俺とイルガは向かい合うように、その席へと座るとウエイトレスさんが「ご注文は何に致しましょうか」と言って来た。


「そうだな、マナブくん。この店のアップルパイは絶品なんだが、どうかな? 甘いものとかは苦手ではないか?」


 厳つい顔のイルガからアップルパイという言葉が出てくるとは思いもしなかった為、すこし笑いそうになってしまった。 

 ……やばい、今の俺、顔が引きつっているかもしれない。なんとか顔面のひきつりを誤魔化そうと努力し、返事をする。


「……ああ、それで構わない」


「わかった。ああ、あと何か適当に飲み物をつけておいてくれ」


「かしこまりました」


 ウエイトレスさんはそういうと、ジャンパースカートを翻し、奥へと引っ込んでいった。

 その後ろすがたを眺めつつ、俺はイルガへと話しかける。


「それでイルガ、俺をここに連れて来た理由はんだ? 別にあのウエイトレスと良い仲なのを見せびらかしたいわけではないんだろ?」


「まあ、そうだね」


「なら、何の用なんだ?」


 イルガはまたにやっと笑うと、喋り始める。


「いや何、将来有望な冒険者に唾をつけておこうと思ってね。何でも今回Cランクに上がったそうじゃないか。おめでとう」


 そう言って、かしわ手を打つ。


「……やけに耳が早いな。俺が試験を突破してからまだ数日しかたっていないぞ」


「それだけ君に関心があるってことさ。それよりマナブくん、単刀直入に聞くが、私のパーティーに入る気はないかな?」


 熱の入った眼差しで俺を見つめるイルガ。


 ……一体何を企んでいるんだこいつは。何を考えているのかさっぱりわからん。イルガと会ったのはあの水精霊の水辺で一回だけだぞ? なぜそこまで俺に構うのか。


「……気持ちはありがたいが、俺はすでにパーティを組んでいる奴がいる。だからイルガ、お前のパーティに入ることはできないな」


「もしかしてレンという冒険者かな? マナブくんと一緒にランクアップ試験を受けた」


「……そうだが、よく知っているな。一体どこまで調べているんだよ。気持ち悪いな、ストーカーかよ、直接聞けってんだよ」


「気を悪くさせたのであればすまない。どうも昔からの癖でな。つい興味をひかれる相手は調べてしまう。これからは直接聞くことにする」


 俺の失礼な言動に特に怒るでもなく、さらっと謝罪したイルガ。

 年下の俺の無作法も特に気にした様子もなく流してくれるとは、この強面のおっさんはもしかしたらなかなかにいいひとなのかもしれない。


「……いや、俺もずいぶんと失礼なことを言った。すまん」


 そう言って、頭を軽く下げる。


「いやいや、マナブくんが謝ることなど何もないぞ? 全面的に私が悪かった。人のことを勝手に調べたのだからな。すまない」


 イルガも一緒に頭を下げる。

 そうしてしばらく頭を下げあっていると、


「お待たせしました! こちらアップルパ──ってどうされましたか? お二人とも頭を下げあって?」


 ウエイトレスさんに俺達の頭の下げ合いを目撃されたのであった。

 




 読了いただき、ありがとうございます。


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