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頑丈チートで異世界最強!  作者: 瀬戸くろず
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「さてさて、三日分くらい買っておけば良さそうだな」


 先ほど、シルクちゃんにコーポリ山脈へはどの位の時間で行けるか聞いたところ、何でも徒歩で往復三日程で行けるらしい。


「三日分の食料ってそこそこ重量があるなぁ

〜」


 干し肉やら他に保存の効きそうなものを買い込んでいく。果物とかもあったら良さそうだなぁ〜。ドライフルーツとか無いのだろうか? りんごとかみかんとかないかな?


 流石に無いかと思ったが、探せばあるものだ。あった。流石はおれ。ドライフルーツを購入し、食料品は全て揃えきったのでシルクちゃんの家を目指す。


「お兄ちゃん、お花、入りませんか?」


「花?」


 するとそこにおれに辿々しく声をかける幼女がいた。

 籠いっぱいに白い花を詰めている。何の花だろうか? 


「これは何という花なんだ?」


 おれが質問したのが嬉しかったのか、幼女はパァァッと表情を豊かにする。


「は、はいっ! この花は《ヨドシダ草》ですっ! 白い花が綺麗、ですっ!」


 なんか、精一杯って感じがする。なんて可愛らしいんだ。これは全部買ってしまうしかないようなだな。幸い懐が暖かい。


「偉いな。そんなに小さいのに。お母さんのお手伝いか?」


「ううん、わたしお母さんいないの」


 な、なんだと!? これが噂に聞く孤児というやつか……。実際目の当たりにすると可哀想としか言葉がないな。


「そ、そうか。この花は君が自分で取ってきて売っているのか?」


「ううん、この花はシスターが取ってきてくれるの」


「シスターか……」


 孤児院でもやっているのだろうか? シスターが居るってことは。まだまだこんな子がたくさんいそうだな。まぁ、全員を助けることはできないけど、この花を買えば少しくらい助力になるだろう。


「この花は何かの材料になるって言ってたけど……ごめんなさい。忘れちゃったの」


「いや、大丈夫。気にするな。お手伝いしている時点で君は偉いよ」


 頭を撫でる。にへへ〜っと可愛らしく綻ぶ表情。い、癒される〜。急いでいるのにずっと撫でたくなる頭だ。


「ところで、この花は幾らだ?」


「一束で銅貨十枚だよっ」


 見たところ籠には二十束くらいあったが、その位であればおれの稼ぎで全部買うことができる。


「んじゃ、全部貰おうかな」


「えっ!? いいの!?」


「あぁ、おれはたんまり稼いでいるし、使うあてもないからな」


「ありがとう! お兄ちゃん!」


 幼女はそう言うとおれに抱きついてきた。これだけでも花を買った甲斐がある。子供はやっぱり体温が高いのか、ポカポカする。癒しだなこれは。だが、あまり食べていないのかガリガリだな。これは宜しくないな。


 腰辺りに抱きついてきた幼女の頭を撫でる。なでなで。はぁ〜お持ち帰りしたいけどシルクちゃんに引かれるかもしれないからやめておくか。その分今ここでなでなでしまくってやる! なでなで!


「〜♪」


 幼女が気持ちよさそうに撫でられている。そう言えばこの子の名前を聞いてなかったな。


「おれの名前はマナブと言うのだが、君の名前を教えてくれないか?」


「わたしは、マリーって言うの! シスターが付けてくれたんだ!」


 シスターが付けてくれたってことは、かなり小さく物心つく前に捨てられたんだろうな。異世界は厳しいな、そういうところは。


「マリーがいい名前だな。それじゃマリー、花のお代だ。受け取れ」


 おれはマリーの手を握り、お代を握らせる。


「わぁぁ! ぎんいろ!」


「あぁ、その銀貨で何か食べ物でも買うといい。マリーは可愛いのだからたくさん食べてもっと可愛くなれ」


「いいの?」


 可愛らしく小首を傾げる幼女マリー。おっとここにも天使がいらっしゃった。この異世界は天使が降臨しすぎではないですかな?


「もちろんだ。シスターにも何か買っていってやれ」


「ありがとう! お兄ちゃん!」


 再び、ぐりぐりと頭をおれの腰に撫でつけてくる幼女。おれも負けじとよしよしする。撫で撫で。


「あと、マリーはいつもこの場所で《ヨドシダ草》の花を売っているのか?」


「うん! マリーがこのお花を育ててるんだぁ〜。毎日ちゃんとお水やってるんだよ!」


「そうか〜偉いぞマリー、よしよし」


「〜♪」


 ずっとこうしていたいが、残念ながらおれは忙しい身。早くシルクちゃんのところへ向かわねば!


「すまんがマリー、おれはそろそろ行かなければならないところがある。また買いにくるからな」


「うん! ありがとう! お兄ちゃん!」


 名残惜しそうに、マリーはおれの腰から離れた。そんなに名残惜しそうにされるとなんかこうまた抱きしめてしまいたくなるな。いけないいけない。


「んじゃ、花ありがとうな」


「ばいばい! お兄ちゃん! また会いにきてね!」


「あぁ、もちろんだ。マリーも気をつけて帰れよ」


 マリーが手を振り、見送りをしてくれるのでおれも手を振り返す。必ずまた来よう。花をバックに詰めて歩き出す。


「さてと、シルクちゃんの家に向かうか」


 





「シルクちゃん、お待たせ」


 シルクちゃんの家に着き、ドアを開ける。


「マナブさん、お待ちしておりました。わたしはもういつでも行けます。準備万端です!」


 シルクちゃんは早くエメさんを助けに行きたいのか、もう準備が整っていた。待たせてしまったようだ。申し訳ないな。


「すまない。待たせてしまったか?」


「いえ、わたしもちょうどいま準備が終わったところでした」


「そうか? ならいいが……ではそろそろ向かおうか。コーポリ山脈へ」


「はい! 道案内は任せてください! お婆さまに一度連れていってもらったことがありますので」


 Bランク冒険者は伊達ではないってことか。シルクちゃんを守りながらコーポリ山脈まで行くとはな。まぁおれもそのくらいやりますけども。


「コーポリ山脈は徒歩で行くのか?」


「いえ、コーポリ山脈の麓にマルチ村がありますのでそこまでは馬車を使って向かいます」


 へぇー村を経由しているのか。馬車ってけつが痛くなりそうだな。


「そのマルチ村ってのに行く馬車はどこで乗れるんだ?」


「馬車ならロココさんが用意してくれました。本当は自分で行く用に手配したみたいですが」


「あぁ、自分で助けに行くって言ってたもんな。というかもうそこまで根回ししていたとは驚きだな。あのギルドマスターは」


「そうですね。まだあの時は報告に来た冒険者が来てそれ程時間が経っていなかったのにすごい行動力ですよね。流石はロココさんです」


 あのギルドマスターなんて行動力だ。行動力の化身だな。


「馬車乗り場が街の南門のほうにありますので、まずはそこへ行きましょう」


「南門だな。わかった」


 俺たちは南門へと向かった。






「マナブさん、あれが私たちの乗る馬車です」


 南門近くの馬車乗り場へと着いたおれたち。シルクちゃんの指差す方を見てみる。男たちが三人程いて、荷台へと何やら積み込んでいる。


「馬車ってあれか? 何か積み込んでいるが、おれたちが乗る場所はあるのか?」


「はい、それは問題ないとロココさんが仰ってましたが……あれを見ると不安になってきました」


 シルクちゃんの声が尻すぼみになっていく。どうやら自信がなくなってきたようだ。まぁ、確かにあんだけ荷物を積んでしまったら乗るスペースがないだろ。


「まぁ、取り敢えずあそこにいる商人ってぽい男に話を聞いてみるか」


「は、はい、そうですね」


 おれは馬車の馬を撫でている、男に話しかけることにした。やや腹の出た恰幅の良いおじさんである。人当たりが良さそうな顔をしている。話しかけやすそうでよかった。


「おや? 君は?」


「すまない、おれはマナブという。隣にいる彼女はシルクさんだ。ギルドマスターのロココさんからこの馬車に乗せてもらえると話を聞いたんだが」


「あぁ、ロココさんの。お話は聞いておりますよ。何でもコーポリ山脈へ向かうとか」


「あぁ、そうだ。そのコーポリ山脈の麓にあるマルチ村までおれと彼女を連れていって欲しい」


「分かりました。お任せください」


 男は胸を叩き、大きく頷いた。ニコニコと人好きする笑顔を浮かべる。


「っと、すまないがあなたの名前を聞いても良いだろうか? これから道中お世話になる方の名前くらいは知っておきたいからな」


「おっと、そうでしたね。すみません気づかず、わたしはニックと申します。以後よろしくお願いします」


「こちらこそよろしく頼む」


「よろしくお願いしますね。ニックさん」


 シルクちゃんもペコリとお辞儀をする。なんか様になっているなぁ。


「そういえば、今積んでいる荷物は何を積んでいるんだ?」


「あ、わたしも気になります」


「あぁ、これは主に薬草や下級治癒ポーションなどですね。マルチ村ではよく売れるのですよ。あの村には錬金術師の方がいらっしゃいませんから」


 なるほどな。確かに村に錬金術師がいなかったらポーション作れる人がいないから、怪我とかした時大変だもんな。いちいちプレの街まで来てポーション買うのも面倒だしな。


 行商人が売ってくれるポーションは、とてもありがたいのだろうな。下級治癒ポーションでも浅い傷ならすぐに治っちゃうし。便利だよな。


「確かにマルチ村には錬金術師の方はいらっしゃらないですよね。何故でしょうか?」


 まぁ、そこまでポーションを必要としていないとか? 錬金術師が常駐するほどポーションに困っておらずたまに来る行商人から買うだけで賄えるとかじゃないかな? 知らんけど。


「六百人程の小さな村ですからね。それほど大量には必要ないのでしょう」


「そうなのですか?」


「はい、それに村の生活は厳しいですからね。ポーションに使うお金もそれほど無いのではないでしょうか? 私どももマルチ村へはそうポーションを売りにいく頻度も少ないですし」


 下級治癒ポーションでも、大銅貨五枚はするからな。大銅貨五枚あればプレの街なら一食分ぐらいにはなるし。


「すいやせーん! 積み込み終わりやした!」


 と、行商人ニックと和やかに話をしていると荷物の積み込みが終わったようだ。これで出発できる。


「はい、ありがとうございました。またよろしくお願いします」


 ニックさんは積み込みをしていた男たちに礼をする。真摯な態度だな。好感が持てる。そしておれたちに向き直り、


「少し手狭で申し訳ないのですが、お二人は荷台の後ろの方にお願いします。座れるようにしておきましたので」


 荷台に席を用意してくれたようだ。多分ギルドマスターからの急な申し出だったのにも関わらずここまでしてくれるとは本当にありがたいな。感謝。


「急な申し出でしたのにありがとうございますニックさん」


 シルクちゃんがお礼を言う。おれと同じことを考えていたのか。惚れる。


「いえ、ギルドマスターの頼みとあれば。いつもよくしていただいておりますので」  


 ロココちゃん、顔広そうだな。行商人の方とも知り合いだなんて。


「では、そろそろ出発いたしますので、荷台へお願いします」


「あぁ、よろしく頼む」


「よろしくお願いします」


 おれたちは荷台へと乗り込んだ。確かに狭いな。人二人がギリギリ乗れる広さしかない。だがしかしおれは気づいた。


「こ、これは……」


 これはシルクちゃんと自然に触れ合えるチャンスなのではないのかと。だって考えてみてくれ。この狭い席ではどれだけ頑張って離れようとしても密着してしまう。


「意外と広いですね」

 

 !? これが!? これが意外と広い!? どういうことだ!? どう考えても狭いだろ! 鮨詰め状態になるだろ! この場所に入ったら!


「ま、まぁ取り敢えず座ろうか」


「はいっ」


 おれは内心驚きつつ、シルクちゃんを席へ促す。そして隣同士に座った。するとふんわりと良い香りが鼻腔をくすぐる。


 これは何でいう香りだ? 何と表現したら良いのだろうか? 発展途上である少女特有のとても安らがな花の香りがする。


 ふと、横を見やるとシルクちゃんの綺麗な金色の髪が目に入る。艶々で丁寧に手入れがされているようだ。手櫛で梳いても引っかかりが全然なさそうである。触らしてくれないだろうか?


「あ、あの……」


 何やらシルクちゃんがこちらを見て顔を真っ赤にしている。どうしたのだろうか? 風邪か?


「マ、マナブさんっ、どうして髪を、その、」


「むっ!?」


 何ということだ! 妄想の中だけで済まそうとしていたのに無意識のうちにシルクちゃんの綺麗な金髪を触っていたようだ! こ、これはどう言い訳したものか……。


「す、すまん。あまりに綺麗な金髪だったものでな。おれの故郷にはこんな綺麗な金髪はいなかったので珍しくてつい」


「そ、そうだったのですねっ。い、いきなりだったのでちょっと驚きましたが」


「すまん、いやだったか?」


「い、いえ! 全然嫌じゃないです! 突然だったのでびっくりしただけであって、 寧ろもっと触って欲しいくらいです!」



 

5秒時間をください。


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