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前回のあらすじ
ネコ耳もふもふ
シスターシアンが入信している《フチ教》の教会は相変わらずボロボロである。
俺は、隣でボロい教会を眺めているシルクちゃんに顔向け、言う。
「シルクちゃんはシアンと会ったことあったっけ?」
「いえ、シアンさんとはお会いしたことはありませんね。《ヨドシダ草》の売買もマナブさんに任せておりますし」
「そうだったな、まあシアンはドジっ子だが気の良い奴だ。巻き込まれたら大変だが」
「……ドジっ子ですか……?」
それと聞いたシルクちゃんが軽く驚いているのか目を丸くしている。
と、その後ろでツインテールを揺らしているレンちゃんが痺れを切らしたのかもどかしそうにしていた。
「ちょっとマナブ! 早く扉を開けなさいよね! 私は早くお菓子を作りたくて、うずうずしているんだから!」
「おう、レンちゃんはもうやる気満々だな」
ぽんぽんと軽く頭を撫でてやる。
気持ちがいいのか目を閉じて、その感触をあじわっているレンちゃんかわいい。
「レンちゃんはマナブくんの頭ぽんぽんからの撫で撫でに本当に弱いですね♪」
レンちゃんにそう声をかけるのは、白銀の長髪を靡かせているロココちゃん。
今、現在頭を撫でられているレンちゃんにしょうがないですね──とでも言いたいような顔をしている。
「あ、でしたら私が開けますですよ」
「ありがとう、よろしく頼む」
ロココちゃんの隣にいたネコ耳幼女のミミカちゃんが観音開きの扉を開く。
ギギギ、と軋む音とともにゆっくり開かれる扉。……何だがお化け屋敷みたいだな。
開けてすぐに、タッタッタッっとこちらへと駆けてくる足音が一つ。
「──お兄ちゃーん!」
「マ、マリー!?」
掛け声とともに、俺にダイブしてきた美幼女マリー。そのちんまりボディを受け止め、抱きしめる。
ふと、後ろの女性陣から何やら視線を感じたが、気のせいであろう。
「お兄ちゃん、今日はマットの誕生日パーティーにようこそ! マリー待ちきれないよ!」
「落ち着け落ち着け、そんなに急かさなくてもパーティーは逃げたりしない」
抱きしめられながら、器用に暴れて見せる幼女を床へと下ろすと急に手を引いてくるマリー。
「さあさあ、お兄ちゃん! 今日の主役はお兄ちゃん達でもあるんだから! 早く早く!」
ちんまい手で、強引に奥へと連れられる俺と、マリーを呆気にとられたような顔で見つめながらも付いてくる女性陣四人。
教会に入ったすぐの俺達ご一行は、マリーに案内されてパーティー会場の教会の食堂へと足を向けるのであった。
今日のマットの誕生日パーティー兼俺とレンちゃんのCランク昇級祝いは筒がなく進んでいる。
予定の通り、ハチミツをたっぷり使ったパウンドケーキを主にシアンがメインに作り、教会の子供達やシルクちゃん、ロココちゃん、ミミカちゃん、レンちゃんがそれを手伝う形となった。
……俺? 俺は手伝おうとしたら何故か主役は席に座っていてくださいとみんなに念を押されてしまった。
……レンちゃんの主役じゃないのか? と思わなくもなかったが、本人が楽しそうにお菓子作りをしているのを見て、それをいうのは野暮なような気がしたから俺は言わなかった。
なので、今俺はマットの隣の席(主役席とでもいうのだろうか?)に腰掛けていた。
「……お兄さん、今日は来てくれてありがとう。僕、ずっとお兄さんにお礼を言いたかったんだ」
俺の隣に座るマット少年から声がかかった。
「何、礼を言われるほどの事はしていないぞ。それにイテムにはこっちも大分世話になったからな」
そう言って俺がにやりと笑いかけると、マットも中性的な顔で微笑んだ。
「……イテムもお兄さんにとってもお世話になったって言ってたよ。お兄さんがいなかったら戻って来れなかったとも言ってた。だから本当にありがとうお兄さん」
深々と頭を下げてくるマット。
感極まったのか、若干泣きそうな声でそう言った。
しかし、このような幼い少年に頭を下げさせているのは何だが決まりが悪い。
俺はマット頭をくしゃくしゃと撫でると、顔を上げさせる。
「そう気にするな。それに今日はマット、お前の誕生日パーティーなんだ。主役が泣きそうな顔でいたら、祝ってくれるみんなが困ってしまうぞ?」
「……そうだね、お兄さんのいう通りだね」
マットはグシグシと顔を手で拭うとニコッと笑って俺を見た。
「今日は俺の昇級祝いも一緒にやるんだからよろしく頼むぞ」
「……うん!」
しばらくマットと雑談をして時間を潰していると、料理やケーキが出来たようで次々に俺達がいる食堂へと運ばれてきた。
食堂には俺が誘った女性陣四人にシアンとマリーにカレンなど教会の子供達と結構な大人数となった。
乾杯の挨拶を俺がサクッと決め、その次はマットのスピーチをすることになった。
それが終わると、後はみんな思い思いに料理を食べたり、お喋りしたりと自由時間へと突入した。
俺は教会の子供達にハチミツの件で、ありがとう──と感謝の言葉をたくさんいただいた。そして抱きつかれもした。
……正直言って抱きつかれるのは女の子だけがよかったが、ここでそういうわけにもいかない。俺は空気が読める男マナブ。空気を読み、ちゃんと男の子ともハグしたぞ。
子供達全員と感謝のハグをすると、俺は何か飲み物でも飲もうとカップに手を伸ばしたが空であった。
「マナブさん、こちらをどうぞ」
隣にいたのは修道服に身を包むシアンの姿だった。彼女の手にはポットが握られている。
どうやら俺のカップが空なのに気づいてくれたらしい。
「シアン、ありがとう、いただくよ」
カップに口をつけると、シアンのお気に入りの紅茶の味が口いっぱいに広がった。
やっぱりこの紅茶は美味しいな。
俺が美味しそうに飲んでいる姿が嬉しかったのかシアンはにっこりと笑うと、俺の隣へと腰掛けた。
視線がつい胸へといってしまったのはご愛敬。
そんな俺に視線に気付いたのか気付かなかったのか分からんが、シアンが口を開く。
「マナブさん、今日は楽しんでおられますか?」
「ああ、とても楽しいよ。こんなに楽しいパーティーは初めてだよ。シアンのおかげだな、ありがとう」
「そんなっ、こちらこそ、なんとお礼を言っていいものやらで……あんなにはしゃいでいる子供達を見るのは本当に久しぶりで……私、マナブさんには感謝しても仕切れないです」
シアンは料理を食べ、談笑している子供達を感慨深そうに眺めていた。
俺はシアンの横顔を眺めつつ、カップへと口をつける。シアンがこうして満足そうにしていて何よりだ。
すると、俺の席へとトコトコとやってくる一人の幼女。大きなクマのぬいぐるみと引きずりながらやってきたのはパールグリーンの長髪が印象的な美幼女カレンだ。
カレンは俺の膝の上へともぞもぞと乗ると、そのまま満足そうに居座った。
「──カ、カレン!? またマナブさんに迷惑かけて!」
慌てて注意したシアンを俺は手を前にだし、止める。
「いや、いいぞ、気にするな」
「……すみません、そう言っていただけると助かります。カレンはマナブさんが大好きみたいですから」
「カレン、そうなのか?」
膝の上に乗る美幼女へと目線を向けると、コクリと頷いた。恥ずかしそうにクマのぬいぐるみで顔を少し隠しながら……なんて可愛らしい生き物なんだ!
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了




