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前回のあらすじ
……俺は結構レンちゃんにはひどいことやってきたと思うのだが、レンちゃんにはどうやらそう思われていなかったようだ。
「……だから、その……これからも私とパーティを組んでくれないかしら……? 毎日じゃなくてもいいから……」
不安げに表情で俺を見つめてくるレンちゃん。
……美少女にこんな顔されたら、もう答えなんて決まっている。
「ああ、もちろんだ。レンちゃんなら毎日でもパーティを組みたいくらいだ。……さっきのは冗談みたいなものだから、レンちゃんはあまり気にしないでくれ」
「──ほ、ほんとに!? ありがとう! マナブ!!」
「おおっと!」
再び、ガバッと抱きついてきたレンちゃん。
その声はとても嬉しそうに弾んできた。聞いていた俺まで思わず嬉しくなるほどだ。
その様子を見ていたロココちゃんもニコニコと嬉しそうに笑っている。
「よしっ! じゃあマナブくんとレンちゃんはこれからも一緒にパーティを継続するってことで決まりだね♪」
その声を聞いたレンちゃんはバッと顔を上げるとその顔を勝気色にし、こう宣言した。
「あったりまえじゃない! これからもよろしくね! マナブ!」
「ああ、こちらこそよろしくだ、レンちゃん」
*
「……しっかし、レンちゃんには驚いたな」
プレの街の大通り。
太陽もだいぶ真上に来て、ポカポカとした陽気にちょっと癒されながら俺はシルクちゃんの家に向かっている。
……レンちゃんがまさかあそこまで素直になるとはな。何だかセクハラまがいなことばかりしてきたのに、よくもまぁ懐かれたもんだ。
大通りは馬車が何台も行き交い、辺りには沢山の人が所狭しと歩いていた。
俺もその人の流れに乗りつつ、歩いていると前に陽光に煌く黄金の髪を持った美少女の姿が見えた。
これはまさしく俺が居候させてもらっているところの美少女さんではありませんか。
どうみてもシルクちゃんである。
シルクちゃんはどうやら買い物をしていたようだ。手には買った物を入れている袋なのだろう、腕に掛けて歩いていた。
……いや、しかしシルクちゃんは後ろ姿もまた美しいな。薄い緑のワンピースを翻しながら歩く姿はまるで女神のようだ。シルクちゃんの周りだけ光って見えるようだ。
久しぶりにあったシルクちゃんはあいも変わらず美少女であった。
と、俺の視線に気付いたのか、シルクちゃんが振り返る。
そして俺の顔を見ると嬉しそうに微笑みながら少し駆け足で寄ってきた。
「マナブさん! 帰ってきていたんですね!」
「ああ、ただいま。今ちょうどシルクちゃんの家を向かっていたところなんだ。……ところでそれ重そうだね。俺が持つよ」
「そ、そんな! 良いですよ。マナブさんは試験が終わってやっと帰ってきたのですから」
抱えている袋を持とうとすると、シルクちゃんは俺を気遣うようにやんわりと断る。
だが、俺は紳士。
ここで女性に荷物を持たせたまま歩くなど、できようはずがない。
「いや、シルクちゃん。俺を助けると思って持たせてくれないか? こんなに可愛い女の子が荷物を持って俺が手ぶらなんて俺のプライドが許さないよ」
「──はうぅ! か、可愛いだなんて……私なんてそこら辺に落ちている石ころのようなものですよ」
……おいおい、どう見てもシルクちゃんは石ころではなくダイヤモンドだろう? シルクちゃんは見た目に反して何でか知らないけど自己評価が低いんだよなあ。
しかし、シルクちゃんが石ころならこの街にいる大概の女性は一体どうなるんだって話だ。無意識なんだろうが、あまり謙遜しすぎるってもの変に聞こえてしまうな。
言葉って難しいね。
「いやいや、シルクちゃん。そう自分を卑下にするなって、シルクちゃんはとびきり可愛いんだからもっと自信持っていこう。……ということで荷物持つよ」
「……ああ、ありがとうございます。あっ、荷物もありがとうございます」
無理やり荷物を取ると、シルクちゃんは申し訳なさそうに荷物を渡してくれた。そうそう素直なのが一番だね。
荷物を片手で持ち、俺とシルクちゃんは隣り合って歩き出す。
「ところで、買い物はもうすんだの?」
「あっ、はい。もうあらかたすみました。あとは家に帰るだけです。マナブさん、今日は帰ってきてくれるのですか?」
「ああ、もちろん。だってシルクちゃんに早く会いたかったからね」
「──そ、そんな私に会いたかったなんて……そんなら嬉しいことを言われても私、マナブさんにあげられるものなんて何も無いですよ?」
パタパタと手を仰ぎ、真っ赤に染まった顔を冷やしているシルクちゃん。どうやら俺の会いたかった発言により恥ずかしがっているようだ。
やはり、美少女の恥ずかしがっている表情は世界遺産に登録するべきだと俺は愚考する。
「いやいや、シルクちゃんにはいつも色々ともらっているよ。ご飯を作ってもらったり、一緒にいるときに時折見せてくれる可愛い笑顔だったり、今も見せてくれている恥ずかしがっている表情とかね。俺にとってシルクちゃんと一緒にいることが出来るってだけで幸せなんだよ」
「……マ、マナブさん、私なんかのことをそんなふうに思っていただけていたのですね」
俺はシルクちゃんの肩に手を乗せると、彼女の碧眼に視線を合わせる。
「ほら、ダメだよ?」
「──え?」
「そうやって、私なんか──って言うのは。自分で自分を蔑ろにしちゃいけない。自分のことを本当の意味で大切にできるのは自分だけなんだから、自分だけは自分のことを大切に扱わないと」
俺の言葉にシルクちゃんはわかったようなわからないような顔を見せ、少し困惑していたが、やがてニッコリと笑顔を見せた。
「はいっ、マナブさんの言う通り、私、自分のことをこれから少しずつ大切にしていきたいと思います」
「ああ、そうしてくれ。あ、言い忘れていたけど、俺はシルクちゃんのことをシルクちゃん以上に大切に思っているからな? そこんところ覚えておいてくれ」
ニヤリと笑いかけると、シルクちゃんはもうっ──っと頬を膨らませつつ、赤面し、俺の胸をポカポカと叩いてくる。
……え? 何この幸せ空間。
これ、なんて魔法?
「おいおい、シルクちゃん、そんなに怒らないでくれ」
「……知りませんっ」
プイっと明後日の方向を見て、少し拗ねてしまったシルクちゃん。なんて可愛い拗ね方なんだ。これは書き留めておいて本にして販売するしかない。全世界の人々に届け! この思い!
「シルクちゃん、こっちを向いてくれないか?」
「……いやです」
「シルクちゃん……?」
「ぷいーっ」
……おいおい、ぷいーっ──ってこれはかわいさ天元突破きました。お久しぶりです!
相変わらず頬を膨らませ、こっちを向いてくれない。……しょうがない、ここは実力行使といきますか。
俺はシルクちゃんにそっと近づくと、後ろから膨らんでいる頬を指でちょんっと突いた。
「ぶっ──」
シルクちゃんの口の中から吐き出される空気。シルクちゃんは自分の出したその音を聞いて顔を真っ赤にしている。
「──ちょ、ちょっと! マナブさん! やめてください!」
「いやだ、俺はやめん。シルクちゃんが許してくれるまで俺はこの攻撃をやめない」
俺は宣言通り、シルクちゃんのほっぺに狙いを定め、きめ細かな肌が美しい頬に指をチョンチョンする。
シルクちゃんは手を振ってやめてほしそうにしていたが、顔がにやけていたのでこれはもっとやってほしいと言うことだと勝手に判断して指チョンを続行する。
「ほらほら、早く許してくれないと、もっと攻撃は激しくなっていくぞ」
シルクちゃんの手を掻い潜り、俺は指でチョンチョンを繰り返す。
「──わ、わかりました! わかりましたから!」
「んん? 何がわかったんだ?」
「許します! 許しますから! その指で突くのはやめてください!」
その言葉を聞き、俺はすぐに攻撃をやめる。
はあはあと息を荒だたせるシルクちゃん。白い肌を真っ赤に上気させていた。
「もうっ、マナブさんはっ! くすぐったかったんですからね!」
「ついはしゃいでしまったよ、拗ねたシルクちゃんがあまりに可愛かったからさ」
「──!? そうやって私を褒めないでください! ……照れてしまいます」
頬に手を当て、いやいやと首を振るシルクちゃん。こう言う仕草は美少女がするとまた威力が三割マシだな。最高だ。
「いやいや、可愛いのは本当のことだからさ」
そういいながら、シルクちゃんのさらさらの金髪を撫でると気持ちよさそうに目を閉じ、俺の方へ体を任せてきた。
「っと、どうしたんだ?」
「……いえ、何だか、急にマナブさんに抱きつきたくなったものですから」
……なんて可愛いことを言ってくれるんだ、この美少女は。
俺もシルクちゃんの気持ちに応えるべく、背中の方に手を回そうとした時。
「……お主たちは、こんな街中で何をしておるのじゃ……?」
驚愕に目を見開き、全身で驚きを表現しているエメさんが俺達を見ていた為、俺は背中に回した手を泣く泣く諦めた。
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