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前回のあらすじ
そろそろ街へ帰還
「うぉー! 着いたぞ!」
「……あんたはまだ早朝だってのに元気ね」
ここはプレの街の近く。
川が流れる森の中。俺達一行はルディアの魔法によってスクロースの森から一瞬で転移してきた。
俺のテンションにレンちゃんは呆れたように、嘆息していた。
「……でも、街の中までは行ってくれないのね」
「下等な人間、お前は本当にわがままな奴ですね。お前だけあそこに置いておくべきでした。……それに私は必要以上の人間とは会いたくないので街の中には入りたくありません」
レンちゃんが少し不満の声を上げると、ルディアがすかさず嫌な顔をして反論する。
やっぱりこのふたりは仲が悪い。
「まぁ、いいじゃないか。もうプレの街は目の前みたいなもんだし。──なっ? イテム」
「そうだよ、レン! ルディア様のおかげで帰る期間がだいぶ縮まったんだから! まずはその事に喜ぼうよ!」
イテムがテンションを上げて、ルディアをヨイショする。精霊格差ここに極まれり。
「……しっかし、ルディアの転移魔法はすごいよな。あんなに離れていたスクロースの森から一瞬で帰れるなんて。それに水がある所ならどこでも転移出来るってのがまたすごいよな」
「ふふっ、お兄さんに褒めていただけるなんて嬉しいですね。普段あまり出さない実力を発揮したかいがありました」
普段は手を抜いているのかい、とツッコミは無しにして。とにかく助かったのは確かだ。あの3日もかけてのピクニックは結構きついものがあったからな。
肉体的にじゃなくて、精神的に。
「それじゃあルディア。またなんかあったら呼んでもいいか?」
「お兄さんが好きな時に呼んでもらって構いません。それに暇でしたら自分から出てきますし」
「……そうだったな、ルディアは自分でも俺の方に来れるんだったな。まあいつでもきてくれ、俺は大抵暇だからな」
「私もあの水辺で主に寝ているだけなので、お兄さんが1人の時を見計らってお邪魔させていただきますね」
ルディアはそういうと、姿がだんだんとぼやけ、霞のように消えていった。
相変わらず、すごい魔法を使うもんだ。
ルディアを見届けた俺はレンちゃんとイテムの方へと向き直る。ふたりの視線が俺に向くのを見ると、プレの街の方へと指を差し、声を出す。
「よっしゃ! じゃあ凱旋だ!」
俺達はプレの街へ向けて歩き出した。
*
「早かったね〜♪ まさかこんなにも早く試験を終わらせて帰ってくるとは思わなかったよ! いよ! さすがマナブくん!」
昼前のギルドマスターの執務室。
そこにソファーの対面に座り、ニコニコ笑顔で俺を絶賛の言葉を送るのは、このギルドのお偉いさんことロココちゃんである。
動くたびに揺れる銀髪がとても綺麗だ。思わず触りたくなるほどに。
「……ちょっと、私のことも褒めなさいよ」
俺だけを褒めるロココちゃんに業を煮やしたのは赤髪ツインテールのレンちゃん。ロココちゃんをジト目で睨みつけ、唇と尖らせながら、抗議していた。
「え〜でも、マナブくんから聞いた話だと、あのハイキラービーと戦ったんでしょう? レンちゃんは本当に役に立ったの?」
「──私が1番役に立ったと言っても過言ではないわよ!!」
……いや、過言だろう。
どう考えても、あの中で1番の活躍をしたのは俺かイテムのどちらかだろう。レンちゃんは……まあ、しいていえば氷魔法がまあまあ良かったくらい。本当にまあまあね。まあまあ。
レンちゃんを疑わしげな顔で見ていたロココちゃんは俺の方へと視線を移すと、問うた。
「……マナブくん、レンちゃんが迷惑かけなかった? 大丈夫だった? 本当に少しは役に立ったの?」
「……………………」
……レンちゃんすごい言われよう。
何だかかわいそうに思えてきたぞ。今レンちゃんを横目で見たけど、少し涙目になっていたし。ここは俺がフォローを入れておいてやろう。美少女には優しいがモットーが俺だからな。
「レンちゃんはすごくよくやってくれたよ」
「──っ!? ほらっ! ほら見なさいよ!! マナブならちゃんと私を評価してくれるとおもっていたわ!」
突如として、元気になるレンちゃん。
顔を上げるスピードがあまりにも早すぎて残像が見えるかと思った。
「え〜、本当に?」
「──本当だって言っているでしょ!? マナブが!? ちゃんと信用しなさいよ!!」
ガバッとテーブルを乗り出し、ロココちゃんへと抗議するレンちゃん。……おいおい、テーブルに唾が飛んでるぞ。
「ああ、本当によくやってくれた。最初の頃は夜営の見張りはやらないわ、モンスターからは一目散に逃げて俺に丸投げするわ……」
ピシッーー!
俺の言葉と同時にレンちゃんが氷の像のように動かなくなった。口が半開きで目の焦点があっていない。
だが、俺はそのまま話を続ける。
「……とにかく、色々やらかしてくれて、そのたびにフォローに回って大変な思いをした」
「……マナブくん、大変だったね。……良かったらいつでも私の膝を貸すよ? 私膝枕得意なんだ」
「……………………」
……あまりに魅力的な提案に、少し心を奪われていたが、ここで話を終わらせるわけにはいかない。
俺は苦渋の思いでロココちゃんの膝枕の誘惑を断ち切り、話をする。
「……だが、最後の方はレンちゃんの魔法にかなり助けられたのは事実だ。この試験で1番成長したのは紛れもなくレンちゃんに違いないだろう」
「……マ、マナブ……あんた」
手で口を押さえ、涙を堪えるように、俺を見つめるレンちゃん。どうやら俺の言葉に感極まっているようだ。
ふう、レンちゃんを持ちあげた甲斐があったぜ。レンちゃんの目を見つめると、グッと親指を立てた。
「……マナブくんは凄腕のジゴロだね〜♪ 自分で追い詰めて自分でフォローするとか」
俺達の様子を見ていたロココちゃんが、ポツリと言葉をこぼす。
「いや、俺もここまでレンちゃんがガッツリと引っかかってくれるとは思わなかった」
「レンちゃんは信じやすい子だからね。こういうことはすぐに引っかかっちゃうんだよ♪」
俺とロココちゃんはふたりで笑い合う。
「──ちょ、ちょっと!? マナブ! もしかして騙したの!? さっきのは嘘だったの!?」
涙目から一転、ぷんすかと怒り顔になり、俺の胸に指を当て問い詰めてくる。
その指を軽く握り、まあまあと抱き寄せつつ、落ち着かせる。
「嘘なわけないだろ。最後はちゃんとやってくれたじゃないか」
「……マナブ」
「あの、見事に外した氷魔法は、あれはあれで見事だったぞ」
「──マナブーーー!!!?」
上げてから落とすを繰り返しすぎて、レンちゃんの挙動がおかしくなってしまった。……これはやりすぎは禁物だな。面白いけど。
俺は赤髪を撫でつつ、暴れるレンちゃんをおとなしくさせる。
その様子をみていたロココちゃんが佇まいを正すと真剣な表情で俺達をみつめた。
「さて! 早速だけどランクアップ試験の品物を確認してもいいかな♪」
「ええ! もちろんよ!」
俺の頭撫で撫でが効いたのか、すぐにふっかつしたレンちゃん。ロココちゃんの言葉にすぐに反応を見せ、バックから小さな壺を取り出した。
「俺もここに用意してある」
俺もリュックからレンちゃんと同じ壺を取り出す。テーブルの上に並ぶ2つの壺。
それを見てロココちゃんは2つとも自分の元へと寄せた。
「それじゃあ、中身を確認させてもらうよ」
「穴が開くほどよく見なさいよね! この私が採ってきた最高級のハチミツをね!」
……ない胸ははらなくていいぞー。
そう言ってやりたいが、今はそういう空気ではなさそうだ。
ロココちゃんが2つの壺を開け、覗き込む。
「……わあ! すご〜い♪ これがあの《極上ノハチミツ》なんだ〜♪ なんだか匂いだけでも甘みが伝わってくるよ!」
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