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前回のあらすじ
ルディア涙目
「……ちょ、ちょっとルディア、泣くなって。俺がルディアの事を嫌いなわけがないだろう? ちゃんと愛しているから泣き止んでくれ」
ルディアの頭を軽く包み込むと、俺はそっと抱き寄せる。ふわりといい匂いが鼻をそっとかすめる。
「……お兄さん」
ルディアも、俺に体を預けるように力を抜いていた。表情も先程の泣きそうな顔から一変して今は女神の微笑みを浮かべていた。
「──あんた! 嘘泣きでしょ! それ!」
俺とルディアが抱き合っていると、レンちゃんが後ろからガーッガーッ言いながら近づいてきた。
「ふふっ、なにを言っているのでしょう、この人間は。私はお前にひどい事を言われて傷心中なのですよ? だから今、こうしてお兄さんに慰めてもらっているところを邪魔しないでもらうますか?」
「──何が傷心中よ! 嘘ばっかりついて! マナブに抱かれた瞬間にすぐに涙が引っ込んだじゃない! あんた水の精霊だから魔法かなんかで涙もコントロール出来るんじゃないの!」
レンちゃんが顔を真っ赤にしてルディアに抗議していた。なんかめちゃめちゃ必死である。しかし、ルディアも黙ってはいなかった。
「……大人しく聞いていればこの下等な人間は耳障りな事を次々と口にして、本当に私を苛立たせる事に関しては天才的ですね……」
「──ひっ!」
ゴゴゴッっとルディアから威圧的なオーラが溢れ出てきていた。それを敏感に察知したレンちゃんはすぐにビビって身を竦ませている。
……なんでレンちゃんは学習しないかな。前にルディアに散々怖い目に合わされたのに、なぜまた噛みつきにいくのか……。やっぱりアホの子なのだろうか?
「……な、何する気よ」
「別に何もしないわ、お兄さんの前だもの」
「──な、ないよそれ! マナブの前じゃなかったら何かするって事!?」
「あら? そう聞こえたの? 私は一言もそうは言っていないのだけど?」
「──キーっ! ムカつく!」
だが、思ったより深刻な事態にはなっていないようだ。なんか喧嘩っぽいことはしているがただ戯れあっているように見える。
「ルディア、レンちゃん、その辺でやめにしよう」
俺がそう声をかけるとすぐ様ルディアは睨み合うのをやめ、俺の方へと寄ってきた。
「ふふっ、そうですね。こんな下等な人間と喋る時間がもったいないです。私はお兄さんとお話をしていたいですのに」
「──あんたがいちいち私の気に触るような事をいうからでしょうが!」
レンちゃんもその後からダンダンと足音大きく付いてくる。ふたりが近くにきたのを見計らって俺は声をあげた。
「レンちゃん、よく聞いてくれ」
「……何よ」
「ルディアがな? 何でも街まですぐに帰ることができる方法を知っているんだ」
「──えっ!? それ本当なの!?」
レンちゃんは俺に抱きついているルディアへと驚きの視線を向けた。その視線を受けたルディアは鼻で笑うとレンちゃんに侮蔑の視線を向ける。
「本当も何もただの事実よ、下等な人間」
「だから私を下等な人間って呼ばないでもらえるかしら! 私にはレンっていう名前がちゃんとあるんだから!!」
「へえ〜、そうなの。だから何?」
「──む、むかつく!」
またお互いに睨み合うふたり。
このふたりはひと時の時間でさえ仲良くできないのであろうか? 目を離さなくてもすぐに喧嘩を始めてしまう。
「まあまあ、ふたりとも一旦落ち着いて」
「ふふっ、嫌だわお兄さん。私はいつも冷静ですよ」
すぐに満面の笑みを浮かべ、俺の胸に頭を寄せるルディア。
「……この二重人格性悪精霊」
レンちゃんがボソッと囁く。
それを聞いたルディアはピクッとこめかみをひくつかせると、笑顔のままレンちゃんを睨みつけた。
「ふふっ、貧相なものをお持ちな方は言葉使いも貧相なようですね」
「──な、なんですって!?」
「ちょっと話が進まないからふたりとも黙って」
少しだけ強めに俺がそう口にすると、ルディアはすぐに黙り、レンちゃんはしぶしぶ俯き口をつぐむ。
静かになったふたりを見て俺は話の続きを口にする。
「さっきも言った通り、ルディアが街まですぐに帰る方法を知っているんだ。だから朝になったらそれですぐに帰りたいと思う」
「……本当でしょうね……?」
「本当ですよ。なんだったらお前だけ1人でこの森に残っていればいいんですよ?」
「はいストップ! やめやめ」
すぐに仲裁に入る俺。
……本当にこのふたりは1秒足りとも仲良くできないんだな。まったく困ったものだ。
「……それじゃあ、そういうことだから今日はもう俺がずっと見張りしておくからレンちゃんは寝てていいぞ」
俺がそうレンちゃんに声をかける。
だがすぐにレンちゃんは首を横に振ると、俺に腕にしがみ付いてきた。
「……私は見張りをするってちゃんと約束した。自分の言ったことはちゃんとやる、だからマナブは私にまかせてテントで寝てて」
真面目な表情で俺に目を合わせてくるレンちゃん。……なんだかレンちゃんはこの試験の間にえらい変わったなあと感慨深いものを感じる。
そのようなレンちゃんを見ていたら、思わず俺は彼女の綺麗な赤い髪を優しく撫でていた。
「……ん」
「ありがとう、レンちゃん。なら俺と一緒に見張りをしないか? ルディアもいいだろ?」
俺がそう提案すると、ふたりは若干嫌そうな表情でいたがため息をひとつ吐くと嫌々ながら了承してくれた。
「まあ、お兄さんの頼みなら聞かないわけにはいかないですからね」
「ああ、ありがとうルディア」
感謝の気持ちを伝えるべく、ルディアの美しい空色の髪も撫でた。サラサラとした触り心地が手から伝わってくる。とても安らぐ滑らかな手触りだ。
そうしてしばらくふたりの髪を撫でているときはルディアもレンちゃんも喧嘩することなく静かにしていた。
*
「あ〜日の出だ」
あの後、ふたりとも借りてきた猫のようにずっと大人しくしていた。とくに言い争いになるようなことはなく和やかとは言い難いが終始静かだった。
レンちゃんはしばらくしたらウトウトし始めたので俺が膝枕をしてやった。それを見てルディアはかなり悔しそうにしていた。
「ルディア様! 本日はよろしくお願いです!」
「……………………」
変な敬語を使っているのはガチガチに緊張したイテム。彼女は日が出る前に起きてきてルディアの姿を見た瞬間からこうだった。
なんでもルディアの精霊としての格が違いすぎて、まともに喋ることができないとかなんとか。これでもまだマシになった方だ。最初の方は何言ってんのかまったくわからなかったし、急に黙り込んで顔面蒼白になったりと大変だった。ルディアも少し引いていた。
さて、俺のそれそれレンちゃんを起こさないとな。膝の上でスースーと寝息を立てているレンちゃんを揺する。
「ほら、レンちゃん。もう朝だから起きてくれ」
「……むー」
「むー、じゃないだろ……」
レンちゃんは何やら寝言のようなものを呟き、俺の腰に抱きついてくる。……あんましそこに顔を近づけられると色々まずいのだが……。
「いつまで寝ているつもりなの? さっさと起きなさい、この下等な人間が」
「──ぶはっ!」
ルディアが絶妙なコントロールで、レンちゃんの顔にだけ水の玉を当てた。俺には一滴もかかってはいない。なんというコントロールだ。精密機械の名を与えよう。
「──な、何すんのよ!?」
「何って私が直々に起こしてやったのよ。感謝して欲しいくらいですよ」
「──あんた起こしからされて誰が感謝するってのよ!」
朝からワーワーとうるさいふたりであった。
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