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前回のあらすじ
夜営準備
「あー暇だー」
辺りは暗闇、スクロースの鬱蒼と生茂る森が広がってる。空を見上げ星を眺めながら、俺はそう言葉を漏らす。
テントでは既にレンちゃん、イテムは就寝中だ。俺は今、そこら辺の倒木に腰掛け、見張りをひとり寂しくやっているところだ。
「……しかし、また3日かけて帰らないと行けないのは面倒だな」
……どうにかして、パッと帰れないものか。
……しかし、ひとりになると、つい独り言が多くなってしまう。
でも暇だからしょうがないのだ。レンちゃんもイテムもテントの中だし、俺は見張りをしないといけない。
まあ、あと数時間くらいの辛抱だ。
俺は顔を上げ、日本で見えるのとはまた違った顔を見せる空や星を眺めながら、このゆっくりとした時間を潰すことにした。
そうして俺がある筈もない日本で見ていた星座がないかな、と探していると。
「──な、なんだ?」
指にあるサファイア色の宝石が嵌った指輪が急に淡く光り始める。
「──おわっ!?」
突然、目も眩むような光を放った指輪。周囲を昼間のような明ルクなる。
俺はあまりの眩しさに瞼を閉じた。そして再び目をゆっくりと開けると、目の前には見覚えのある端麗なお顔。
水の精霊ルディアでだった。
「お兄さん、私は怒っていますよ?」
「……いきなり出てきてなんだんだ?」
俺の顔面すれすれに顔を寄せ、ルディアは現れた。こんだけ近くで顔を見ても肌とか滅茶苦茶綺麗だった。さすがは上位精霊さんである。
……ところで何でルディアは怒っているんだ? 今も腕を組んで軽く頬を膨らましながら、ぷいっと明後日の方向を向いていた。
「ルディア、話がいまいちよく見えないぞ? それにこっちが呼んでもないのに、何で出てきたんだ? てか呼ばなくても出てこれたのかよ」
俺の質問攻めにルディアはする。
しかし、ルディアは一向にこちらを見ようとしない。……これはどういう状況なんだ? なぜルディアはこんなにもご機嫌ななめなのだろうか。謎である。
が、ここで黙っていてもしょうがない。わからないことは聞くしかないのだ。よく聞く名言で聞くは一時なんたらってやつだな。
「顔をこっちに向けて教えてくれないか? なんで怒っているのかを、理由を聞かせてくれ」
俺は倒木からたちあがると、ルディアへと問いかけた。
すると、ルディアはこちらへとチラッと視線を向けると、伏し目がちにこちらをみつめる。
いつもの微笑み顔ではなかったので俺としてはちょっとびっくりしてしまった。でもルディアのそういう表情も悪くない。
俺がその珍しい顔を見つめていると、ルディアがやっと口を開いてくれた。
「……お兄さん、私にだってあのくらいできるんですからね?」
「……ん?」
……彼女はいったい何が言いたいのだろうか? 質問の意図がよくわからない。……俺にその意図を読み取れって事か? なかなかどうしてそれはちょっと厳しいな。
俺に他人が何を考えているかなんてわかるはずがない。まあ? 理解しようと努力はしては見るものの、結局完璧にはわからないし、それに言葉にして言ってくれた方が早いのだ。
断然な。言わないでも察してよ、というのはてんで無理な話だな。
だが、そこは美少女であれば別のお話。
美少女が人生イージーモードなのは、周りに気を使ってもらえる確率が平凡な人よりも著しく高いのだ。
多分、倍以上は違うだろうな。
だから俺は美少女であるルディアにはもちろんのこと気を使いまくるのであった。
「わかったぞ、ルディア。俺が土の精霊であるイテムばっかり構っていたから嫉妬しているんだろう?」
「……うっ、そうはっきりと言われるとなんと返していいものか悩んでしまいますね……」
俺の言葉にルディアは軽い衝撃を受けたかのように、後ろに身動ぐと暗い表情から一転、いつもの微笑みを浮かべた。うん、いつものルディアだ。
「お兄さんがいう通り、私は嫉妬しています。ので、どうにかしてこの嫉妬を止めてください」
「……止めてくださいっていわれてもなあ」
ルディアはこちらへと両手を広げ、目を閉じキス待ちのポーズで立っている。
……どうにかしてってもうこれじゃあすることは決まっているようなものじゃねえか! とツッコミを入れたいのは山々だが、俺がルディアに嫉妬させてしまったことは事実。ここは受け入れることにしよう。
……あくまでもしょうがなく、しょうがなくなのである。ここマジ重要。
「……しょうがない、一回だけだからな?」
「ふふっ、そう言ってくれると思っていました。そういうお兄さんは優しくて私は好きですよ」
「はいはい……」
俺は軽く嘆息しながらも、ルディアへと近づく。そして肩に軽く手を乗せると抱き寄せた。
「──あっ」
「……あまり、変な声を出さないでもらえるか?」
「ふふっ、実はもっと聞きたいのではないですか? お兄さんはそういうの好きそうですもの」
そう言い、艶めかしげに微笑むルディア。
……いやまあ? 好きか嫌いかで聞かれたら、もちろん好きと答えるのも吝かではないがな。
「はいはい、好きだから早くするぞ」
「お兄さん、照れてますね」
「照れてないからっ」
「ふふっ、まあそういうことにしておきましょう。ではどうぞ? お兄さん」
再び瞳を閉じたルディア。
その綺麗な顔を見つめながら俺は唇を近づけていった。
触れ合った瞬間に軽く魔力が吸われていく感覚。この感覚にも何だかもう慣れた感じがする。それに魔力を吸われる感覚なのかなんなのかルディアと口を触れ合っていると何だがとても安心する。もっとしていたい、そういう気持ちにだんだんとなってくる。
そうしてしばらくルディアとキスをしていると満足したのかルディアはゆっくりと俺の口元から離れるとこちらへととても魅力的な表情で微笑んだ。
「ふふっ、やっぱりお兄さんの魔力はいいですね。特別な感じがします」
「……何だよ、特別な感じって」
ルディアの顔はテカテカと輝き、そしてその顔はとても満足そうだった。……これはかなりの魔力をもっていかれてそうだな。
「満足したか?」
「そうですね、概ね満足です。ありがとうございます、お兄さん」
「……それはよかったよ。んでもう機嫌は直ったか?」
と、俺が問いかけるとルディアは艶っぽい微笑を浮かべる。
「それはもちろん、お兄さんからの熱いキスで私に対する愛を確認できましたからね。」
「熱いキスじゃなくて、ただ魔力を渡しただけだからな」
「ふふっ、そう照れなくて良いって言っているじゃないですか。何なら普通のキスだって何回でもしても良いんですよ? それ以外のことだって何か言ってくだされば大抵の事は何だって出来ますよ?」
「……………………」
ルディアからの超魅力的なお誘い。
くうっ! だがしかし、この誘いに乗り、ただキスをしてしまうと言い訳ができなくなってしまう。
これは魔力を渡しているだけだから全然そういった意図は決してないんだから! みたいな? そういう言い訳が誰がに見られて場合にできなくなってしまうのだ。それはいただけない。
……いや、待てよ。見ている人には俺がルディアに魔力を渡しているところってただキスをしているだけに見えているのではないだろうか?
だったらもう別にただキスしてもよくない? とついそう思ってしまった。これは俺の心に巣食う悪魔の声に違いない。ダメだ、本能に抗わないと!
「──だったらルディア! プレの街まで一瞬で帰ることが出来る方法を知らないか?」
俺は心に住う悪魔の声に耳を傾けずに、本能に、欲望に打ち勝った。
……しかし、打ち勝ったはいいが何か疲れていたから適当にあんなこといいなできたらいいな、と頭に思っていた事をそのまま口に出してしまった。
何だよ、プレの街まで一瞬で帰る方法って。そんなんあったら最初から使っとるわい! 3日もかけてこのスクロースの森までやってきとらんわい! って話だ。
と、俺がやっぱりいいとルディアに答える前に彼女からとんでもない発言が飛び出した。
「それなら私の魔法の出番ですね」
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