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前回のあらすじ
ハチミツうまし!
「こんだけうまいハチミツを持って帰れば、みんな喜ぶぞっ! それに俺の株も上がるぞこれは!」
スクロースの深い森の中。
ハチミツを舐めながら、俺はそう呟く。
イテムやレンちゃんは夢中になってハチミツの舐めていた。……しかし、いくらたくさんあるからと言って食べ過ぎじゃないか?
「……レンちゃん、イテム、あんまり食べると持ってかえる分がなくなるぞ? そのくらいにしておけ」
俺がそう注意すると、2人は慌てて食べるのをやめる。
「──そ、そうね! ……あまりにも美味しかったから、つい食べすぎてしまったわ」
「……ぼ、僕や危うくマットに持って帰るぶんまで食べちゃうところだったよ。ありがとうマナブ」
「……まぁ気持ちは分からんでもないがな」
さて、あとはこのハチミツを持って帰れば、ランクアップ試験は完了だ。
俺達はこれで晴れてCランク冒険者の仲間入りだ。少しは箔がつくってもんだ。誰かにCランク冒険者の証、ゴールドの指輪を見せびらかしたいぜ!
「それじゃあ、レンちゃん。サクっとハチミツを壺にいれて持って帰ろうか」
「そうねっ、私はもうこんな森は勘弁だもの。もう一生分の蜂を見た気分だわ」
「ははっ! レンは大袈裟だな! まあ気持ちはわかるけどね!」
俺とレンちゃんは壺を取り出すと、ハチミツを絞り出し、壺の中へと入れていく。……改めて見るとすごいトロミだな。中に入っていくハチミツがホイップクリームみたいにつのが立ちそうだった。
レンちゃんのイテムをその光景を興味深そうに眺めていた。……女の子はやっぱり甘いもの関係の事には興味を惹かれるものなのだろうか?
「……よしっ! こんなもんだろう」
「そうね、これだけ持って帰れば文句はないでしょ。このハチミツを見たら、驚くでしょうね〜、あのギルドマスター! ああ! 早く驚いたあいつの顔を拝みたいわ!」
レンちゃんは驚いた表情のロココちゃんの顔を想像しているのだろう。少し上を見ながら、にやにやといやらしく笑っていた。だが、そんな顔もまた可愛いという反則的な所業だ。
「マナブ! レン! ハチミツ取れたはいいけど、このあとはどうするの? 僕は疲れたから今日はここらへんで休みたいよ!」
俺がレンちゃんのにやにや顔に目をやっていると、イテムが疲れた表情で話しかけてきた。……まあ確かにだいぶ連続での戦闘だったしな。もう俺の精神的に疲れている。
女王蜂とかハイキラービーとかを散々相手にして、それにあいつらの体液が体にまとわりついて気持ちわるいし。
「そうだな、今日はもうここで夜営の準備をするか。レンちゃんもそれでいいな?」
そうレンちゃんに問いかけると、眉をキッと吊り上げた表情でレンちゃんは口を開いた。
「──今日はこのまま行けるところまで行くわ! だって私早くあいつの面を喰らった顔を拝みたいもの!」
ぷりぷりと怒りながら、レンちゃんは早く帰ろうと俺達を急かす。
……さすがに今日はもう動きたくないぞ。それにもう日も落ちてきたし、このまま帰れば視界の悪い中でモンスターとの戦闘になるやもしれない。それはさすがに嫌だ。
ここは適当に理由をでっち上げて、レンちゃんの気を変えるしかないようだ。
「……レンちゃん、知っているか?」
「……な、何よ」
俺の突然の態度の変化に若干怯えたように、身を竦ませるレンちゃん。……ちょっとかわいい。
「夜に歩くと胸って萎むんだぞ?」
「──えっ!?」
全身を使ってビクッと体を跳ねさせるレンちゃん。……ロココちゃんの面を喰らった顔よりも早くレンちゃんの面を喰らった顔を見られるとは……。これはこれでいいものだ。
俺はレンちゃんの驚き顔を見ながら、言葉を続ける。
「夜ってのはな? 1日で最も体温が高くなる時間帯なんだ。その時間に歩いて帰ってみろ。すぐに胸が燃焼されてみるみる内に萎んでいくぞ」
「──そ、そ、そそそうだったのね!? だから私こんなにぺったんこなんだわ……」
「……………………」
レンちゃんは自分で胸をぺたぺたと触りながら、悲しそうな表情で自分の胸を見つめていた。……くっ、なんて痛ましい姿なんだ。
「……だからな? もう今日はこのまま夜営にしよう? よく寝ると胸が大きくなるっていうしな」
俺が痛ましい姿のレンちゃんを慰めるため、肩に手を置くとレンちゃんは案外素直にも、こくりとうなずいた。
「……わ、わかったわ。今日はもうこのまま夜営するわ」
自分の胸を撫でながら、俯きがちにそう言ったレンちゃん。相変わらずのアホの子であった。……しかし、あんた与太話をよく信じられるなこの赤髪ツインテールは。ちょっと俺の事を信頼しすぎじゃなかろうか? いや、全然いいんですけどね!
「──それでマナブ! レン! 今日はもうここで夜営するってことでいいの?」
今までずっと黙って俺達の事を見ていたイテムは話が終わったと見るや否や、すぐに話しかけてきた。……なかなかタイミングをわかっている土の精霊さんだ。やりおる。
「ああ、レンちゃんも納得してくれたみたいだからな。今日はもうここで夜営だ」
「やったー!!! 僕もう疲れたよ〜、さすがに魔法をバンバン使いすぎてね。こんなに使ったのは初めてだよ」
イテムはそのまま地面に寝っ転がり、大の字になった。……土が付いて汚れるぞ、と思ったが土の精霊にそれをいうのはどうなんだろうと思考が頭をよぎり、俺はそれを口に出す事はしなかった。
「マナブ、私が夜営の準備をするわ」
イテムの寝っ転がる可愛い姿で心を癒していると、俺の耳にレンちゃんのとんでも発言が入ってきた。
「──レンちゃん!? どうしたんだ!? 魔法の使いすぎで頭イカれちまったのか!?」
「──どうしてそういう事になんのよ!? ただ夜営の準備をするって言っただけじゃない!!」
「……だ、だってレンちゃん今まで夜営の準備なんて一回もした事なかったし……俺としては一体どういう心境の変化なのか気になってしまってな」
そう言うと、レンちゃんは視線を落としがちに小さな声でこう言った。
「……………………だってそうしないと、あの精霊にまた怒られるし……」
「…………………」
レンちゃんとしては聞こえないように言ったただの独り言だったが、バッチシ聞こえてしまった。
どうやら原因はウチの契約精霊の仕業でした。ご迷惑をおかけします。
「──そ、それに! 見張りもちゃんと交代でするからね! 交代でよ!」
「──なに!? 夜営だけじゃなく、見張りまでだと!? 一体どういう風の吹き回しだ!?」
「──いいでしょ! 別に! ただあんたに任せておけないだけよ! 他意はないわ!」
ぷいっと顔を背け、レンちゃんはバックの中から夜営道具を取り出すと、準備に取り掛かる。……どうやら本当に準備をしてくれるらしい。本当に一体あの水の精霊さんはなにをレンちゃんに言ったのやら検討もつかん。
まあいいか。別に悪い状況になっているわけでもないし。よし、じゃあ俺もレンちゃんのお手伝いでもするとしますか。
「レンちゃん! 手伝うよ。──ほら、イテムもそこで寝っ転がっていないで夜営の準備を手伝ってくれ」
「はーい! 任せてよ! マナブ!」
イテムがぴょんと寝転がっている姿から飛び跳ねるように立ち上がる。イテムは早く休みたいのか、テントを張る気満々であった。
「あんた達! 早くこっちに来て手伝いなさいよね! 1人じゃ時間かかってしょうがないんだから!」
「はいはい、それじゃあ行くかイテム」
「うん!」
そう言うと俺とイテムはレンちゃんの手伝いをするべく、向かっていった。
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