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前回のあらすじ
ハイキラービーの巣がなくなってるぅーー!!
「──イテム! ハイキラービーの巣がなくなってるぞ! どこいった!?」
「──僕にもわからないよ! マナブ! 僕たちが喜びを分かち合っているうちに、誰がが盗んだのかもしれないよ!?」
あったはずのものが無くなっている。人間誰そもそういう時には慌ててしまうものだ。現に俺は今、現在進行形で慌てていた。
俺とイテムがハイキラービーの巣があったところを見てわたわたと慌てふためいていると、レンちゃんが極めて冷静な声で話し出す。
「……まぁ、でもそんなに慌てなくてもいいんじゃない?」
「──なんでだよ! ハチミツがなくなったんだぞ! 試験不合格になっちまうだろうが!?」
「でも、ほら、あれ見てよ」
「……あれって……?」
そう言いレンちゃんはとある方向を指さす。そこへと視線を向けると、たくさんのハイキラービー達が木々に引っかかっている何か群がっていた。
遠目でよく見えない。
だが、ハイキラービー達が群がっているところを見るに、あの蜂達にとっては重要なものなのだろう。
「あれがどうかしたのかレンちゃん」
「……あんたまだ気づかないの? 鈍感ね。あれは私の魔法で破壊したハイキラービーの巣でしょうが! もしかしたらあそこにハチミツがあるかもしれないでしょ!」
「──!?」
……この赤髪ツインテール。ちゃっかりハイキラービーの巣を撃破したのは自分の魔法のおかげのようにいってやがる。
イテムが機転を聞かせてくれなければ、ただのでかい氷の塊だったくせに、なんてやつだ。
……だが「私の魔法凄いでしょ! ふふん!」みたいな顔が可愛すぎて、文句の一つも頭の中にでやしない。美少女という生き物は本当に人生イージーモードだぜ。
世界が優しい。
しかしまぁ、レンちゃんが気付いてくれて助かった。俺はあの氷でハイキラービーの巣はペシャンコになって跡形もなくなったのだとばかり思っていたからな。
「──よしっ! じゃあ群がっているハイキラービー達を倒して確認してみっか!」
「──おおー! 手伝うよ! マナブ!」
「おう! よろしくなイテム!」
「……あんた達、あんだけ戦闘しておいてよくそんなテンションでいられるわね」
俺とイテムがえいえいおーと拳を空へと突き出して、やる気を満ち溢れさせているのをレンちゃんは疲れ切った顔でそれを見ていた。……魔法の連続使用で疲れているのだろう。レンちゃんのまぁなんだ……そこそこ? 多分頑張っていた……かな?
……まぁ今はそれよりハチミツだ。
「──よし! イテム! 岩の柱で俺をあそこまで飛ばしてくれ!」
「──任せてよ! それじゃあ行っくよー!!」
イテムの掛け声とともに、俺は地面から伸びる岩の柱のてっぺんでしゃがみ落ちないように体制を整えた。
グングンと伸びていくそれは、ハイキラービー群がる方へと向かっていく。
そして、近づくにつれ、木に引っかかっているもののがはっきりと見ることができた。
「──おっ! レンちゃんのいった通り、ハチミツがたっぷりつまった巣じゃねえか!」
とろーりと滴る粘度の高そうな琥珀色に輝くハチミツ。見ただけでよだれがでてくるほど美味しそうだ。
これは早く持ち帰ってシルクちゃんやロココちゃん、そして孤児院の子供達でいっぱいお菓子を作って盛大にお茶会を開きたいぞ! 美少女達の喜ぶ顔も見たいしな!
「……だがその前に……あらよっと」
そのハチミツに群がるハイキラービー達。
こいつらをどうにか追い払わないとな。
近寄ってくる俺に気がついたハイキラービー達は先程との動きとは打って変わって、ただただ俺に向かって突進してくるのみ。
女王蜂の統率によってあの俺を苦しめた動きをしていたのだ。統率を失ったハイキラービー達になど、俺の敵にすらならない。
「──この世は弱肉強食! ハチミツはありがたくいただいていくぜ!!」
迫りくるハイキラービーを次々と撃破。
俺はお目当てのハチミツたっぷりハイキラービーの巣を両手で抱え込もうとするが、断念する。大きすぎたからだ。
……しかし、でかいな。一つの六角形の穴が大人1人は余裕で入りそうだぞ? 俺の目の前にある巣はとてもじゃないが、俺1人では持ち運べそうにない。
しゃーない、イテムに手伝ってもらうか。
そうして、俺はイテムに岩の柱の魔法を使ってもらうとその上にハイキラービーの巣を押し出し、下へとおろしてもらった。
そして、地上。
「……これがハイキラービーの巣から取れるという『極上ノハチミツ』ね……なんて綺麗な琥珀色なのかしら」
ハチミツが入った巣を見るや否や、真っ先に飛んできたレンちゃんはキラリと光るハチミツに目を奪われていた。
まぁあれだけ頑張って採ったハチミツだ。しかも普通のハチミツじゃなくて、極上ノハチミツだ。レンちゃんがああなるのも無理はない。
「まだいっぱいあるし、試しにレンちゃん、少し舐めてみたらどうだ?」
「──えっ!? いいの!?」
ガバッと驚きにめをみひらきながら、レンちゃんはこちらへと顔を向ける。……いや、目がギンギンすぎて少し怖いぞ?
「……ああ、もちろん……イテムもどうだ? 今回の功労者はイテムのようなものだし」
「──本当!? マナブ大好き!」
「──っと」
ぽふっと、腰のあたりに抱きついてきたイテム。ぐりぐりと顔を埋めている。
……こういう仕草はイテムの容姿通り、子供っぽかった。
「レンちゃんの抱きついてきてもいいんだぞ?」
「──なっ! なんで私があんたに抱きついて顔を埋めてうりうりしなくちゃいけないのよ!?」
「……いや、別にそこまではいってないけど……まぁ、したいなら……どうぞ?」
「──っ!? するわけないでしょ! ばか!」
頭から湯気が出るほど、顔を真っ赤にしたレンちゃんはプイッと顔を明後日の方向に向ける。
そして、ハチミツへと顔を向けるとキラキラとした瞳でそれを見つめた。
「じゃ、じゃあ……いただくわよ」
そういったレンちゃんは指でハチミツをすくうと、口元へと運ぶ。そうして艶やかな唇で舐めとった。
舌に触れたのだろう、その瞬間──。
「──な、何これ!? んあまーいっ!?」
ほっぺが落ちるのを止めるが如く、指を加えながら、片手を頬へとやってそのハチミツの甘みを堪能していた。
普段からツンケンしていて、あまり笑顔を見せないレンちゃんが今は顔が緩み切っていた。
「──なになに!? そんなに美味しいの!? 僕も食べる食べる!!」
レンちゃんのあまりの反応にイテムはかなり興味をそそられたようで、すぐさまレンちゃんの隣へと行き、同じように手ですくって舐めとった。
「──あまーーーーーいっ!!? 今まで食べてきたハチミツがなんだったのかと思うくらいだよ! このハチミツはまさに『極上ノハチミツ』だよっ!!」
イテムの味覚が大革命を起こしていた。これはもう普通のハチミツでは満足できなくなるのではないか?
……しかし、そこまで美味しそうに食べているのを見ていると俺も少し食べたくなってきた。
「……どれ、俺も1つ……」
レンちゃんやイテムのあまりの反応に俺も味覚を刺激された。俺も甘いものは好物である。異世界に来てから、全然食べることができなかったが、これを機にいろんな甘味を味わうのも一興かもしれないな。
綺麗な琥珀色のハチミツを口へ運ぶ。
「──うおっ!? あんまあっ! それにうんまっ!」
絶品だ。これは。
このしつこくない甘さがまた絶妙だった。ちょうど良い口当たりで全然甘ったるくない。これはお菓子の材料に使えば、さらに美味しくなりそうだ。
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