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前回のあらすじ
女王蜂に勝利
「……しっかし、どうすっかなこの状況」
目に見えるは空。
女王蜂とのタイマンで俺が拳一つで勝利した後、俺は重力による自由落下を余儀なくされている。
腕組みしながら真っ逆さまに落ちている。……ほんと、どうしようこの状況。まぁでも神様チートがあるから死ぬ事はないが、こう高いところから落ちるのってヒュンってなるよな、ヒュンって。
あの感じがどうも嫌なんだよな。
「まぁ、いっか、女王蜂は倒せたし、これでハイキラービー達も統率を失うだろ」
俺の拳でバラバラになった女王蜂も一緒に落ちている。……うぇ、気持ちわるい。見るんじゃなかった。
さて、落下しながら下を見ると、案の定ハイキラービー達は右往左往と飛び回っていた。
女王蜂を統率を失いハイキラービー達の行動は半々に分かれた。
一方は一目散に空の彼方へと飛び去っていき、もう一方は俺やイテムの方へと鋭い毒針などで攻撃してくる。
「──人が落ちている最中なのに、攻撃してくんなっ!」
落下の勢いを利用し、拳を振るう。
次々と迫ってくるハイキラービーを殴りながら、俺はふと頬をひんやりとした冷気が撫でた。……これはまさか。
──ヒュオォォォウウウーー!!!
辺りの温度が急低下していく。
キラキラと氷の結晶が流れるように、ある一点に集中していく。
──よしっ! レンちゃんの魔法を発動したんだな! これで巣にいるハイキラービー達は一網打尽だ! レンちゃんありがとうっ! 愛してる! そう思い、落下しながらもレンちゃんに感謝の念を送っていると魔法が完成する。
──ピッキーーーーンッ!!!
巨大な氷の塊が一瞬にして出来上がる。
「──っしゃ! これで……こ、れで……?」
が、あの赤髪ツインテールは肝心なところでやらかしやがった。
俺の目に見えるのは巣からはかなり離れた上空にあるレンちゃんの魔法によりできた氷の塊。
上を見上げながら、俺はこれ、どうすんの? と頭を悩ませる。もう一度レンちゃんに魔法を撃ってもらうか? ……いや、さすがにこれだけの魔法を連発させるのは気が引ける。
それにレンちゃん自身は全然平気風なことは言っていたが、どう見てもやせ我慢であることは誰の目で見ても明らか。イテムもハハハ……と苦笑いしていたし……。
「……さて、すぎてしまったことはしょうがない」
反省はしても後悔はしない。
それが俺のモットーである。人間誰しも失敗はする。それにいちいちネチネチと小言ばっかりいう奴はただの暇人だ。相手にする必要はない。そんな奴は俺の人生には不必要な人だ。
人生に不必要な奴などに自分の時間を使うのはばからしい。この世界の全員がそう思って生きていってくれたらと本気でそう思う。
頭の中で色々考えを巡らせていたら、もう眼前には地面が差し迫ってきていた。……どうしよう、このままの体勢だと俺、ガイアに口付けしちゃいそうだ。
美少女なら大歓迎だが、ただの土に俺の唇をやるほど安くはない。ありったけの力を総動員し、体をくねらせると猫が着地するように両手両足でスタッと着地した。
「……やれば出来るもんだな」
人間やろうと思えばある程度のことは出来るもの。できないできないいう人間には何のスキルも身につかないし、そういう人間に限って年老いて死ぬ間際にあれをしておけば……これをしておけば……と後悔をする。
だから、ただ一度だけの人生。
後悔しないよう、毎日を生きるべきだと思う。俺の死んだじいちゃんがよくそう言ってた。
めり込んだ地面から手足を抜くと、空へと視線を送る。そこには馬鹿でかい氷の塊。本来、ハイキラービーの巣に当たるはずだったそれは、今その遥か見当違いの空へと出来上がっていた。
……もう役に立たないあの氷はカキ氷にして食っちまおうかな。
そう少し現実逃避気味の考えが、脳によぎったが、いかんいかんと思い直す。
俺がかぶりを振り、意識を現実に戻そうと努力していると──。
「──マナブ! あれは僕に任せてっ!」
後方からイテムの自信に満ちた声。
バッと振り返るとそこには氷へと視線をむけ、てを突き出すイテムの姿があった。
「……任せてってイテム、あの状態からどうするつもりだ?」
「まぁ、見ててよ! 『ロックピラー』!」
イテムはそう言うと、巨大な氷目掛けて、地面から岩の柱を突き出した。
すると、その岩の柱が次々と列を作るように、何十、何百と大地から出っ張りでた。その集まった岩の柱が大きな氷を受け止める。
「──おおっ!」
「まだまだこれからだよっ!」
イテムがそう叫ぶと、ドンッ! ドンッ! とまた岩の柱が地面から突き出る。すると今度は2列状の岩の柱が、その馬鹿でかい氷からハイキラービーの巣へと走るように完成した。まるでレールのようだ。
「……こ、これはまさか」
「そのまさかだよ! マナブ! このままドカーンっと当てちゃうよ!」
イテムが得意げな笑みを浮かべると、また魔法を行使する。すると岩の柱の上で止まっていたレンちゃんの魔法の氷が徐々に動き出し、ハイキラービーの巣を目掛けて転がり出す。
──ゴゴゴゴゴッッッッッッッ!!!
けたたましい重低音を響かせながら転がる氷の塊。
向かう先はハイキラービーの巣。
徐々に加速していく氷に巣の近くを飛んでいるハイキラービー達も大慌て。なす術なくその光景を見ていた。
「──よっしゃああーーー! いっけーーー!!!!」
俺の掛け声と共に、ぶち当たる。
──ドカカァァッァァァァァァーーーーーン!!!
岩といわ、硬いもの同士が激しくぶつかる時に聞こえる轟音。それに爆発音。とにかく凄まじい音で思わず耳を両手で塞いだ。
瞬く間にハイキラービーの巣を破壊した氷の塊はその勢いのまま森の奥へと転がっていった。……なんかすごい森林破壊しているような気がするけど、ここはあまり気にしないことにしよう。
──しかし、イテムの機転のお陰でレンちゃんの魔法を無駄にせずにすんだ。俺はその喜びをイテムへと伝えるべく彼女の方へ視線を向けるとこちらへと向かってくるイテムが目に入る。
「──マナブ! どう! 僕のアイディアは?」
「ああ、あんなんよく思いついたな! イテムのお陰でレンちゃんの魔法も無駄にならず、そしてハイキラービーの巣まで破壊できて一石二鳥だな! さすがはイテムだぜ!」
「もう! マナブったら、そんなに褒めても何もでないよ?」
イテムはそう言って、俺の胸元へと抱きついてくる。子供の高い体温を肌で感じながら、俺はそれを受け止め、くるくるとイテムと抱き合いながら回った。
ははははは、うふふふふ、とふたりしていい笑顔で笑いながら、回っていると──。
「……あんたたち、あれを見てよく笑っていられるわね」
どんよりと沈んだ声。
回るのをやめ、そちらへと視線を向けると、そこには肩を落とし、気分を落ち込ませたレンちゃんの姿。そのレンちゃんにイテムが質問をする。
「レン? どうしたの? それにあれってどういうこと?」
「……ハイキラービーの巣があったところをもう一度よく見て見なさいよ」
そう言い、指をさしたレンちゃん。
その指の先を視線で追っていく俺とイテム。するとその視線の先にはあったはずのものがなくなっていた。
「「──ハイキラービーの巣が無くなっているーーーーーーっ!!!???」」
ふたりして大声で叫び声をあげた。
木霊する俺とイテム、二人の声。その声を聞いたレンちゃんがやっと気がついたのかよ……とでも言いたげにクソデカ溜息をしていた。
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