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前回のあらすじ
女王蜂の襲来
「──よっ、ほっと」
上空にはハイキラービー達の群れ、岩の柱に飛び移りながら俺は次々に奴らを一匹、また一匹と倒していく。地面には絶命したハイキラービー達の骸が無造作に転がっている。
それを眺めていた俺は視線を女王蜂へと移す。奴は今、ハイキラービー達が飛んでいるより遥か上空にいる。
イテムの魔法で作られた岩の柱でも、さすがに女王蜂のいるところまでは届かない。
「……しかし、あの女王蜂にハイキラービー達を操る能力があったとはな……」
面倒この上ない能力である。敵を見つけたらただ単純に突撃してくるだけだったハイキラービー達が一転、女王蜂の指示によりまったく近寄って来なくなり、遠距離攻撃である毒液を飛ばしてくるだけしかして来なくなったのには少しだけまいった。
が、イテムの機転のおかげで助かった。
岩の柱を矢継ぎ早に飛び移りつつ、俺はイテムへと感謝の気持ちを送る。
そして、ひとしきりハイキラービーを殲滅した。時には腹パンで殴り、時には毒針を引きちぎり、また時にはその毒針を投げ、串刺しにする。
それによってかなりの数のハイキラービーを倒す事ができた。目に見えて上空を飛んでいるハイキラービー達の数も減ってきている。
「よしっ、あともうちょい!」
岩の柱へと着地しながら空を見上げ、終わりの見えてきた戦闘にほくそ笑む。
が、ここで問題が発生した。
「キシャー! キ、キシャ、キ、シャーー!!!」
遥か上空から響き渡る耳障りな叫び。
女王蜂の声である。その声を耳にしたハイキラービー達の行動がまた一斉に変わる。
今まで岩の柱を飛びかう俺に向かって攻撃を仕掛けてきていたが、突如としてとある方向へと攻撃の矛先を変えた。
──そう、レンちゃん達の隠れている草むらにである。
「──っ、ちっ!! バレていたかっ!」
俺はすぐさま岩の柱から飛び降り、レンちゃん達へ向かっていたハイキラービーの一匹の背中に蹴りをお見舞いする。
「──キ、キシャ!?」
蹴りを入れられたハイキラービーは別の個体に凄まじい速度でブチ当たり、錐揉みして地面へと叩きつけられた。あまりの衝撃に原形を留めていない。
しかし俺はそれに一瞥することもなく、蹴りの反動を利用して、また別のハイキラービーの背中に飛び乗ると羽を毟り取る。
「──キシャ!?」
羽を毟り取られた個体は、飛ぶ勢いのまま重力によって地面へと吸い込まれる。俺は激突する瞬間を見計らい、ハイキラービーの背中を蹴り、飛び上がる。
土を撒き散らしながら、激しく地面に衝突し絶命したハイキラービーを横目に見つつ、俺は勢いそのまま地面へと足を着けると、ザザザザァーーー!!! と砂埃を上げつつ着地し、レンちゃん達の前で立ち上がる。
「──二人とも! 無事か!?」
俺の声にイテムが草むらからひょっこりと顔を覗かせる。
「っ──、僕もレンも大丈夫! それよりマナブはどうなの!? 毒液がかかっていたように見えたけど!?」
「──ああ、それなら心配はない、俺にはあの程度の毒はまったく効かないからな」
あの程度もどの程度も毒など俺の神様チートの前ではまったくの無力。毛ほどもない。
今までの戦闘で総数はだいぶ減ったものの今だにハイキラービー達は健在だ。それに女王蜂もいる。俺は油断せずに正面にブンブンと飛び回るハイキラービー達を見据えながら、イテムと会話する。
「……マナブがそういうならいいけど……あまり無理しないでよ! 僕も微力ながら援護するから!」
「ああ、助かる!」
イテムの返答を聞きつつ、チラッとレンちゃんを見ると、彼女は目を閉じ、魔法の詠唱に集中している。その表情には一切の焦りもなく落ち着いていた。
……俺が守るって言ったことを信じてくれているのか? そう思わずにはいられない表情であった。
……これは俄然、やる気が出てきたぞ。
俺はフッと息を吐き腹に力を込め、改めてハイキラービー達を見据える。
今なら、どんだけの数が来ても相手に出来そうだ。
そんな気持ちだった。
「……しっかし、まだまだ出てきそうなんだよな……巣からどんどん出てくるし」
俺の見据える先に、巣の入り口から次々と出てくるハイキラービー達。……これ、一体何匹出てくれば気が済むの?
……雑魚をいくら倒そうが、ダメなのだろうか? ここはやはり敵の頭を倒すしかないようだ。
狙うは女王蜂だ。
あの女王蜂さえ倒せば指揮系統は無茶苦茶になり、後は容易に殲滅できるだろう。
だが、俺一人の力では、あの遥か上空を飛んでいる女王蜂のところまで行くことはできない。……どうしたもんかな……。と、ハイキラービー達を相手取りながら頭を悩ませていると、前方に複数の岩の柱が凄まじい勢いで地面から生え、ハイキラービーを串刺しにする。
……おいおい、イテムも、この世界の串刺し公だったのかよ……っと違うそうじゃない。ついついアホな考えに頭を奪われてしまったわうだ。反省反省。しかし、あの勢いの岩の柱の先に乗ってジャンプすれば、女王蜂の所まで届くんじゃないか? よしっ! ここは土の精霊の力を借りるしかない。
次々と迫りくるハイキラービー達を相手にしながら、俺はイテムへと大声を張り上げる。
「──イテム! 力を貸してくれ!」
魔法の発動をしていたのだろう。少しだけの時間差でイテムが返事をする。
「──マナブっ、何をすればいいの!?」
俺は女王蜂が上空へと指をさす。
「上に一際でかいハイキラービーが見えるだろ!? そいつのところまで俺をイテムの魔法で飛ばして欲しいんだ!!」
「──えぇ!? それは危なくないかなっ!? 空に飛んで行った後とかどうするの!?」
「大丈夫だっ! そのくらいなんとかなる! 俺を信じろ!」
真剣な表情でイテムを見つめると、俺の気持ちが伝わったのか、イテムはこくんと頷いた。
「……わかったよ、マナブを信じるっ! でも僕はいつ魔法を発動すればいいの?」
「それは俺が声を出して合図するっ! 合図と同時に俺を上空に飛ばしてくれっ!!」
その言葉を切り目に俺はハイキラービー達へと突撃する。岩の柱がを足場に、次々と飛び移りながら敵を撃墜していく。
(……少しでも数を減らしておかないとな。レンちゃんやイテムに負担をかけたくないし)
女王蜂の様子を見つつ、俺がハイキラービー達を相手する事体感で十分かそこら。だいぶ数が減って来たところを見計らって、俺はイテムへと声を張り上げる。
「──イテムっ!! 今だぁーー!!」
声をあげたとほぼ同時に足元に微弱の地震。そして直ぐに激しく揺れると足元の土が勢いよく持ち上がった。
上昇する際にかかる重力を耐えながら俺は遥か上空にいる女王蜂へと徐々に近づいていく。そして岩の柱が伸びる限界地点まで来ると俺はその勢いのまま飛び上がった。
弾丸のように女王蜂へと向かっていく。
激しい風で開けにくい目を無理やり開け、女王蜂を見据える。向かってくる俺に気がついたのかキシキシと嫌悪感マックスの口ものを動かすと一際大きい毒針を突き出しながら、突進してきた。
「──上等だぁーー!! 来やがれぇーーー!!!」
「──キシャアァアアァァァァァアーーーーー!!!」
迫る距離──。
風も置き去りにしてしまいそうな程の速さ。女王蜂の毒針がキラリと光る、俺は拳に力を込めると、女王蜂へと向かって突き出す。
「──くらいやがれぇーーー!!!」
向かいくる毒針へと吸い込まれるように当たる拳。直後──
「──キシャ!? キシャアァーー!?」
バキバキと耳を劈く音と共に、粉々に砕け散る毒針。そしてそのままの勢いで俺の拳は女王蜂の腹、胴体、頭を一直線に貫いた。
交差した俺と女王蜂。
空中戦はどうやら俺の勝利のようだ。
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