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前回のあらすじ
空にいたら、ハイキラービー達の巣を見つけたよ。
「──な、なんですって!!?」
俺のセリフに過剰に反応するレンちゃん。……俺はただ「ハイキラービーの巣を見つけた」といっただけなのに。この赤髪ツインテールはなぜこんなにも驚いているのだろうか?
「……まぁまぁ、落ち着けって、そんなに驚いていたら胸がびっくりしてどっかにいってしまうぞ?」
「──えっ! 胸って驚いたらどっかにいっちゃうの!?」
なぜか、イテムの方が食いついた。
その驚きようはさっきハイキラービーに追いかけられていた時よりも、激しい驚きようだった。……小さくてもやはり女性なんだなと、ふとそんなことが頭に浮かぶ。
イテムは、胸を両手で押さえながら、ガクガクと震えていた。……いや、どんだけ衝撃を受けてんだよ。
「──って、そんな嘘はどうでもいいのよ! 私が聞きたいのは本当にハイキラービーの巣を見つけたのかどうかってこと!」
レンちゃんが俺に詰め寄り、指を突きつけた。おいおい、人に指を刺すなって親に習わなかったのかよ、とどうでもいいことが頭の中に浮かび上がったが、俺はそれを無視して話を進めることにした。
「ああ、もちろんだ。というかここで嘘をついてもしょうがないだろう。空に飛び上がった時にチラッと目に入ったんだ。丸くて波打った紋様が特徴的な巨大な巣がな」
「──でかしたわマナブ!! さすがね!」
「──っおっと」
再び、俺を抱きしめるレンちゃんに俺は少し困惑する。……何だかレンちゃん感情の表現方法が直情的になってきてやいないだろうか……。
と、まぁ? 俺としては、こう美少女に抱きつかれるのは全然ウェルカムだから問題ないが、もしレンちゃん誰彼構わずこういう感じで感情表現をしているのであれば、ちょっとだけ嫉妬してしまうぞ。できれば俺だけにそういうことはしていただきたいものだ。
「それじゃあマナブ、そこにさっそく向かおうよ!」
と、イテムが張り切りながらそういった。さっきの胸の件はどうやら自分で気持ちの整理をしたようだ。うんうん、切り替えが早くていいことだ。悩むことは大事だが、悩み過ぎるのはよくない。事前に今日は夜に十五分だけ悩む時間を作ってその時間だけ悩む、という具合に悩む時間を事前に決めておくことが大事だ。うじうじと長時間悩むのはナンセンス、効率的ではない。効率厨の俺としては由々しき問題だ。もし悩みすぎている方がいる場合、この悩みのプロ、マナブに相談して欲しい。
……おっと、話がつい脱線してしまった。俺はついつい思考が変な方向へと脱線してしまう癖があるようだ。そしてこれが今の俺の悩み。俺は物心ついてからずっと悩まされている。まぁそんなことはどうでもいいか。
「ああ、そうだな。レンちゃんもそれでいいか?」
「……ええ、構わないわよ。まだまだ余裕よ!」
グッと拳を握り、レンちゃんは元気アピール。どうやら先ほどの魔法の疲れはなさそうだ。なかなかの大魔法であったが、疲れた様子を見せないレンちゃんに俺は素直に感心した。この子は意外とあとあと化けるかもしれないな。大器晩成型なんだろう。
俺はその成長を楽しみに眺めていくことにしようと、なぜか子を見守る親の気持ちになった。まだ恋人すらいないのに、こんなに大きい子供がいるという妄想をついしてしまったようだ。いけないいけない。
「それじゃあ、いくか」
俺は二人を連れたって、ハイキラービーの巣へと足を進めるのであった。
*
「……これが、ハイキラービーの巣」
「……お、大きいわね」
巨大なあるものを見上げる美少女ふたり。
彼女達が顔を上に向けている理由はもちろんハイキラービーの巣である。あまりの大きさに俺も少し驚いている。遠くで見たときは、それほどでもないと思っていたが、改めて近くで見ると首をかなり曲げないといけないくらいの大きさでビビった。
「まだ、草むらから出るなよ?」
「……わ、わかっているわよ」
俺達は今、大きなハイキラービーの巣を眺めながら、近くの草むらの影に隠れていた。ハイキラービーの巣は巨木にぶら下がるようにひっついていた。
目測で直径四十メートルはありそうだ。そのでかい巣の周りをブンブンと羽音をたて、飛び回っているハイキラービー達。……さて、どうやってハチミツをいただこうか。
俺はうんうん頭を悩ませていると、俺の隣にしゃがんでいたイテムがある事を呟いた。
「あの巣をまるごとレンの魔法で凍らせてしまえばいいんじゃないかな?」
「──それだ!?」
ビシッとイテムに人差し指を突きつける。人に指を刺してはいけませんと習ったのにも関わらず人に指を刺してしまった。せいれいだからセーフとかにはならないだろう。しかし、俺はちゃんと人に指を刺してはいけないということを知っている。ちゃんと教えてもらった。
だが、もし知らないで人に指を刺している場合はどうだろうか? それだと自分が今、悪いことをしているとは全然思わないだろう。意識すらしないだろう。相手に嫌な気持ちを抱かせているとすら思わないだろう
だから、知らないということはいけないことなのだ。そして知らなければ頭ごなしに怒るのではなくただ教えてやればいいだけ、ただそれだけのこと、わざわざ感情をこめてまで怒る必要は全然ない。無感情にただ伝えるだけでいい。なぜそれをしちゃいけないのか、それをすると何がいけないのか、そういったことを教えてあげればいいだけ。
「……そうね、それなら全部の敵を相手にしなくても済みそうね!」
「そうだな、だが今いる場所では確実に魔法を当てることはできないだろうからな。さっきみたいに近く必要がある」
俺の苦言にレンちゃんは悩むように眉を八の字にした。
「だから、俺がまた奴らを引きつけてやるよ。そんで準備が整ったら、レンちゃん、魔法を放ってくれ」
「……わ、わかったわ」
緊張したようにコクリと頷く赤髪ツインテール。この子は結構プレッシャーに弱いのだろうか? しかしレンちゃんが魔法を放ってくれなければ、俺がどうにかこうにか巣に特撃していかないといけなくなる。できなくはないが、やりたくはない。俺はやらなくていいことはやらない主義だ。やらないといけないことも最低限の労力でやりたい主義なのである。
しかし、レンちゃんに負担を押し付け過ぎるのもよくない。バランスというものが大事なのだ。パーティプレイには。
「……だが、レンちゃん。結構連続での魔法の使用だが、体調は大丈夫なのか?」
「な、何いってんのよ! 全然平気なんだから! あと何発でも撃てるわよ! 任せておきなさい!」
「それは助かる……任せたぞ」
「ふ、ふん! よ、余裕よ! このくらいっ!」
俺がぽんっと肩を軽く叩き、エールを送ると頬を軽く赤く染め、プイッと顔を背ける。……どうやら恥ずかしがっているようだ。なんとも可愛らしい仕草だ。
「レン! 今度もバシッとよろしくね!」
「──任せなさいっ、私を誰だと思っているのよ! あのレン様よ! 大船に乗ったつもりでいなさいよね!」
……あのレン様とはどのレン様なのだろうか? 俺は全く寝耳に水状態なのだが、まぁ本人が気持ちよさそうに言っているので俺がとやかく口に出すことではないのだろう。沈黙は金とはよく言ったものである。
「それじゃあ、辺りの警戒は任せてレンちゃんは魔法の詠唱に入ってくれ」
「……任せるわよ、マナブ。私をしっかり守ってよね」
「ああ、傷ひとつ、つけさせやしないから安心して詠唱に集中しておけ」
俺の言葉にレンちゃんは安心したように微笑むと、目を閉じ、詠唱を口ずさむ。
──さぁて、ハチミツ採集の開始と行きますか。
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