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前回のあらすじ
ハイキラービーに目印をつけたよ。
「……それにしても、何処まで行ったんだ?」
先程の戦闘から、おおよそ一時間。
重なり合うように生茂る森の中を、おれ達は青い紐の指し示す方向へと向かって歩いていた。が、一向に巣は見つからない。
「……なかなか、見つからないわね……」
レンちゃんも何処か、疲れているっぽい。まぁこんな鬱蒼とした森の中をひたすら歩いていたら誰だって疲れる。現におれも疲れている。精神的にな? 肉体的には神様チートがあるので問題はないが……。おれの頑丈は身体を常に健康な状態に保ってくれるのでとても助かっている。
「大丈夫だよ! 青い紐はちゃんと一定の方向を向いているんだし、このまま進んでいけばちゃんとハイキラービーの巣までたどり着けるよ!!」
テンションの下がっているおれ達をそう元気付けてくれる可愛い土の精霊イテム。こんなに可愛い美幼女に元気付けられてしまったら、元気を出さないわけにはいかないな。ふぅ、美幼女とは罪な生き物だ。
「ありがとう、イテム。元気が出てきたよ」
「ふへへ〜よかったよ〜」
少し暗めの茶髪を撫でつつ、おれはひとつ提案をする。
「なぁ、少し休憩を挟まないか? さすがに疲れた」
「……そうね、こんな状態でハイキラービー達を戦闘になったら、危険だものね」
レンちゃんも疲れていたのか、おれの提案にすぐさま賛成した。
「イテムもそれでいいか?」
「うん! 全然構わないよ! といっても僕は土の精霊だから、魔力さえあれば全然問題ないけど」
「精霊というのは、魔力さえあればいくらでも動けるものなの?」
リュックを木の根の方へと下ろしながら、レンちゃんが疑問を投げかけた。
「そうなんだ! この身体だって全部魔力で維持しているようなものだからね」
「へぇ〜そうだったのか。こんなにもいい感触なのにな」
クシャクシャと髪を撫でる。イテムはくすぐったそうに目を閉じていた。それにしても可愛いなぁ〜中世的な顔だが、雰囲気が女の子っぽいので男の子とはまちがわれることはないだろう。
髪を撫でながら、おれは木の根元へと腰を下ろした。するとイテムもおれを背もたれにして、脚の間に腰を下ろす。すっぽりとおさまりがいい。するとイテムはこちらへ見上げ、おれに話しかける。
「そういえば聞きたいことがあったんだけど、マナブってマットとどういう仲なの?」
「ん? ああ、そうだな……知り合いっつうかなんつうか、たまたま教会に用事があってな? その時にチラッと見たくらいだったんだが……ここに来る時に何だか困っているようだったからな、少し声を掛けたら友達がいなくなったっていうからよ。おれが探してやるっていったくらいの仲だな」
どういう仲と聞かれても、ただの知り合いとしか答えられないな。たまたまおれの試験とマットの用事が重なっただけだ。
「そうなんだ……マットには悪いことをしたなぁ〜」
「かなり心配していたからな、あとで謝っておくといい」
「うん、そうするよ。……でもマナブ、ありがとね!」
後頭部をおれの胸に当て、こちらを見上げるイテム。茶色の瞳がおれを見据えた。
「……助けに来てくれて、本当にありがとう。あのままマナブが来てくれなかったら、僕は行き倒れていたよ」
「そうなのか? 精霊ってのは魔力さえ有れば、問題ないのではなかったか?」
「あの時は、マットからもらった魔力でなんとか持っていたんだけど、流石にスクロースの森まで来るのには、足りなかったみたいだね。マナブから魔力の詰まった干し肉を食べて、かなり回復したけど」
「……あの干し肉って、魔力がこもってんのか?」
「えっ!? マナブ知らないで僕にくれたの!?」
ガバッと体をこちらへと、振り向かせ顔を見つめてくるイテム。その顔は驚愕に目を見開いていた。
「……いや、ただの干し肉とおれは思っていたが……魔力なんて籠っていたんだな?」
イテムはおれの脚の間で、居心地を直すとおれを背もたれにしつつ、話し出す。
「……まぁ、マナブが知らなかったのはびっくりだけど……マナブは自分で気づいていないの?」
「……気づいていないとは、何がだ?
「マナブは常に魔力をダダ漏れにしているってこと」
「……ダダ漏れ?」
「そう、ダダ漏れ」
おれは知らず知らずのうちに、とてももったいないことをしていたようだった。魔力ダダ漏れ事件である。早急に対処しなければ。
「それって止めることって出来ないのか?」
「そうだね、止める事は出来るけど……別に悪いってわけじゃないよ?……ただ魔力感知に優れている精霊やモンスターなんかに、見つかりやすいってことくらいかな」
「ああ、だからおれは精霊に好かれるのか?」
「いや、別にそういうわけじゃないけど……」
どうやら違ったらしい。
「マナブの場合はただただ魔力の波長が、精霊にとって好ましいんだよ。フィーリングってやつがね」
フィーリングか……。そういえばルディアもおんなじ事言ってたな。
「……そうか、それで? このダダ漏れの魔力はどうすれば止められるんだ?」
「スキル《魔力操作》があれば、止められるとは思うけど……別にマナブは暗殺者とか諜報として働くわけじゃないんでしょ?」
「……まぁ、そうだな。おれは冒険者として働いていくつもりだ」
「なら、あんまり気にする必要はないと思うな」
そうなのか、まぁ確かに、おれの魔力がダダ漏れであろうがなかろうが、今まで不便に感じた事はない。だったらそう気にする必要はないな。しかし、ダダ漏れのままだと、おれが所持している干し肉が魔力をおびた干し肉へとランクアップしてしまう。これはおれにとってデメリットになるのかどうかだけ聞いておこう。
「イテム、おれが魔力をダダ漏れにして、干し肉が魔力をおびたら、何か悪い事は起きないだろうか?」
すると、イテムは少しだけうーんと思案顔になると、すぐに破顔し語り出す。
「心配はいらないよ、そこまで高濃度の魔力でもないし、マナブが意識して込めた魔力だったら別だけど、無意識で発している魔力だったら全然問題ないと思うな。それに僕はそのおかげで魔力を補給できたし」
「そうか、それなら心配はないな」
なるほど、よかった……。おれの無意識の魔力のせいで周りに迷惑をかけていては、いろいろと申し訳ないからな。というか、魔力がダダ漏れなのはおれだけなのだろうか? レンちゃんとかはどうなのだろう?
「イテム、魔力がダダ漏れなのはおれだけなのか? レンちゃんはどうだ?」
いきなり話題を振られ、ビクッとなるレンちゃん。見てて少し和んだ。
「……な、何よ」
「レンは……そうだな〜。レンもそこそこ漏れているね。人間にしては魔力量はそこそこあるけど。このくらいだったら全く気にならないね」
「……魔力なんてそこそこあれば、十分なのよ! ようは使い用よ! 使い用!」
レンちゃんが腕を組んでプリプリと怒っていた。その様子をイテムは面白そうに眺め、おれに視線を戻す。
「ははっ!! ごめんごめん! ……要するに圧倒的に魔力量が多いマナブ見たいな人は無意識のうちに持ち物とかに魔力が籠ってしまうのさ」
なるほどな、今度から気をつけることにしよう。じゃないと、おれの魔力が篭った様々に食材ができてします。おれのバックには食料が大量に入っているからな。
しかし、食べ物の事を考えていたら、お腹が空いてきたな。おれは干し肉を取り出そうとバックに手を伸ばそうとした時──。
ブーーーーーーーンッ!!!!!!
と、激しい羽音が鳴り渡った。
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