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前回のあらすじ
ビビっていたイテム。レンちゃんのお陰で元どおり。
「──ちょっとマナブ!! あれ見て!!」
レンちゃんが指差す先に視線を移すと、そこには数匹のキラービーが白い花の蜜を吸っていた。おれ達は草むらに隠れながら、その様子を眺める。
「……あれが、キラービー」
「結構でかいな」
……思っていたより、でかい。
おれ達がいる草むらからキラービーまでは、目測三十メートルくらいあるが、それでもでかいとわかるほどだ。どういうことだ? キラービーは体長六十センチくらいの蜂型モンスターじゃなかったのかよ! あれはどう見ても、二メートル超えてんぞ!!
「……ねぇ? マナブ? あのキラービーって、大きくないかな?」
「……確かに……でかいな。あれは本当に普通のキラービーなのか……?」
おれとイテムがうんうん唸っていると、レンちゃんがリュックから何やら本を取り出した。
「レンちゃん、何を見ているんだ?」
「……少し黙って」
黙々と本のページを開いていく、するとあるページで目的のものを見つけたのか、こちらへと見せてきた。
「これを見て」
おれとイテムは顔を見合わせたが、レンちゃんに言われた通り、本に視線を目を通す。
「……なになに? ハイキラービーについて?」
「……通常のキラービーと異なる点は、体の大きさ……」
体長が二メートルはあるんだってさ。ははっ! まるで今見ているキラービーとまったく同じだね。
「それにここ! ここ見なさい!!」
ビシッと効果音が出るほど、激しく差した指が示していたのは、本ととある記事。
「……えっと、ハイキラービーは凶暴性が通常のキラービーに比べ、格段に上がっている。また察知能力にも優れ、周囲五十メートルの範囲内に近づけば、あっさりと見つかってしまうだろう……だってマナブ」
「……おいおい、周囲五十メートルって言ったら、もう範囲内に入っちまってんじゃねぇか」
「……そうなのよ」
「……いや、レン、そうなのよって……やばいんじゃないの?」
ブーーーーーーーンッ!!
おれ達はゆっくりと後ろを向く……。
すると、さっきまで蜜を吸っていたハイキラービー達がこちらへ向かって飛んできていた!
「きゃあぁぁぁぁぁぁぁーーー!!!」
一目散に逃げ出すレンちゃん。すぐに草むらへと逃げ込んだ。
……逃げ足早いな……思わず感心してしまった。しかし、イテムは意外と根性あるのな、あのでかいハイキラービー達を見ても逃げ出さないとは。
「イテム、怖かったら、レンちゃんと一緒に逃げてもいいぞ」
「……ありがとう、マナブ。でも大丈夫だよ、僕はこう見えて、そこそこ優秀な精霊だからね」
「そうか、でもここはおれに任せておけ」
ニッと得意げに笑いかける。
そして、おれはハイキラービー達に《鑑定》を発動させる。
……なになに?
・ハイキラービー
レベル:41
スキル:麻痺毒針《刺した相手の行動を一時的に奪う》
……へぇ〜、鑑定ってこういう風に見えるんだな。またひとつおれは賢くなった。……しかし、レベル41っていうのは強い方なのか? 比較対象が必要だな。
まぁそれに関しては、まずはこの敵を倒してからだな。おれは目の前に迫ってくるハイキラービー達を見据え、スキル《挑発》を発動させる。
すると、全ての敵がおれに向かって飛んでくる。相変わらず挑発スキルは便利だな。効果範囲内であれば、わざわざおれが動かなくても敵が勝手におれに向かってくる。おれは動かず、ただ待っているだけでいい。最高のスキルだ。
だがしかし、おれ以外のものが挑発スキルを使っても宝の持ち腐れだろうな。普通の冒険者はモンスターに寄ってきて欲しくはないだろうからな。
「……さてと、敵は……全部で三匹か……」
ブーンという羽音がやかましい。さてさて、とりあえず二匹は倒しておきますか。
ハイキラービーがおれに向かって、毒針を突き出した。が、おれはそれを《頑丈》スキルを使って素手で受け止める。はっはっ! 神様チートを持っているおれにそんなしょぼい攻撃など効かん!!
「マナブ!!? 大丈夫!?」
「ああ、問題ない」
イテムが心配そうに見ていたが、おれは何でもないように、受け止めた毒針を引きちぎる。そして、別のハイキラービーへと投げつけた。
「──おらっ!!!」
その毒針は、見事、ハイキラービーの頭に直撃し絶命する。ブンブン飛んでいたが地面へと叩きつけられていた。
「……す、すごい」
イテムが驚嘆の声をあげ、こちらを見ている。
「……さてと、最後の一匹だが……こいつには巣まで案内して貰わないといけないからな……」
と、おれが残りのハイキラービーを軽く相手にしながら、考えていると──。
「マナブ! そいつ抑えてて!!」
今まで、草陰に隠れていたレンちゃんが、何やらおれに向かって叫んでいた。なんと都合のいい美少女だ。優勢と見るやいなや、戻ってきやがった。まぁいいおれは美少女にはとことん甘い男マナブである。
レンちゃんのいう通り、向かってきたハイキラービーの背後へと回り、地面へと叩きつけ、取り押さえる。するとレンちゃんがこちらへと駆けてくる。
「……取り押さえたけど、この後どうするんだ?」
「これを付けるのよ! ちゃんと抑えててね!」
そう言って見せてくれたのは、一本の赤い紐のようなものだった。というかただの紐だ。……なるほど、この紐を目印にして巣まで尾行するんだな。なかなかちゃんとレンちゃんも考えているんだな。
でもこれって、付けなくてもこのハイキラービーのでかさならそうそう見失うことなんてないんじゃないか?
「レンちゃん、その紐は何で付けるんだ?」
「──はぁ、そんなことも知らないの?」
馬鹿にしたように、おれを見据える赤髪ツインテール。腹たつが、腐っても美少女。これくら余裕で我慢できる。言っているのが美少女だから。
「……まぁいいわ、今回は特別に教えてあげる。この紐はただの赤い紐じゃなくて、マジックアイテムなのよ」
「マジックアイテムなのか……」
「そうっ! この赤い紐とは別に青い紐があるんだけど、その赤と青の紐同士は特殊な魔力でお互いを引き合うように作られているの」
「だから、赤い紐を付けておけば、あとは青い紐が指し示す方向へ進んでいけばいいってことか?」
「そういうこと……よしっ! 付け終わったわ! それじゃ、話して頂戴!!」
レンちゃんの掛け声と共に、おれは挑発スキルを解除して、ハイキラービーを空へと放り投げた。するとそのまま空高く飛んで行ったハイキラービー。一瞬で空の点となった。
「……それで? ちゃんとそのマジックアイテムは機能しているのか?」
そうレンちゃんに問いかけると──。
「ええ、問題ないわ。ほら見て見なさいよ!」
彼女が手に巻きつけている青い紐は、重力に逆らい、とある方向に向かって伸びていた。へぇ、なかなか便利なもんだ。
「どう? あんたと違って私すごいでしょ?」
「はいはい、すごいすごい」
「──ちょっと! もっと感謝しなさいよね!!」
「レンはすごいね! これでハイキラービーの巣がわかるよ!! それにマナブもすっごく強いんだね! 僕、尊敬しちゃうよ!!」
「──ふ、ふん! イテムあんたわかってるじゃない!! 流石は私が認めた精霊だわ!!」
キラキラとした視線で、おれ達を見つめるイテムのお陰で面倒なレンちゃんから解放された……ほっ……。
「さてと、じゃそろそろ奴の後を追いかけるか」
「そうね! 私のおかげってことを忘れないでよね!!」
「わかったわかった」
うざがらみをしてくるレンちゃんを適当に相手にしつつ、おれ達は青の紐が示す先へと、歩みを進めるのであった。
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