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前回のあらすじ
イテムの実力は本物だった!
「はわ〜、ここがスクロースの森なんだ〜」
イテムが好奇心旺盛な瞳をきらきらさせながら、目の前に広がる森の景色を眺めていた。
プレの街を出て三日目、早朝。
おれたちは鬱蒼と生茂る森を闊歩し、とうとうスクロースの森へと足を踏み入れた。いやぁ三日はやっぱり長かった。一日三十キロは歩いたな。よくがんばったと自分を自分で褒めてやりたいくらいだ。
「今まで見てきた木々とは何だが違う気がするわね」
と、レンちゃんが意外といい指摘をした。
えっ? どうしちゃったのだろうか? 頭でもうったのだろうか? 心配になってきた。いつものアホなレンちゃんは何処へ行ってしまったんだ!?
「……レンちゃん? どうしたんだ? そんな何か変なものでの食べたのか?」
「食べてないわよ!! 何よいきなり!!」
「いや、レンちゃんがいきなりいい指摘をしたからつい」
「──馬鹿にしてんの!? 私だってちゃんとスクロース森について調べてきたんだからっ!」
レンちゃんの言った通り、スクロースの森は今まで通ってきた森とはかなり様変わりしている。
一番目立つ変化は何と言っても、花だ。
大小どの木々にも、白い房のように花が垂れ下がっていた。しかも一つの花がでかい、おれの顔くらいはある。とんでもなく大きな花だった。キラービーはこの花の蜜を吸ってハチミツを作ってんだな。
しかし、レンちゃんがちゃんと調べてきていたとは驚きだ。
「そうだったのか……ごめんごめん、謝るからそう怒るなって、ほらおこったら胸がぺったんこだぞ?」
「──はっ! そうだったわね……」
相変わらずのアホガールである。
こんな純粋な子を騙しているおれはきっと天国へはいけないだろう。だがしかしおれに後悔はない。こんな美少女をからかって地獄に行くのであれば本望だ。我が人生に一変の悔いないというやつだ。
思考がついついアホな方向に行っていると──。
「マナブ! レン! 早く行こうよ!」
イテムからの催促。
おっと、妄想劇場がついつい暴走してしまったようだ。いかんいかん、自重自重。
「ああ、そうだな。だがしかし、あてもなく探すのは効率が悪いだから……」
「だからまずは一匹のキラービーを見つけて、その後を追うのよ! そしてキラービーが花の蜜を吸いにくる時間帯は早朝! そして今はちょうど早朝! つまり今この瞬間が巣を見つける絶好の機会ってわけよ!!」
「へぇ〜!! レンは物知りだね!!」
「……………………」
おいおい! マジでどうしちまったんだ!? レンちゃんが……あのレンちゃんが、真面目なこと言ってるぞ!! これはまずいぞ……嫌な予感しかしない。この試験、どうやら相当厳しい試験になりそうです。
……だが、まぁいいか。とりあえず方向性はレンちゃんがいったそれでいくとするか。おれの元々そういうつもりだったし。
「それじゃ、まずは周りを注意しつつ、探索してキラービーを探すところからだな。羽音がブンブンうるさいからそれ程苦なく見つかると思うが……ってどうした? 二人とも」
何やら二人して、別の方向を見ている。
一体何を見ているのだろうと思い、おれもその視線の先を覗いてみると、そこには何かデカい生き物が倒れていることがわかった。
「……? 何だあれは?」
「──ちょっと、見てみましょうよ!」
「ああ、そうだな。少し気になるし」
辺りを警戒しながら、おれたちはそのデカブツへと近づいていく。すると目に入ってきたのは、全長三メートルくらいの大きなイノシシみたいなモンスターだった。
「……これは一体何?」
「どうやらもう死んでいるようだが……何だ? この傷は?」
イノシシ型のモンスターの体には無数の刺し傷があった。何か棒状のようなもので何度も突き刺されている。
「……これってもしかして、キラービーにやられてのかしら?」
「……その可能性が高そうだな」
しかし、傷痕を見るに刺し傷はおれの拳大くらいある。それに刺さったままの針もあるが、それも二十センチくらいはある。
ということはそれほどデカい針を持っているってことだ。いやどんだけデカいんだよ! 針でこのサイズなら体長は一体どのくらい何だ?
ミミカちゃんに見せてもらった資料では、体長六十センチくらいって言ってたのに、どう見てもこの傷痕や針の大きさを見ると、六十センチじゃ済まないデカさだと思うぞ? 軽くその倍はありそうだ。
「……ま、まぁ? ここにいてもしょうがないしっ! さ、さっさと探しにいきましょ!」
「……ああ、そうだな」
レンちゃんがビビりつつ、声を上げる。
イテムも少し不安そうにしていた。まぁ確かにこんな姿になったモンスターを見たら誰だって動揺するだろう。おれも何だか緊張してきたし。
おれたちはイノシシ型のモンスターの死体から離れ、スクロースの森を探索する。人の顔くらいの白い花が堂々と咲き誇っている。その花の匂いなのか風が吹くと仄かに香りが漂ってくる。
すると、イテムが何やら深刻そうな面持ちで話しかけてきた。
「……マナブ、キラービーってあんなに凶暴なのかな? あのモンスター凄い傷だったし……それにあの針の大きさ……僕の聞いた話じゃ、大きくても六センチくらいって……」
「そうだな、刺さっていた針は二十センチくらいはあったな……」
「そうだよね!? ということは通常のキラービーより大きいってことだよね!?」
「……まぁそう考えるのが妥当だな」
「……やっぱり」
先ほどのモンスターの死体が余程衝撃的だったのだろう。イテムはかなり不安そうだ。おれは安心させるようにしゃがんで目線を合わせ、彼女の頭に手を乗せる。
「イテム、大丈夫だ。何があってもおれに任せておけば何も心配する必要はない」
「……うん」
「それにおれにはいざとなったら、頼りになる水の精霊さんがいるんだ。おれがどうしようもなくなったらそいつを呼ぶさ」
おれがそう言うと、レンちゃんがぎよっと目を見開いて驚いたがそこは無視。
「……マナブはやっぱり精霊と契約していたんだね」
「やっぱりって……分かるのか?」
「うん、精霊に好かれやすい人ってのは感覚でわかるんだ。こう見ただけでびびっとくるんだよ」
「そうか、じゃあおれにびびってきたのか?」
「うん! びびってきたよ! 初めて森であった瞬間からね! マットがいなかったら、僕も契約したかったくらいだよ!!」
「それは嬉しいな」
このような美幼女精霊にそのように評価してもらえるとは、これ以上ない喜びだ。と、おれが喜びを噛み締めていると──。
「──なら、私はどうかしら?」
レンちゃんが声を出す。
自分にも精霊と契約できるのか知りたいらしい。さて、イテムの判定はいかに。
「……うーん、レンはどうかな〜? 少なくとも土の精霊には好かれないかもね」
「そ、そんな……で、でも! 土の精霊以外だったら……」
「……でもお前は、水の精霊にも嫌われてるよな」
「──あ、あれは、あのクソ精霊が悪いのよ!! 私は悪くないもん!!」
……もんって、またぶりっ子ちゃんだな。まぁ美少女だから許せちゃうけど。しかしどうやられんちゃんには精霊と契約するのは現実問題厳しいようである。これは仕方がない、こればかりはフィーリングが大事だからな。努力じゃどうにもできないってもんだ。
「はははっ!! レン!! そんなに落ち込まないでよ! 僕は土の精霊だけどレンのことそこまで嫌いじゃないよ!!」
「そう? 私もイテムのこと結構気に入ってるわ! なら私と契約しましょうよ!」
「それはできない相談だね〜、僕にはもうマットという契約者がいるからね!」
「──っ! それは残念だわっ、でももし、気が変わったら言ってちょうだいね! 私はいつでも構わないから」
「ははっ!! そうだね、気が変わったらね!」
さっきまで不安がっていたイテムが、レンちゃんとの会話でどうやら不安が解消されたようだ。レンちゃんもたまには役に立つ。
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