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では、続きをどうぞ。
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前回のあらすじ
ルディア怒髪天
「おーい、ルディア〜出てきてくれ」
漆のように真っ黒な木々の中、月明かりを目印におれは薄暗い森の中を一人で歩いていた。テントからあまり離れるとレンちゃんが心配なので目の届く範囲でルディアを探す。
すると目の前に急に霧が立ち込める。目に霞がかかったかのように、視界が遮られる。ギュッと目を閉じ、開いた次の瞬間には目と鼻の先にルディアの整った顔が目に入った。
「おわっ! ルディア!」
「ふふっ、ルディアですよ? お兄さん、呼ばれたから出てきましたよ? どうされました?」
「急に出てくるなよ……びっくりするだろ」
「ふふっ、ごめんなさい、少し驚かそうと思いまして」
ルディアは微笑を浮かべると、おれから離れ、くるりと身体を回しながら歩いて行く。何処にいくのだろうか? ……あまりテントから離れたくは無いのだが。しかし追いかけないわけにもいかない、おれはルディアの後を追う。
「……ルディア、すまないが、あまりテントから離れたく無いんだ。出来れば遠くへは行かないでくれないか?」
「ふふっ、お兄さん、あの人間が心配なのですか?」
「ああ、彼女のことはある人に頼まれていてな。この試験が終わるまでの間は、守ってやらないといけないんだ」
「そうですか……では、少し待ってくださいね」
そう言うと、ルディアは少し目を閉じ、何かを小声で呟く。すると淡い空色の光の玉が浮かび上がり、テントの方へと向かっていった。
「これで大丈夫ですよ、お兄さん。では行きましょうか?」
「……今、何をしたのか聞いてもいいか?」
「ふふっ、気になりますか?」
「もちろん」
「あれは私の眷属の子です。あの愚鈍な人間は私の子達に守らせていますので、心配はないですよ」
「……助かるよ」
「いえいえ、では行きましょうか?」
穏やかな微笑みを浮かべ、ルディアは歩みを進める。置いていかれないようにおれもその後ろ姿を追う。
そうしてしばらく歩くと、小川のせせらぎがおれの耳へと流れ込んできた。そしてすぐにとても澄んだ綺麗な川が現れる。月光に照らされた水がキラキラと煌めいていた。
川の手前で歩みを止めルディアはこちらへと振り向いた。月明かりに照らされた空色の髪が光り輝いていて、とても幻想的だ。そして透き通った声でこちらへと語りかける。
「お兄さん、少しお話をしませんか?」
「……あぁ、いいぞ」
「ふふっ、ありがとうございます」
顔に笑みを浮かべるとルディアは川の淵に立ち、足でパシャパシャと水を蹴る。
「私、水のあるところだと落ち着くんですよ」
「そうなのか、まぁ確かに、ここの川の水は綺麗だし見ていて落ち着くよな。川の流れる音も心地いいし」
「ふふっ、そうですよね? 水の流れる音色は聞いていると心が洗われるようです」
おれの方を見て優しく微笑むルディア。その顔に先ほどテントの中で感じた感情は全く窺えない。本当に穏やかな笑顔だ。
しかし先程の件はこの旅を円滑に進めるためにどうにかしておきたい。彼女たちが不仲ではおれの精神衛生上良く無い。ルディア無しでやっていくにはおれが不眠不休で働かなければいけなくなるので流石にそれは避けたいところだ。ここはおれが先手を打って、どうにかこの現状を打開しよう。
「……ルディア、さっきの事だが、レンちゃんのことを許してくれないか? あいつも悪気があってあんなことを言ったわけじゃ無いと思うんだ。ほら、あいつは何も考えずに取り敢えず言葉を吐き出す癖があると言うか……」
「ふふっ、お兄さん、そんなに気を使わないでください。私はもう怒っていませんので。それに先程の件は私も悪かったですし……。申し訳ございませんでした、契約者であるお兄さんにまで不快な思いをさせてしまって……まだまだ未熟です私は」
ルディアはそう言うと、済まなそうにこうべを垂れる。
「ルディアっ、頭を上げてくれ」
「……お兄さん」
「確かに上位の精霊であるルディアの殺気にはかなりビビったが、逆に頼もしくも思ったよ。こんなにすごい精霊がおれと契約してくれているってことにな。だからそう気にするなって。それにもとはと言えばレンちゃんが暴言を吐いたことが原因だしな」
「ふふっ、お兄さんはお優しいですね。私、もっとお兄さんのことが好きになりました。キスしてください」
「調子を取り戻してきたな……」
両手を広げ、おれを誘うような微笑みを浮かべているルディア。その蠱惑的な魅力に思わず吸い込まれそうになる。見つめるだけで心を奪われるような、芸術品のような色香があった。
「……なんだ? もう魔力がなくなったのか?」
「はい、そうみたいです。テントの見張りを少々張り切りすぎたみたいです。なので私はキスを所望します。さぁ、お兄さん、私の準備は万全ですよ?」
「……ルディア、おれは相当な魔力をやったとおもうのだが?」
鑑定でルディアを見る限り、まだ彼女の体内にはかなりの量の魔力が内包してある。先程チラ見したレンちゃんの数十倍はあった。
「ふふっ、私は健啖家なので」
微笑みをまるで崩さずに、こちらを見つめ、キス待ち待機をしているルディア。これはもうキスするまでこの状態が一生続きそうな気配がする。
「……しょうがないな、今日はもうこの一回で我慢しろよ?」
「ふふっ、ありがとうございます、お兄さん」
嬉しそうな笑みを浮かべる水の精霊さんは、おれに近づくと、すっと顔を寄せてきた。そして口と口が徐々に近づいていく。
「……ったく、本当にわかってんのかよ」
触れ合う唇の感触、そして魔力を吸われる感覚。目を閉じて、それを体感で感じながらおれはこの先この調子でやっていけるのだろうかと思案するのだった。
*
「──ねえ! 起きなさいよ!!」
誰かがペチペチとおれの頬を叩く気配。
眠気眼を我慢しつつ、目を強引にこじ開けると、目と鼻の先に赤髪ツインテールの整った顔面がおれの目前に迫っていた。おう、朝からこのような芸術品のようなお顔を拝見できるとは今日もいい一日になりそうな予感がビンビンするぜ。いい目覚めだ。
「……………………ふあ……大丈夫だ、今起きた」
「ふ、ふん! さっさとしなさいよね!! あと朝食出来てるから、早く準備して出てきなさいっ、いいわねっ?」
「……え?」
そう言い残すとレンちゃんは、テントからさっと出て行った。あの子今、朝食が出来てるとかなんとか言ってなかったか? あのわがまま姫が朝食をつくってくれているだと!? ありえない!! どうなっているんだ!! まだおれは夢の中なのか!? どうしたら、目覚めるんだ。
と、おれがわたわたと一人で慌てていると、おれの頬にひんやりとした感触が走る。そしておれの背中に覆いかぶさるように水の精霊ルディアが現れた。
「ふふっ、お兄さん、おはようございます」
「……ああ、おはよう」
「昨日はよく眠れたみたいですね? それとすみません、昨晩は魔力を吸い取りすぎたみたいです。あのままお兄さんが倒れてしまったので私がテントまで運ばさせて頂きました」
「……それは、助かった。なら一晩中ルディアが見張りをしてくれたのか?」
それなら本当に申し訳ないことをしてしまった。このような美少女一人で見張りをさせてしまうとは……。
「いえいえ、精霊である私に睡眠は必要ありませんので、そう気にする事はありませんよ? それにあの人間にも手伝ってもらいましたし」
「……あの人間って、レンちゃんのことか!?」
「ふふっ、そうですよ?」
一体これはどういう状況なのだろうか? あのレンちゃんが? 昨晩は見張りなんてあんた一人でしなさいよ! とかほざいていたあのレンちゃんが!? どういう心境の変化だろうか?
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