50
おかげさまで、累計10000pvを超える事が出来ました。
ありがとうございます。
これからもよろしくお願いします。
では、続きをどうぞ。
49
前回のあらすじ
レンちゃんとマッサージ
「リンパの流れをよくすると、疲労を回復したり、免疫力がかいぜんされたり、いいことずくめなんだ。だから少しだけ我慢できないか?」
「……………………あまり、強くしないなら」
適当に言い訳を並べるとレンちゃんは嫌々ながらもまたうつ伏せの体勢に戻る。……………………くっくっく、馬鹿なやつで助かるぜ。このようなテキトーな言葉に騙されるとは……。
さてと、ではマッサージの再開と行くか。再び脇腹へと五指を這わせると先程よりは慣れたのか軽い反応でピクッと身体を震わせた。
「……んくぅ」
自分の腕で口をおさえ、声を我慢しているらしく時折、口籠った声を発するレンちゃん。さてさていつまで我慢できるのか見ものだな。おれは肩のあたりに手のひらを当て、円を描くようにゆっくりと撫でさする。
「……………………ぅん」
「ここはどうだ?」
「……肩のあたりは、何だか気持ちいいかもしれない。もっと強くしても構わないわ」
「ん、わかった」
気持ち力を入れて、今度は撫でるのではなく肩を揉むように手のひら全体を使っていく。
「──あっ、……そ、それいいかも……」
「そうか、なら続けるぞ」
「……う、ん……お願い……」
レンちゃんはうっとりとした声色でそう囁いた。全身が弛緩していて、かなり気持ち良さそうである。おれは肩を揉み上げつつ、話しかける。軽く世間話でもしておこう。その方が身体に意識が向きにくくなるし。
「ところで言いたくなければ構わないのだが、レンちゃんはどうして冒険者になろうと思ったんだ?」
「……ん、そうね……」
彼女は最初、言おうか言わまいか悩んでいるようにしていたが、やがてポツリポツリと語り出した。
「……特に理由らしい理由なんてないわ、生まれた時から私には魔法の才能が有ったし、剣を扱う才能もあった。その才能を最大限に活かせる職業が冒険者だったって話よ。──まぁ強いていえばお金かしらね。高ランクに成ればたんまり稼げるしね」
「……そういうもんか」
「……ぅん、そ、そういうもんよ、大体みんなそういう理由じゃないの?」
まぁ確かに冒険者って職業はリスキーだが金払いはかなりいい。普通の職業では一生掛かっても稼げないような額も高ランクの冒険者であればものの数日で稼いでしまう。しかしレンちゃんはなぜそんなに金が必要なのだろうか?
「そんなに稼いで何に使うんだ? 今のランクでも十分暮らしていける額は稼げるだろう?」
「んぅ……ま、まぁ? 確かにそうなんだけど……」
どこか思案するような間が空き、レンちゃんは「まぁ、あんたならいいか……」と呟き話し出す。
「……私には食べさせていかないといけない子供が五人ほどいるのよ」
「──レンちゃんって、母親だったんだな……その若さで大変だな」
「兄妹よ! 兄妹!! 私の子供じゃないから!! 馬鹿じゃないの!!」
うつ伏せからこちらへとガバッと振り向き、威嚇してくるレンちゃん。本当に冗談が通じないツインテールだ。やはりツインテールだとどうしてもツンツンしてしまうのだろうか? 今度髪を解いてみようかな。
一頻り怒鳴ってから、またうつ伏せに戻ると、何かを思い出すかのように、軽く上に視線を向けてまた話し出す。
「私はあの子達が大きくなるまで、しっかり面倒を見るつもり、その為には普通の職業では五人も養っていけない。だから冒険者になったのよ」
「……結構しっかりしてんのな。まだ若いのに」
「私はあんたのように、何にも考えていないような奴と一緒にしないでくれる?」
ふふんっと鼻に付く感じでおれに笑いかけてくる赤髪ツインテール。その顔をみるだけで、先程まで感心していたのに、一瞬でその感心は遥か彼方までぶっ飛んでいった。もう戻ってこないぞ! おれの感心は! 例え戻ってきてもキャッチしてまたリリースしてやる!
やられっぱなしも良くないと思うので、おれは肩から脇腹へとマッサージする場所をシフトチェンジ。するといきなりの刺激に打ち上がった魚の如く、身体が跳ねる跳ねる。
「──んあっ!! ちょ! そ、そこっやめ!!」
抗議の言葉が吐かれているが、全て却下。からのマッサージの続行。弱点の脇腹を上から下へ、そしてまた下から上へと、両指で攻め上げる。
「ああ! やめっやめてって──言ってるでしょ!!?」
「すまんね、おれは何も考えていないから言っていることがよくわからないんだ。許してくれ」
「──ぜっ!! 絶対わかってっ! やって……あん! でしょっ、こ、この!」
両腕で脇腹をガードするレンちゃん、がおれは素早く彼女の腰の上に乗り、身動きを封じることに成功。これで動けまい。
「ほらほら、そんなに暴れるとマッサージがちゃんとできないじゃないか」
「ちょ!! あんた! ……んっ、なに、してんのよ! どきなさいよ!!」
「何してるって、マッサージに決まってるだろ? 最初に言ったことをもう忘れたのか?」
「──本当に、これがマッサージって奴なのっ!? ただ私の身体に触りたいだけじゃないの!?」
「……………………そんなわけないじゃないか」
「……何よ、今の間は」
急に核心をついてきたレンちゃん。目が完全にジト目になり、疑いの視線が凄まじい。どうやら完全に信用を失ったようである。しょうがない、ここは一旦撤退だな。おれは負け戦には参戦しない主義だ。
おれがレンちゃんの上から退けようと、腰をあげた瞬間──。
「ふふっ、もう終わりですか?」
「「!?」」
テントの中に、透き通るような声がする。この声は──。
「お兄さんに可愛がられているのに、それを嫌がるだなんて……、やはり愚鈍な人間の考えはよくわからないですね」
「──っ! こ、この声はさっきの!!」
やはりルディアのようだ。しかし姿が見えない。どこにいるんだ?
「ルディアか? 何処にいるんだ?」
「あら、お兄さん、私は今テントの外で見張りをしていますよ? 言われた通りに」
「なら、何で声がするのよ! 何処かで見ているんでしょ!! 出てきなさいよ!!」
レンちゃんはもう起き上がっていて、ケープを羽織っている。羽織るまでの一連の動作はとても素早かった。
「愚鈍な人間、あなたに教える義理はありません。少し黙りなさい。──ではお兄さん? もしよろしければその人間にしていたマッサージ? の続きを私にしていただくことはできませんか?」
「──んなぁ!!?」
それは願ってもないお願いだが、何だか今のレンちゃんを放置して、ルディアの相手をすると後々面倒なことになりそうで怖い。ここはルディアに少しだけ我慢してもらおう。代わりにあとで魔力ふんだんに与えてやることで勘弁してもらいたい。そう考え口を開こうとすると、
「あ、あんたこそ黙りなさい!! 今は私がマッサージをしてもらっているんだから!! あんたなんかお呼びじゃないのよ!! さっさと見張りに戻りなさいよ!! このアホ精霊!!」
──刹那の静寂。
「……………………人間風情がっ」
辺りが急に静かになる、先程まで木々が風に揺れる葉音や虫の鳴き声など、気にならない程度の雑音あったものの、今は全くと言っていいほど、静寂に包まれている。
それになんだが急に物凄く寒い、寒気がする。おれは神様チートで身体に不調が起きることはないはずなのだが……。わかった、これはあれだ、自分では対処できないような未知のものに知ったり出会ったときに味わうあの感触に似ていた。
宇宙の広さを知った時の自分が如何に小さい人間である事を思いさらされたり、深海の深さに恐怖を感じたりする、あの感覚だ。
愚かな発言をした張本人を見てみると、顔面蒼白、かちかちを歯を鳴らし、全身を小刻みに震わせていた。あまりの怯えっぷりに少しおれは余裕を取り戻す。
が、それも殺気が篭った声で一瞬で消しとんだ。
「おい、人間、あまり調子に乗るなよ? お前のことなど私の魔法で切り刻んだり、内側から爆散させたり、圧殺させたりする事など造作もないんだぞ? お兄さんがいる手前実行に移しはしないが、あまり私を怒らせるな……死にたくなければな」
「……………………はっ、はぃ……しゅ、しゅみませんでした……」
レンちゃんは完全に敵意を失った様子で何度も土下座をしていた。顔面は涙ですごいことになっている。直接あの殺気を受けたのであればそうなるのも頷ける。あれにはどうすることもできない。
……これはもう、マッサージって空気じゃないな。しゃーない、ここは切り替えて今日はもうここでお開きにするか。そう考えおれはいまだに土下座をしているレンちゃんにテントを出ると声をかけ(聞いているか分からなかったが)外へと出る。さてさて、さすがに水の精霊さんを放置するわけにはいかないな。
おれは頭の後ろをポリポリとかくと、ルディアに会いにいくのであった。
五秒ください
よろしければ
ブックマーク
評価ボタン
よろしくお願いします!!!




