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前回のあらすじ
水の精霊と赤髪ツインテールは仲が悪い
「──さて、レンちゃん、テントに入ろうか」
ルディアが霧のように姿を消すと、辺りには樹々が風に揺らぐ音が耳に入ってくる。もう周辺はほとんど真っ暗で、月明かりでかろうじて近くのレンちゃんの顔が見えるくらいだ。
「……私、あの精霊、嫌い」
「……分かったから、ほら、テントに行くぞ?」
まるで駄々っ子のように、口を尖らせる赤髪ツインテール。人、というかまぁ、精霊だが、こう他人のことを素直に嫌いと言葉にすることができる人間はなかなかいない。普通はどうしても曖昧にしてしまうものだ。
おれは純粋に気持ちを露わにするレンちゃんを見て、どこか眩しいものを見るような目で見つめてしまう。
レンちゃんの背中を押し、テントへと押し込むと、おれも連なって入り込む。……しかし、ルディアの奴、どうやって見張っているのだろうか? あの水の精霊さんは本当に謎だらけである。
テントの中には、おれの背負式のバックと、レンちゃんの持ち物であるリュックや武器のレイピアなどが置いてあるくらいだ。
そして、おれが持ってきたテントは、大の大人が二人くらいなら余裕で入ることができるくらいのサイズだ。ワンポールテントなので設営も真ん中に一本支柱を立てるだけなので、めちゃ簡単でおすすめのテントだ。
「……あの精霊」
「ん? どうした?」
レンちゃんが俯いたまま、何やらボソボソと呟いた。おれからは表情がイマイチ見えない。どうやら少し落ち込んでいるようだ。
「……あの精霊ってマナブの契約精霊なの?」
「そうだ、コーポリ山脈にある水精霊の水辺でちょっと出会うことがあってな。その時に契約したんだ」
「……そう、なんだ……あいつ、強いわね」
「わかるのか?」
すると、ゆっくりを顔を上げ、おれに視線を向けた。薄暗いせいかあまりよく見えないが、その瞳はどこか潤んでいるように見えた。
「──当たり前じゃないっ、あの魔力量、桁違いだわ……初めて見たわよ、全く……」
「……そんなにか? ──というか魔力量なんてよく分かるな」
すると、レンちゃんは怪訝げにこちらを伺うと、問いかけるように口を開く。
「マナブは《鑑定》のスキルは持っていないの? それを使えば一発でわかると思うけど……」
「──あぁ、《鑑定》を使っていたのか! なるほど、そういうことかっ!」
「あんた、知らなかったの? 呆れたわ」
レンちゃんは人を小馬鹿にするような声色で言った。相変わらず良い性格をしている。あれだけルディアに実力差を見せつけられて、何だか落ち込んでいるような感じだったのに、もう元気を取り戻しているようだ。
しかし、鑑定か。そういえば忘れていた、せっかくロココちゃんがスキルロールを譲ってくれたのに全然活用していなかった。次のモンスターとかの戦闘やら薬草採集などで使ってみるか。おれはそう心に誓った。
さてさて、一旦鑑定のことは棚上げしておいて、今はレンちゃんである。おれはここでレンちゃんにマッサージを施すために、このテントの中にいるのである。よしっ! 切り替えて行こう!!
「さて、レンちゃん。そろそろマッサージをしても良いだろうか?」
「……そうだったわね、でも本当に効果あるの? イマイチ信用できないのよね」
「何言ってるんだ! おれが今まで嘘をついてきたことがあったか? 大丈夫、おれを信じろ!」
逆に今まで真実を言ってきたことの方が少ない奴が何かほざいている。その大ぼら吹きは誰だろうと思ったが、それはおれだった。これは
哀しい現実だった。
しかし、真実は時として人を傷つけるものだ。何もかもが真実より人生には少しの嘘も必要だとおれは思う。
「……………………まぁ、いいわ。さっさとやってちょうだい」
おれの言葉にチョロく騙されるアホガール。チョロイン世界大会があればぶっちぎりで優勝間違いなしである。
「服を着たままだと、効果が薄いから下着姿になってもらえるか?」
「……このままじゃダメなの?」
「ダメだ、やるからにはちゃんとやりたい」
「……分かったわよ」
渋々、承諾するレンちゃん。羽織ってた布のケープをハラリを脱ぎ捨て、テントの端へと寄せる。……寄せると聞くとついついレンちゃんに寄せる胸はないのだがという言葉が脳裏を掠めたが無視を決め込む。
次に厚手の服を脱ぐと、白い下着が目に入る。肩から紐で吊る腰丈まであるタイプの衣服だ。飾りは一切なくシンプルな構造だ。しかしその簡素な感じの服もレンちゃんのような特級の美少女が着ていると、とても深い味わいを出していた。
おれはゴクリと唾を飲み込み、
「それじゃ、まずは背中から揉んでいくぞ」
「……ん」
座った姿勢のまま、おれは正面から、レンちゃんの背中へと手を這わせる。ふむ、なるほど……。ああ、こうゆうことね……。
しばらく撫で続けていると、何やらレンちゃんがプルプルと震え出した。何だ? 噴火の前兆か? そう思い、顔を上げ、レンちゃんの表情を窺うと、顔を髪色と同じように真っ赤に染め、屈辱的とでも言いたげな面持ちでこちらを凝視していた。
「レンちゃん、どうかしたのか?」
「──どうかしたか? じゃないわよ!! あんたどこ触ってのよ!!」
「どこって……背中だろ? こんなにも平たいのだから」
「平たくない!! 言っておくけど、あんたが触ってんのは背中じゃなくて胸だから!!」
……………………おっと、おれはどうやら背中ではなく胸を今まで触っていたらしい。絶壁すぎて前と後ろを間違えてしまったようだ。何という表裏一体の身体なんだ。ある意味芸術品だな。
と、まぁ冗談はさておき、そろそろちゃんとそれっぽくやりますかな。そもそもこのマッサージ。おれがただただレンちゃんにセクハラしたいだけの行為だから、ちゃんとやるもなにもないのだけれど。
「ごめんごめん、そう怒るなって。冷静に行こうぜレンちゃん。怒ると胸が萎んじゃうぜ?」
「──っ!? そうだったわね……でも胸と背中を間違えるマナブ、あんたに責任があるんだからね!! 今度はちゃんとしなさいよね!!」
「分かってるって、それじゃ今度はうつ伏せになってくれるか?」
「……本当にわかってるんでしょうね」
ぶつぶつ言いながらも、レンちゃんはおれのいうことを聞き、うつ伏せの体勢になった。彼女の艶やかな肩や引き締まった腰、小さなお尻が、視界に飛び込んでくる。とても十四歳とは思えない綺麗な肢体をしていた。
「じゃ、今度こそ背中から始めるぞ」
「はいはい、いいからさっさとしなさい」
生意気な口を開くが、レンちゃん、貴様はもうすでにおれの掌の上だ。ここにのこのことやってきた過去の自分を呪うがいい。
おれは、白い下着の上に手を添えると、ゆっくりと力を加え、肩の方から下へと順に、手のひらでグッグッと力を加えた。
「どうだ? 効いてるか?」
「……ま、まあまあね」
「そうか、なら、こういうのはどうだ?」
「──ん、ぁ!」
両手の全ての指を使い、脇から側面をスーッと軽く撫でるようにしてやると、レンちゃんの小柄な身体がビクンッと魚のように跳ねる。プププ、この反応、見ていて面白い。よしっ、楽しくなってきた!
脇腹に触れられたのが嫌だったのか、レンちゃんはおれに非難の視線を向けてくる。だがそんな可愛い涙目で見られても、おれはマッサージをやめる気はさらさらないぞ?
「どうした? まだ始めたばかりだぞ?」
「……脇腹はやめてくれない? 私そこはあまり触られたくないの」
「どうしてだ? マッサージをする為には、どうしてもそこに触れないといけないんだ。リンパの流れを良くするためにもな」
おっと、マッサージをする時に絶対に出てくる単語、リンパを思わず口走ってしまった。やっぱりマッサージをするならこの台詞は必ず使いたいものだ。
「リンパ? ……あんた何言ってんの?」
レンちゃんに何やら呆れられているが、おれは全然気にしない。今は彼女の肢体をこの手でマッサージすることしかおれの頭には入っていない。
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