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前回のあらすじ
お菓子作りの約束
すると、おれの右腕にツンツンと指で突かれたような感触。そちらを見ると、レンちゃんがなぜか顔を真っ赤にして俯きがちにこういった。
「……………………あ、あの、私も甘いものは好きなんだけど……」
ここで甘いもの好きのカミングアウトである。知ってる、先ほどからお菓子をパクパクと食べていたから甘いもの好きなのは承知済みである。なんせ、おれの分まで平らげているからな(自分からあげたのに何やら嫌味たらしくなってしまったが全然そういう意図はない)
さてさて、この状況を見るに、これは私も誘いなさいよということなのであろう。おれは鈍感系主人公ではないのでこういう事には人並みに察することができるのである。というか鈍感系主人公はなんでこういうことに気づけないのか不思議である。あれはもうそういうギャクなのではないかとおれは密かに思うことにしている。あれはあれで見ていて面白いしな。
しかし、おれの腕を掴んで、太腿をもじもじしているレンちゃんは見ていているとあれだな、美少女っていうのは得だな。普段の言動はアレなのに、こうかわいくされると男としてはつい何でもいうことを聞きたくなってしまう。これもまた男の哀しい性なのだろう。だって可愛いものは可愛いのだもの、おれの力ではなんともしようがない。
とはいえ、レンちゃんの言葉に素直に従うのもなぁ、考えものである。レンちゃんはからかってなんぼのもの。いじり倒したいのだ。いじってこそ彼女の本領が発揮されるのである。よし! ここは鈍感なフリをして楽しみことにしよう。
「ん? フラッチェも甘いものが好きなのか? 奇遇だな、おれの好きだぞ? 甘いものは美味しいもんな」
「──フラッチェ言うなし!! そ、そうよね!! 美味しいわよね」
「うん、それがどうかしたのか?」
「……………………うううぅ」
レンちゃんはない胸に手をぎゅっと寄せ、こちらを見つめる。何やら察して欲しそうに見つめている気がするがおれは今鈍感系主人公だ。察することはできない。しかし、こう何か恥じらっている美少女の姿っていうのはいいものだな。かなり可愛いぞ。あっ、もしかして鈍感系主人公はこうして美少女達で楽しんでいるのか?
「私、今からマナブくんとシルクちゃんと一緒にお菓子作るの楽しみだよ♪」
と、素直に感情のだすロココちゃん。うんうん、こうして素直に感情を表に出す美少女もまたいいものだ。見ていて清々しい気持ちになる。純粋なものを見ているようで眩しかった。
さてさて、素直になれない美少女の方はと言うと、ロココちゃんを見て、自分も素直に真っ直ぐといった方がいいのかと悩んでいるようだ。仕方ない、ここはおれが助け舟出してやるとするか、大海で浮木に出会うと言う奴だな。
おれはレンちゃんの耳元に口を寄せると、ロココちゃんには聞こえないように小声で大嘘を囁いた。
「レンちゃん、ハチミツを使ったお菓子には、胸を大きくする効果があるんだ。良かったら一緒に作らないか?」
「──!? 何それ!?」
バッとこちらを振り向いた。
一も二もなくすぐさま騙されるチョロい美少女、赤髪ツインテールことフラッチェである。本当にこの子はこのまま放っておくにはあまりにも危うすぎる。やはりおれが見守っておかねば。
「どうだ? 一緒に作らないか?」
「……しょ、しょうがないわね!! そこまで言うなら一緒に作ってやらないこともないわ!!」
偉そうに、ない胸を張りつつ、そう声を上げる赤髪のフラッチェ。何こいつ、神速で調子に乗っていやがる。腹たつわ〜、しかしこの変わり身の早さ、見習いたいものである。うじうじを過去を気にしない姿勢はとてもいいと思う。過去は過去、過ぎ去ったことにあれこれ考えていても過去は戻ってこないのだ。今現在に集中することこそが、人生を豊かにしてくれるとおれは常々そう思って生きている。
「そうか、じゃ、この試験が終わったら誘うから予定を開けておいてくれ」
「わかったわ!! 私はここに知り合いなんてほとんどいないから、いつでもいいわ!!」
なんかさらっとボッチ発言を耳にしたが、聞かなかったことにしよう。ロココちゃんも私はそんなこと全然聞いていませんよって顔をしているからおれもそれに習う。
「それじゃ、ロココちゃんもそれでいいか?」
「私も構わないよ♪」
「んじゃ、それで決定な」
よし、試験内容も聞いたし、そろそろむかうか、スクロースの森へ。おれはソファーから立ち上がると、レンちゃんも立ち上がった。おれはロココちゃんに声をかける。
「紅茶とお菓子ご馳走様、おれたちはそろそろスクロースの森へむかう事にするよ」
「私の試験成功を祈って、しっかりと待っていることね!!」
相変わらず、この絶壁はアホなことを呟いていたが、もうこれはそう言うものだと割り切って対応していくしかないようだ。美少女だから許される所業だが。
ロココちゃんは馬鹿を言っているレンちゃんを微笑ましいもの見るようにし、おれの方へと近づき、耳元へ口を寄せる。
「マナブくんなら余裕だと思うけど気をつけてね。……………………心配なのはレンちゃんだからマナブくん守ってあげてね」
すこし恥ずかしそうにしながら、語りかけるこの銀髪美少女はどうやらレンちゃんのことが実は心配なのであった。やはりギルドマスターとしてそういうところはしっかりしている。
「ああ、任せておけ。おれなら無傷で試験を突破するくらい楽勝だ。それにレンちゃんも実力でDランクに上がったんだろう? ならそう心配することはないだろう」
「そうだね♪ あんな感じだけどレンちゃんも実力だけはあるからね♪」
おれたちがコソコソと話していたからだろう、レンちゃんがソワソワし、声を上げる。
「ちょっと!! 何を話しているのよ!! もう行くんでしょ? さっさとしなさいよ!!」
「レンちゃんが急かしているから、お話はここまでにしよっか。それじゃマナブくん、いってらっしゃい♪ レンちゃんも気をつけて」
おれの腕にポンっと触れ、天使の笑顔を向けるロココちゃん。可愛い。
「ああ、行ってくる」
そうしておれはレンちゃんを引き連れ、部屋から出るのであった。
*
「本当にあのフラッチェは、やらかすな〜」
プレの街の西門の前広場、おれはそこで何をしているのかと言うと、あの平たい胸が何やら忘れ物したとふざけたことをぬかすので、ここで待ちぼうけを喰らっているところである。
もうかれこれ、体感で三十分は待たされている。これが待っているのが美少女でなければおれは即断即決で帰っているところだ。やはり美少女であるだけで様々な点で得をするのだなと思う今日この頃である。
「……しかし遅いな」
石作の西門に寄りかかり、人混みを適当に眺めていると、ふと気になるものが目に入る。
「……あれは確か」
雑踏の中、まだ小さな身体を一生懸命動かしながら、歩いていたのは教会であったことのある小さな男の子であった。うん、見覚えがある。はっきりとは覚えてはいないが、あの金髪にマッシュルームカットの幼い子供がいたことはなんとなく覚えていた。
しかしこのようなところでどうしたのだろうか? ここは西門前の広場だ。あのような子供がようのある店があるとは思えないが……。
ちょっと心配だな、声をかけてみるか。
「よう、君は確か教会の子だよな?」
「──ひっ」
突然声をかけられ、びっくりしたのか振り返りざまに尻餅をつく幼児。何だかその反応はお兄さん傷ついたぞ。しかし声をかけたのがおれとわかると少しだけ安心したように胸を撫で下ろした。
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