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前回のあらすじ
レンちゃんとギルマスとお話し中
「おーい、フラッチェ、目を覚ませ」
頭を撫でていた手で、頬をふにふにと人差し指で押さえていると、レンちゃんはぱっと目を開けた。するといままで惚けた表情だったが急に力が入り、声を張り上げる。
「ちょっと!! 何勝手に人の頭を撫でてんのよ!! あとフラッチェ言うな!!」
「ほら、落ち着けって、怒ったらどうなるんだったか?」
「──はぅ!?」
パブロフの犬のように、またすぐさま黙り込んだフラッチェ。俯いて小声で「胸が小さくなってしまう胸が小さくなってしまう」と呟いていた。なにこれ面白い、いいおもちゃが手に入ったかもしれない。
「……どうやらマナブくんに任せておけば問題ないようだね」
おれとレンちゃんのやりとりを見て、そう呟いたロココちゃん。どこをどう見て、任せて大丈夫と思ったのだろうか? 謎である。
「ま、いっか! んじゃ、そろそろランクアップ試験について説明したいから、座って話そうか」
ロココちゃんがそう言って指差したのは、執務室の中央にある向かい合わせのソファーである。そして、ロココちゃんはおれの手を引くと、窓側のソファーへと隣同士で座った。
手を握られた際、柔らかでたおやかな感触がおれの手に広がる。しかも距離が近い、三人掛けくらいあるソファーなのに半分くらいしか使っていないくらい距離を詰められていた。
さらに美少女特有の男を惑わせるほのかな香りがおれの花を刺激する。いまおれは最高に幸せを感じている。表情もかなり緩み切っていることだろう。
ロココちゃんはおれの腕を寄りかかり、レンちゃんの方へ視線を向けると声をかけた。
「レンちゃんはそっちのソファーへどうぞ?」
おれたちと向かい合うソファーの方へと腰かける事を勧めるロココちゃん。するとレンちゃんはぷるぷると震えだして、声を上げる。
「ロココ!! どうしてギルドマスターのあんたがマナブの隣に座ってんのよ!! 普通なら試験を受ける私たちが並んで座って、あんたがその向かいに座るべきでしょ!?」
「そんな普通は知りませんね〜♪」
すりすりとおれの腕に頬を当てているロココちゃん。綺麗な銀髪がおれの腕をサラリと撫でる。それを見てレンちゃんがまなじりをあげると、ドスドスと大股歩きでこちらへ寄ってきて、ボスッとロココちゃんとは反対側のおれの隣は着席した。え? 向かいに座れば良くない? と思ったが、美少女がやることなのでおれは口には出さなかった。
「レンちゃん、向かいに座れば良くないですか?」
おれの心の声の代弁者(嘘)、ロココちゃんが代わりに声を上げた。
「あんたが向かいに座ればいいでしょ!! 私はいまこっちに座りたい気分なのよ!!」
プイっと顔をあさって方向に向け、おれの腕に絡みついた。悲しいかな、平たい胸ではおれの腕に幸せを届けることはできなかった。しかし、ロココちゃんはそこそこあるのでしっかりと届けてもらっている。ありがとうございます。
でもレンちゃんの腕組みが悪いと言っているわけではないぞ? 美少女から腕を絡めてきて頂いているわけだからポジティブな感情はあってもネガティブな感情はひとかけらもないからそこは勘違いしてもらっては困る。
さてさて、ところでロココちゃんとレンちゃんはおれを挟んで何故か剣呑な雰囲気をまき散らしていた。おいおいこれはもしかして、あれか? おれが「私のために争わないで!」状態になっているのか? もしかして?
「ここは私の、ギルドマスターの、執務室なんだよ? つまり、この部屋では私がルール! 私の言うことは絶対なんだよ! 早く離れて向こうの席へどうぞ?」
「はぁ? 何その意味わかんないルール。馬鹿じゃないの? ギルドマスターだからってそんな意味不明なルールを無理やり聞かせようったってそうは行かないわよ!! それよりあんたこそ向こうへ座りなさいよ!! ここは私とマナブで座るから!!」
二人はおれを挟んでキャイキャイ騒ぎまくっている。真ん中に中洲のように取り残された。おれはポツンとまるで空気のようだった。おれ、今マジ空気。しかし、このままこの二人を争わせるのは忍びない。ここはおれが打開策を用いることにしよう。
おれはすっとレンちゃんの耳元へ口を寄せると、囁く。
「ほらほら、そんなに怒ってたら胸が目も当てられないことになるぞ?」
ビクッと大袈裟に反応するフラッチェは可愛い。俯いて胸元を両手で覆い隠すような仕草でおれから拳一つ分ほど離れる。こうゆう時ってもっとがっと離れると思うのだが、レンちゃんは意外と離れなかった。レンちゃんが押し黙ったので頭をポンポンしてやる。また呪詛のように「胸が小さくなってしまう」とリフレインしていたが、気にしない方向で行こう。
次にロココちゃんを抱き寄せるとゆっくりと頭を撫でる。ほのかな香りがおれを包み込む。そして耳元でささめいた。
「ロココちゃん、おれはもっと余裕のあるギルドマスター姿のロココちゃんが好きだなぁ。レンちゃんはまだ子供だから、大人っぽいロココちゃんに、ついつい突っかかってきたくなるんだよ。許してやってくれないか?」
「……………………あうぅ」
ボフッと顔から火が吹き出ているように、顔を真っ赤に染めたロココちゃんはそれを見られたくないのか、おれの胸へとぐりぐりと顔を埋める。女性に胸をかせて、おれは男性としての本望を遂げることに成功した。やったね!
よしよしと、頭を撫でてやると、さらに顔を埋めて後ろに手を回してきたロココちゃん。もう顔は完全におれの胸へと埋れていた。よし、これで無用な争いは終わったようだな。ふぅ一仕事終えたぜ。なんかこれからランクアップ試験が始まるっているのに、始まる前から疲れている気がするよ。
さっきまでぎゃぁーぎゃぁー騒いでいた二人が嘘のように静かになったところで、ガチャリと執務室の扉が開くと、そこからミミカちゃんがトレイに何やら飲み物を乗せてやってきた。そして、俺たちの状況を見て一言。
「……………………何やってるんです?」
その顔には茫然自失と書いてあるように、おれは読み取れた。
〜
「さて! 仕切り直すよ!」
ロココちゃんがパンっと手を張って、元気に気を取り直して声を張り上げた。因みにミミカちゃんはロココちゃんに注意をすると、紅茶とお菓子を置いてすぐに出て行った。
「ふん!! さっさと始めさないよね!! 大事な試験なのだから一瞬でも無駄にはできないわ!!」
腕組みをし、偉そうにソファーに座り足を組んでいるレンちゃんがそう声を放つ。しかし貧乳が腕組みしても全然胸が強調されないんだなとおれはまた一つ賢くなった。
ところで席順だが、おれとレンちゃんが隣同士で、ロココちゃんは向かいの席だ。ロココちゃんが大人の余裕とか言ってこうゆう席順となった。
「はいはい、それじゃ試験の内容を説明するよ♪」
レンちゃんからの発言はどうやらロココちゃんの感情を揺さぶることはできなかったようだ。そのまま話を進める。
「目的はズバリ一つ! 《ハチミツ》を手に入れることだよ!」
「なんだ、簡単そうじゃない」
ふむ、以前に聞いていた通りだな。レンちゃんも余裕そうにむふんっと鼻息を荒くしている。するとロココちゃんはチッチッチっと指を振り、ウィンクをした。
「ハチミツといっても普通のハチミツじゃないよ〜。スクロースの森に生息している《キラービー》のハチミツだよ♪」
「キラービーのハチミツなの!? そんなの無理に決まってるじゃない!! 私とマナブの二人でなんて無謀だわ!!」
パンっとテーブルを手をつき、驚きの声を上げるレンちゃん。何をそんなに驚いているのだろうか? キラービーくらいおれがいればちょちょいのちょいですよ。
「無謀ではないよ? 私は別にキラービーを全て相手をしろとは言っていないからね。要はハチミツだけ採ってこれればいいんだよ。倒す必要はないんだよ」
「……………………そうね、別にキラービーを相手をする必要はないのよね。いいわ、受けやろうじゃない!!」
「そう! その意気だよ! レンちゃんならパーっと行ってきてパーっと帰ってこれるよ!」
「ふふーん!! まっかせない!! そのくらい余裕でこなして見せるわ!!」
ロココちゃんにおだてられ、ない胸を張っているレンちゃん。うぅ、なんで悲しい光景なんだ。神様、いつかはこの平たい胸にほんのひとかけらの希望をください。お願いします。
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