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前回のあらすじ
ミミカちゃんの優しさに感動、そしてフラッチェの再来。
「──あ、あんたは!?」
ギルドの扉から入るなり、ツカツカとど真ん中を歩いてきたレンちゃんこと、フラッチェはおれに気付くやいなや、真っ先に駆けてきた。相変わらず走っていても全然胸が揺れない絶壁を誇っていた。悲しい。
「よう、フラッチェ」
「フラッチェ言うな!」
おれの一声にすぐさま反応する赤髪ツインテール。
しかし、あいも変わらず、平たい胸である。ついつい絶壁すぎて、目線が胸へといってしまった。あれだな、人は極端なものを見ると視線がそこへ向かってしまうんだな。シスターシアンの爆乳すぎる胸やレンちゃんの今の目前にあるフラットチェストのようにな。
「マナブさん、お知り合いだったのです?」
と、ミミカちゃん問いかける。
「ん? あぁ、ちょっとな……ほら、こないだギルドにおれとちょっと揉めた冒険者の男を連れてきたろ? あの件が関係してるんだよ」
「そうなのですか、あの件と関係しているのですね。マナブさんが何やら女性の方を助けるためにその冒険者然とした男の方と揉めたという……その助けた女性がレンさんだったのですね」
「うんうん、そうそう、そういうこと」
いやぁ、珍しい偶然もあるもんだな。まさかレンちゃんが一緒にランクアップ試験を受ける冒険者だったとは。ふぅ、よかったぁ。一緒に行く相手がむさい男じゃなくて、安心安心。
「ちょっと!! 聞いてるの!? フラッチェ言うなっていってんの!! 私の話を聞きなさいよ!!」
っと、ミミカちゃんへなぜおれたちが知り合いなのかを説明していると、痺れを切らした赤髪ツインテールががなりかけてきた。ギャァギャァうるさいなこいつ。胸ぺったんこのくせに(何の関連性もない)
「それにあんた!! いつになったら私の胸────」
「はい、少し黙ろうか!」
おれの刹那の時間でレンちゃんの口元を塞いだ。あぶねぇ、こいつこんな所で一体何を考えているんだ? こいつの事だから何も考えていないと思うが。
すぐ様、おれは窓口から飛び出し、ミミカちゃんにさよならした。
レンちゃんを抱えてギルドの端、二人席の丸テーブルまでダッシュで向かう。ふぅ、ここまでくれば安心だ。ミミカちゃん達受付嬢の美少女達の前で胸が何やらの話をされたら堪ったものじゃない。
おれに口を押さえられ、モゴモゴしているレンちゃんが暴れている。
「まぁまぁ、落ち着けって。そんなに怒ると胸がぺったんこになっていくぞ?」
口元を覆っていた手を取ると、ギャァギャァまた騒ぎ立てる。
「なるわけないでしょ!? なんで怒ると胸が萎むのよ!! そんなの聞いたことないわよ!!」
「おいおい、お前、自分が知っている知識だけが真実とは限らないってことを知らないのか? フラッチェ、お前それはやばいぞ?」
「え? ……………………私、やばいの?」
「んあぁ、やばい。それも深刻に、だ」
「……………………」
おれの適当な言動にすぐ騙される美少女がいた。赤髪ツインテールことレンちゃんであった。この子は本当に誰か保護者でもつけておいた方が良いのではないだろうか? 誰かにすぐに騙されそうで見てられない。
「これ以上胸がぺったんこになるのが嫌なら、すぐ怒る癖はやめた方が良いぞ」
「……わ、わかったわよ。……………………胸が小さくなるのは嫌だし……」
もじもじと申し訳なさそうに素直に謝るレンちゃん。どうやらおれの与太話を本気で信じたらしい。何この子? 疑うって事を知らないのか? やはり早急に保護者をつけるべきだ!
いや、待てよ? ここはおれが保護者になってやるべきなのでは? こんなに可愛くてアホな美少女を他の奴にわざわざ任せる必要なんてなくないか? うむ! ない! よし、時間がある時はおれが面倒を見ることにしよう、そうしよう。
と、まぁアホな妄想は置いておいて、時間的にもう試験が始まる頃合いだ。この絶壁を連れて、ギルマスのロココちゃんのところへ行かねばな。
「それじゃフラッチェ、そろそろ行くか」
「……ここで揉まないの?」
「……………………」
こいつは何をいってるんだろうか? やっぱりアホの子である。こんな所で胸を揉めるわけねぇだろうが。
「アホなこと言ってないで行くぞ、ギルドマスターのところだ」
おれはレンちゃんの手を引き、立ち上がらせると、そのままギルドマスターの執務室まで向かった。
〜
「やぁやぁ、待ってたよ〜♪」
場所はギルドマスターの執務室、扉を上げてすぐにロココちゃんの凛とした美声がおれの耳へと入ってくる。
こちらへと向けている顔はいつも通り、整っている。窓から差し込む日光が白銀に輝くロココちゃんの綺麗な髪をキラキラと輝かせていた。
「すまん、待たせたか?」
「いやいや、全然そんな事ないよ? 私は仕事をしているフリをしつつ、趣味のボトルシップに勤しんでいたからね。良い時間だったよ」
ニコニコと微笑み、満足げに文机の上に置いてあるボトルシップを見つめているロココちゃん。一瞬仕事しろよと思ったが、まぁ他のギルド職員達が優秀だからトップはこんな感じでもギルドは回っていくのだろう。おれはトップがせこせこ働いているより、こう余裕を持っていてくれる方が良いと思うな。
満足げな美少女の表情を眺めて癒されていると、おれの後方からこれまた別の美少女が声を上げた。
「ちょっと!! ギルドマスターが遊んでるんじゃないわよ!! これから私の大切な試験だってのに!! 私はやる気満々なのよ!! 気が抜けるじゃない!!」
と、早速キャンキャン吠えているフラッチェ。
「おいおい、フラッチェ。そんなに怒っていたらどうなるかもう忘れたのか?」
「──はっ!! そうだったわ!!」
おれの言葉にすぐさま両手を口に当て、黙り込むフラッチェ。あの嘘を素直に信じるこの子はまさに天然のアホの子。非常に尊い存在である。
「そうだ、良い子だな、フラッチェ」
「……んふ」
よしよしと動物を可愛がるように頭を撫でてやると、心地良いのか目を閉じて、ツインテールがぴこぴこと震えていた。……このツインテールはどうやって動いているのだろうか? 魔法?
おれがレンちゃんの頭を撫でていると、ロココちゃんがおれたちの方へさっと近づいてくる。そして、おれの耳元へ口を寄せると内緒話をするように小さくて声を上げる。
「ちょっとマナブくん、レンちゃんと知り合いだったの!? そんなそぶりは全然見せなかったのに」
「ん? あぁ、少し前にちょっとな」
「……少し前って、それになんでもう、そんなに仲がいい感じなの!?」
ロココちゃんが素直に撫でられているレンちゃんを見て、驚き慄いている。そこまで驚く事なのだろうか?
「そんなに驚くような事なのか? レンちゃんはちょっと性格に難があるが、素直で良い子だぞ?」
「──素直で!? 良い子!?」
ピシャァァーー!!
っと雷で打たれたような背景を纏い、片手を翻して一驚しているロココちゃん。どうやら今日のロココちゃんは吃驚仰天デーらしい。知らんけど。
「──そんな!? 嘘だよね!? 確かに優秀ではあるけれど、普段のアホっぽい言動やら人を小馬鹿にする物言いやら、たまにやらかすとんでもないドジやらでこのギルドの誰からもパーティを組まれたがらないレンちゃんが素直で良い子!? ありえない!? まだゴブリンが小躍りしてるっていわれた方がしんじられるよ!!」
「……………………」
物凄い、いわれようだった。普段のレンちゃんの言動はギルド間ではそのような感じだったのか……。普段、レンちゃんはどんな事をしているのだろうか? ここまで言われているということはそれだけやらかしているのだろう。
それで、その当人はというと、何も聞こえていないのか、幸せそうに目を閉じているのであった。
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