37
36
前回のあらすじ
シスターシアンとお茶会してたら、美幼女カレン乱入。
カレンと呼ばれた美幼女は、おれの隣にぽふっと腰を下ろした。ぬいぐるみは抱きかかえている。
肌と肌が触れ合いそうなほどの短距離にわざわざこの美幼女は座ると、新緑色の瞳をこちらへと向け、クマのぬいぐるみを持ち上げた。
「そのぬいぐるみがどうかしたのか?」
「……………………」
こちらをじっと見ながら、小首を傾げるカレン。なんだろうか? 一体何がしたいんだろう? おれが困惑しているのがわかったのかシスターシアンが助け舟を出す。
「……すみません、マナブさん。カレンは喋ることができないのです……」
「……喋れないのか?」
「はい……」
悲しそうに目を伏せるシスターシアン。一体どういった理由で喋ることができないのだろうか? 改めてカレンを見てみると不思議そうにおれとシスターシアン交互にを見ていた。どうしたの? という感じだ。喋ることができないことなど全然気にしていない、そういう表情だった。
しかし、こんな可愛らしい幼女が喋ることができないとは理由が気になるな。何か助けになる事は出来ないだろうか? おれも冒険者端くれ、ギルドの依頼をこなしているうちにそういった情報が入ってくるかもしれない。なので少しだけ事情を聞いておこうと思う。
カレンのパールグリーン色の髪をもふっと撫でながら、シスターシアンへと話しかける。
「シアン、この子が声が出せない理由とかは知っているのか?」
おれがそう語りかけると、シスターシアンは、言いづらそうに口を開いた。
「……呪い、が関係しているそうです」
「……呪い、ね」
呪いとは何だろうか? おれはこういった異世界の常識をまるで知らない。これは聞いたほうが早いだろう。
「シアン、すまんが呪いについて教えてくれないか?」
「私もあまり詳しくはないですが、彼女、カレンは《口封じ》という呪いにかかっています。生まれた時からずっと、今も喋ることができません」
「……その呪いは直す事は出来ないのか?」
生まれてからずっと喋ることができないなんて、辛すぎるだろ。教会とは回復魔法が秀でているんじゃなかったか? どうにかならないものだろうか。
「……直す、手段は恐らくないそうです……私の入信しているフチ教の上級聖職者である司祭様に聞いてみたのですが、ご存じないようでした」
「……そうなのか」
カレンへと視線を向けると、またも小首を傾げ、こちらを見つめていた。こんな小さな子がなぁ。子供が困っていると無条件で助けたくなるのはどうして何だろうか? カレンの髪を頭を撫でながら考えるがいい答えが見つからなかった。
しかし、教会の司祭様まで知らないとなると、これまたいい情報がギルドで手に入るのはあまり期待はできないな。まぁでも地道に探していくしかないな。うん。そう結論付けるとおれは紅茶へと口をつける。うん、美味しい。
と、それを羨ましそうに見つめる新緑色の瞳。
「……なんだ? カレン。お前も飲みたいか?」
「……………………」
コクコクと、首を縦に振る美幼女。
なんだ、喋る言葉出来ずとも、意思疎通は出来るっぽいな。良かった。しかし、勝手に飲ませていいか分からんからな。一応聞いておかねば。
「シアン、飲ませても大丈夫か?」
「マナブさんが宜しいのであれば、もちろん。あっ、別のカップをご用意しますね」
「いや、別におれが使ったやつでいいだろう。もっと来るのも面倒だろうし」
またドジっ子が発動しても困るし。ばじゃっ! っとこぼされた日には大変だ。出来る限り、ドジっ子は封印だ。
「……………………」
グイグイ。
急かしているのか、ぬいぐるみをおれの腹のあたりに押し当ててくるカレン。なかなかアグレッシブな美幼女である。よしよしそんなに喉が乾いたんだな。すぐに飲ませてやるよ。おれは新たにカップに紅茶を注ぎ込むと、カレンの前のテーブルへと差し出した。
「ほら、カレン」
「……………………」
しかし、カレンは飲もうとしない。何故だ? おれが入れた紅茶ではダメだというのか……。と自信をなくしていると、
カレンはのそのそとおれの股座へとよじ登ってきた。そしてぽふっと股座へ収まると、後頭部をグリグリとおれの鳩尾へと押しつける。……これ、どういう状況? 何かしたいのこの子? まぁ美幼女だから許すけど。
「あら、カレンったら、マナブさんがとても気に入ったのね」
「そうなのか?」
「えぇ、カレンはよく人見知りする子なんですが、初対面の方にこれだけ懐いたのは初めて見ました」
「それは……光栄だな」
本当に光栄だ。こんな美幼女に好かれるとは……。今はまだ、可愛らしさは蕾だがあと十年もすれば満開の可愛いを振りまいてくれそうな美幼女だ。将来が楽しみである。
ふわふわの感触を鳩尾に感じながら、おれはカレンの頭を撫でる。するとカレンがおれの腕を取り、紅茶へと向ける。何だ? 紅茶を飲ませて欲しいのか? しょうがないやつだ。
「ほら、紅茶だぞ、お姫様」
「……………………」
カップをカレンの口まで持っていくと、ちびちびと飲み始める。何だが小動物を餌付けしているような感覚に陥る。何だがちょっと楽しくなってきた。
「ほら、カレン、お菓子もあるぞ?」
「……………………」
お菓子のゴフールを口元はやると、小さな口でパクパク食べ出した。くぅ! やっぱり小動物だ! なにこの気持ち! おれの庇護欲をガンガン刺激してきやがるぜ! この美幼女は! 可愛い!!
……………………ギュッ、
はっ!? 可愛すぎて、思わず後ろから軽く抱きしめてしまった。ヤバイ! これは事案発生だ! と、正面に座っていたシスターシアンに顔を向けると、こちらの様子を微笑ましそうに笑うだけだった。ほっ一安心一安心。
カレンは一通り、飲み食べをしたら眠くなったのか、こくりこくりとかぶりを振り始めた。どうやら眠くなってしまったらしい。それに気づいたシスターシアンがカレンを起こそうと、おれの隣へやってくる。
「カレンっ、ダメですよ、ここで寝ては……ちゃんと自分の部屋で寝なさ──きゃ!」
ここでまさかのシスターのドジっ子が発動。
彼女はまた何もないところで躓き、おれの方へと倒れてきた。
しかしおれはカレンを抱きしめているためにどうすることもできない(抱きしめるのをやめればいいという選択肢は無いものとする)
おれは自らの運命に信じ、あるがままを受け入れる。
ポヨンっと、
シスターシアンのホルスタイン級のおっぱいがおれの顔を包み込んだ。……や、柔らかすぎる……これは一体なんなんだ?(回答おっぱいである)それに何かとても豊かな香りがおれの胸いっぱいに広がる。こうなんだろう? 胸をに顔を埋めると男は安心出来ると思うんだ。母性を感じるからだろうか? そこの辺りはよくわからんが。
「──っ!? すみませんっ!? すぐに退きますので!!」
少し慌てた様子のシスターシアン。体勢もかなりまずいことになっていた。彼女はソファーに座っているおれに対面で覆いかぶさっていたのである。おれとシスターシアンの間に挟まるようにしているカレンはまだうつらうつらとしていた。一度寝たらなかなか起きない子なんだな。
シスターシアンが慌てて、おれの膝の上から退こうとしたが──。
「カ、カレン!?」
「……………………」
カレンがシスターシアンの修道服を掴んでいた。どうやらそれで離れることができないらしい。カレン、グッジョブ! おれの膝の上で動くことができない美女シスターシアン。どうにか退こうとしているが、カレンが掴んで離さない。一進一退の攻防が続いていた。
おれはそれをじっくりと眺めているだけだった。カレンのお腹辺りに両手を回し、シスターシアンに持ち上げられないように援護する。がんばれ! カレン! 負けるな! カレン!
二、三度、立ち上がろうとしていたシスターシアンだが、やがて諦めたのか、申し訳なさそうにこちらへと視線を向けてきた。
「……マナブさん、すみませんが……しばらくこのままの体勢でいても宜しいでしょうか? カレンは一度寝るとなかなか起きないので……」
「おれは構わんが……」
寧ろご褒美だと思う今日この頃。
「……ありがとうございます……マナブさんが優しい冒険者の方で良かったです」
「そうか? 自分ではよくわからんが」
「……冒険者の方々、全員がそうとは言いませんが、ごく一部の方は子供がこうやって粗相をすると大変お怒りになる方もいらっしゃるので……」
「そんなことで怒る奴など、気にする事はない。子供は子供らしく伸び伸びと自由にしていればいい」
怒りをコントロールできない奴はただのアホだ。怒りのピークはたったの6秒だ。そんな僅かな時間も我慢ができないアホ野郎事なんか気にする必要はない。そんな奴に自分の時間を使うだけ無駄だ。考えるだけでも時間の無駄。そういう奴にはいちいち反応しない、これが一番である。
「マナブさんにそう言って頂けると……何故でしょうか? 安心できます」
ほっと表情を緩ませるシスターシアン。ベールに包まれた彼女の顔の様子は初めて会った時より、どこか緊張が取れたように感じた。
その表情を見たおれは、思わずシスターの頬へと手を伸ばす。お互いに見つめ合う。
「……シアン」
「……マナブさん」
シアンの顔が目の前にある、潤んだ瞳が印象的だ。徐々に近づいてくる、このままいくと触れ合ってしまいそうだ。動こうという気すら起きない、目を閉じたシアンの顔が段々と近づいてくる。これはまさかあれか? いいのか? でもシアン、目瞑っちゃってるし……。どうすんの! これ!? 覚悟決めるしかないのか!? でも今日初めて会ったんだぞ!? いいのか! おれ! やるぞ! やるか! 頭が混乱してきた……あれ? おれ、はんにゃのめんでも装備してたっけ?
と、アホなことを考えていると、
「「「「「シスター!!! お手伝いおわったよぉーーー!!!」」」」」
バン!! っと開かれる扉。
現れた大勢の男女の子供たち。
おれとシスターシアンを交互に見る。
「「「「「あぁ!! シスターがチューしてるーー!!!」」」」」
と、大声を上げた。
その声を聞いたシスターシアンはかなり慌てた様子で、
「ち、ちちち、違います!! これはいつものドジです!!!」
いつもドジっ子何だ……。
おれはただただそう思った。
5秒時間をください。
もし、よろしければ《評価ボタン》をタップして頂けると助かります。




