35
34
前回のあらすじ
マリーと串焼き
「お兄ちゃん、ここが教会だよ!」
「おぉ……」
月明かり鳥の串焼きを買った屋台から、歩くこと十数分くらい。おれの目の前に現れたのは、白を基調としたこぢんまりとした教会だった。
第一印象としては、かなりボロい。失礼だけど。マリーが観音開きの片側のドアを開ける音とか、ギィィィッとかいってるし、ほんとボロい。口には出さないけれど。
「お兄ちゃん、中にどうぞ」
「あぁ、入らしてもらうぞ」
中に足を踏み入れると、まず目に入ったのは正面にある祭壇だ。その後ろに綺麗な模様が描かれたステンドグラスが暖かな日の光を教会内に注ぎ込んでいる。
おれとマリーは長椅子と長椅子の間にある中央通路を通り、奥へと進む。すると祭壇の左右にある扉の左の方から一人の修道服を着た女性が現れた。
「あっ! シスター!」
「あら、マリー」
マリーがその女性の方へ走っていく。腰あたりに抱きつき、話しかける。
「シスター、あのね。あのお兄ちゃんは、いつもお花を買ってくれるお兄ちゃんだよ!」
「まぁ、そうなのですね」
「うん、それでね! 今日はお兄ちゃんがシスターにお話があるって! だから連れてきたの!」
「そうですか。ではマリー、私はこちらの方とお話ししますので、エリー達のお手伝いをしてきてくれますか?」
聖母のような笑顔でマリーに笑いかける女性。まさに聖母のようだった。……自分の語彙力のなさに少し自信をなくす。
「うん、わかった! お兄ちゃんまたね!」
トトトッと駆け足で走り去っていくマリー。バイバイ、マイリトルエンジェル。またいつの日にか。修道服の女性が出てきた扉からマリーは走り去り、扉を閉めた。
おれはマリーへと向けていた視線をシスターへと向ける。シスターはおれの目を見ると、ペコリとお辞儀をした。
「はじめまして、私はこの教会兼孤児院でシスターを務めています、シアンと申します」
ベールに包まれた茶色混じりの金髪がサラリと揺れる。黒を基調とした足元まできっちりと隠した修道服が彼女の清楚さと相まって、とても似合っている。
しかし、彼女のある一部が清楚さの中に凄まじい存在感を放っていた。それはもちろん皆さんご存知、胸、別名おっぱいである。おれは男であるが故についつい無意識に目線が女性のおっぱいへといってしまう癖がある。しかしこの癖は男であればしょうがないのだ。不可抗力という奴である。神の悪戯だ。
さて、ここで改めて彼女、シスターシアンのおっぱいに注目してみようと思う。彼女の胸は黒い修道服のの上からでも、はっきりとその存在感をあらわにしている。ぐいっと服を持ち上げているのである。しかもここが重要だが、全然垂れている気配がしない。この世界にはブラジャーがないにも関わらずだ!
前の世界であれば、ブラジャーがあれば垂れている巨乳の人もちゃんとぐいっと胸をあげることができ、服の上からの見た目は変わらなかったと思う。しかし今目の前にあるこの巨乳、いや爆乳は支えがないのにもかかわらず、重力に逆らい、抗い、一つ……いや二つで立ち向かっているのである!
あまりに見事なスイカップを目撃したので、少々興奮してしまったようだ。ザッツクール、落ち着け、おれ。よし落ち着いた、この間、僅かコンマ二秒の出来事だ。
おれは右手を差し出しながら(ただ握りたいだけ)シスターシアンへと挨拶をする。
「おれはマナブ、Eランク冒険者だ。よろしく」
「こちらこそ、よろしくお願いします」
きゅっと、握手をするおれとシスターシアン。手袋越しだが女性らしさを感じさせるたおやかな手をしていた。
「ところでシスターシアン、あなたの事はシアンと呼んでもいいか?」
「えぇ、もちろん構いません」
ニコリと人好きのする清楚な笑顔を見せるシアン。こんな優しそうな人に育ててもらっているからマリーはあんなにいい子なんだろうな。
「では、ここでは何ですので、客間へご案内いたします」
「あぁ、頼む」
おれはシスターシアンに連れられ、右側の扉を通る。突き当たりを左に行くとすぐに扉が見えてきた。そこがどうやら客間らしい。
シアンがドアを開け、先に中へと入る。続いておれの入ると、六畳ほどの広さで、中央にテーブルとソファーが置かれている。
「では、そちらへお掛けください。私はお茶を入れて参ります」
「あぁ、ありがとう」
そういうと、シアンはすっと部屋を出ていく。おれはそれを見送り、ソファーへと腰掛ける。ふう、こういっては何だが、結構ボロいソファーだった。つぎはぎだらけで、座り心地のお世辞にもいいとは言えない。やっぱり結構ギリギリで暮らしているのだなと思った。
だが、部屋の調度品は全体的ボロいが、よく見てみると丁寧に使われていることがわかる。ソファーもさっきボロいといったが、キチンとつぎはぎも縫われているし、床もゴミ一つ落ちていない。テーブルにもホコリひとつない。多分シアンの教育がいいのだろう。ここまで丁寧に掃除ができる子供はなかなかいないと思う。
「お待たせしました」
ガチャっと扉の開く音ともに、シアンが顔を見せる。三段のワゴンの上にティーセットを乗せ、こちらへと移動して来る。仄かに紅茶のいい香りが漂ってきた。
「良い香りだな」
「ありがとうございます。私の一番好きな茶葉なんです」
「ほう、それはまた」
ふふっと、微笑を浮かべるシアン。慣れた手つきでカップに紅茶を注ぎ込んだ。うすいオレンジ色の水色が特徴的な紅茶だ。
「どうぞ」
「ありがとう、いただくよ」
シアンはおれにカップを渡すと、テーブルを挟んだ対面に座った。一先ず一緒に紅茶を楽しむことにしよう。ズズッと音は立ててはいけないんだったけか? よくわからんなその辺は。まぁ音は立てずにゆっくりの一口飲むと、口から鼻に抜ける風味がとても柔らかく、それでいて心地よい渋味の味わえるなんとも味わいのある紅茶だ。シルクちゃんにも飲ませたいな。
「……美味しいな」
「お口にあって良かったです」
小首をかしげ、微笑んでいるシアンは、とても可愛らしく、大人っぽい見た目とは違い、少女のような笑顔だったのですごいギャップでかなり萌えた。このまま眺めていたい衝動に駆られるが、そこは我慢だ。おれがここへきた理由をそろそろ話さねば、ただお茶を飲みにきたマンになってしまう。
「先日はあの子、マリーからヨドシダ草を買っていただきありがとうございました」
「いや、気にするな。とても役に立ったからな。あの薬草は」
「それは良かったです。私も子供達も作った甲斐があったというものです」
口に手を当て、上品に笑うシアン。笑うたびに大きなお胸様が揺れていらっしゃる。一体何食ったらこんなにでかくなるのだろうか? 不思議でならない。
「それで今日はだな。そのヨドシダ草の件で来たんだ」
「と、言いますと?」
「何、そう悪い話じゃない。定期的にヨドシダ草を購入したいって話だ」
「まぁ! それは本当ですか!?」
パンっと手を合わせて、シアンは感嘆の声をあげた。両手を寄せたことによりおっぱいまで寄ってすごいことになっていた。まさに眼福である。
「もちろん、本当だ、嘘はつかないよ。それで月一で五十束ほど買いたいのだが、用意できるか?」
「五十束ですかっ!?」
「ん? そんなに用意できないか?」
「あ、いえ、ご用意はできます。大丈夫です。そんなに大量に買っていただけることに少し驚いてしまいました」
「何だ、そういう事か……安心した。それとな、値段何だが、おれの知り合いは太っ腹でな。一束あたり大銅貨八枚出してくれるらしい」
「大銅貨八枚ですかっ!?」
さっきから驚いてばかりのシスターシアン。今度はわざわざ立ち上がってまで驚きを表現している。立ち上がる瞬間、ホルスタイン級の豊乳がたゆんたゆんと揺れるのをおれは見逃さなかった。しかし、どんだけ驚いているのだろうか? やっぱりそれだけシルクちゃんの出した値段が高かったのだろう。流石はシルクちゃんだ。大海原のようにでかい心の持ち主である。でかいのは心だけじゃないが。




