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前回のあらすじ
エメさんとトーク
「…………まぶっ」
テントを出たおれは、朝日眩しさに目を眩ませながら、冒険者達が何処にいるのか辺りを見渡す。すると、おれたちが、ここ水精霊の水辺に来た方向から冒険者の集団がゾロゾロと歩いてくるのが見える。
ざっと見て、十数人くらいか?
いやぁ、よかった良かった。これだけいればバジリスクの巨体も何とか運べるだろう。んでもやっぱり荷車とか改めて持ってきたほうがいいのか? そっちの方が運びやすそうだし。
そうこうしているうちに、冒険者の集団が近づいてくる。すると一人の男性の冒険者が近寄ってきた。ミスリルのフルプレートを着ていて、とてもガタイのいい、見た目強者って感じの人だ。
「すまない、君がギルドマスターの言っていたマナブくんかな?」
「あぁ、そうだ。アンタは?」
「自己紹介が遅れたね、私はイルガ。Bランク冒険者をしている、以後宜しく頼むよ」
「あぁ、こちらこそ」
イルガが手を差し出してきたので、おれはそれをぐっと握り返す。がっしりとしていて力強い握手だった。
「それで私たちはバジリスクを討伐しにきたのだが……見たところ見当たらないようだが……」
「あぁ、バジリスクなら……ほら、そこの森の中だ」
「何?」
おれの指差す方向に視線を向けるイルガ。すると彼の目が驚愕に見開かれる。
「……あ、あれは……もう、死んでいるのか……マナブくん、君が倒したのか?」
「まぁな、これくらい倒せる自信がなきゃ、わざわざギルドマスターにいって討伐依頼を受けないって」
「……さすがはギルドマスターが一目置くだけのことはあるな……他の仲間はいないのか?」
「仲間なら、後ろに見えるテントの中にいるぞ。二人ほどな。今は一人がバジリスクとの戦闘で怪我をしていてな。療養中だ、そんでもう一人が看病をしている」
「なるほど……わずか三人でバジリスクを討伐するとは恐れ入った……」
三人? あぁ、こいつ三人倒したって勘違いしているのか。まぁエメさんが先に戦っていたからおれと二人で戦ったってことになるんだろうけど。
実質、おれ一人いれば何とかなったしなぁ。まぁそれを自分で言うのも面倒だし、勝手に勘違いさせておくとしますか。こういうのは他の人が言うのがいいのであって、自分が言うべきことではないからな。
「まぁ、大体そんな感じだな。ところでイルガ、アンタに頼みたいことがあるんだが?」
「ん、なんだい?」
「バジリスクの処理をお願いしたいんだよ。こんなデカブツが水精霊の水辺近くにいたんじゃ精霊達も迷惑だろうからな。バジリスクの素材とかはアンタ達が全てもらっていって構わないからお願いできないか?」
「……それは別に問題ないが……マナブくん、バジリスクは君たち三人が倒したんだろ?」
「まぁ、そうだな」
「だったら君たちには、バジリスク討伐の報酬を受け取る権利がある。私の方からギルドマスターに言っておくから、後で報酬を受け取るといい」
「それは助かるが……そこまでしてもらっていいのか?」
「なに、私はマルチ村は私の出身でね。それに私は無類の酒好きで、マルチ村のワインは特に大好きなんだ。それを守ってくれた君にとても感謝しているんだ。そのくらいするのはなんてことない」
なるほど、イルガはマルチ村の出身だったか。だからこんなに早く助けにきたんだな。まぁ、確かに自分の村が大変だったら助けに来るよなぁ。おれもそうすると思うし。シルクちゃんとかが大変な時は最速で助けに行きますっ!
「ありがとな、後はよろしく頼む。それでおれたちは怪我人を急いで街まで運ばないといけないから、先に帰るぞ」
「後は任せておけ」
そういうと、イルガは冒険者の一行と共にバジリスクの後処理へと向かった。さてさてあとは任せて大丈夫だな。
おれはテントへと戻り、シルクちゃんと一緒に野営の片付けに取り掛かる。それをサッと終わらして、エメさんを背負い、三人でプレの街へ向けて帰るのだった。
〜
「ふぅ〜到着っと……」
昼ごろ、おれたちは無事にプレの街までたどり着いた。馬車から降りたおれは少し伸びをする。行きのようにモンスターに襲われている美少女とかはおらず、スムーズに帰ることができた。おれとしては美少女と出会えた方が良かったんだが。
と、おれに続いて馬車から降りてきたシルクちゃんが声をかけてくる。
「マナブさん、わたしは家までお婆さまを送って行きます」
「あぁ、わかった。おれはギルドに報告しにいってくるから、また後でな」
「はいっ、昼食作って待ってますね」
シルクちゃんはそういうと、馬車へと乗り込む。帰りも行商人のニックに乗せてもらった。どうやらおれたちの帰りを待っていてくれたようだ。ありがたい。おれは馬車を見送り、ギルドへと足を向ける。
すると、不意に声がかかる。
「マナブさん、お帰りなさいなのです」
「……ん? あぁ、ミミカちゃんか。どうしたんだ? こんなところで」
おれに声をかけてきたのは、ネコ耳美幼女のミミカちゃんだった。相変わらずちんまりとしていて可愛らしい。ぴこぴこと揺れる耳もまたいい。
「いえ、少しギルドのお使いなのです。マナブさんがここにいるという事はエメさんは無事に助けることができたのようなのですね」
「あぁ、エメさんが少しバジリスクの毒にやられていたが、今は解毒ポーションを飲んで安静にしていれば問題ない。バジリスクもおれが倒しておいた。死体は後から来た冒険者のイルガって奴に任せてある」
「もしかしてイルガさんが来る前にもう、バジリスクを倒したんです?」
「ん、あぁ、まぁな」
「……さすがはマナブさんなのです……マスターが認めているだけのことはあります」
ミミカちゃんが驚嘆の眼差しでおれを見つめる。なんだが誇らしいな。こんな美幼女に見つめられるなんて。
と、ミミカちゃんの斜め後ろから一台の馬車が走ってくる。このままだとミミカちゃんに当たりそうで危ないな。おれは彼女をぐっと自分の方へ抱き寄せる。
「はわっ!?」
ガラガラガラっと通り過ぎていく馬車。
「すまん、馬車が通り道にミミカちゃんがいて危なかったからな」
「……あ、ありがとうございますです」
おれの胸の中で小さい身体をさらに小さくしてお礼を言うネコ耳美幼女。ネコ耳がピンッと立っている、何やら緊張しているようだ。頰も真っ赤でなんとも可愛らしい。
「ミミカちゃんは小さくて可愛いな」
「はわっ!? かわ、可愛いだなんて、そんな……私よりマスターやシルクちゃんの方が可愛いのです……」
「んまぁ、確かにあの二人も超絶可愛いが、ミミカちゃんだって負けてはいないぞ? 十分に可愛らしいとおれは思う」
「…………はうぅ……」
ミミカちゃんの少し癖っ毛の入った茶髪をもふもふと撫でる。ふんわりとした感触がまた心地よい。いつまでも撫でていたくなる、そわな感触だった。
「それにミミカちゃんには他の二人にはないこの猫耳があるじゃないか」
「ふぇ……?」
ネコ耳をくりくりと触るとミミカちゃんの表情がくにゃりと緩む。目を閉じて触られている感触に集中しているようだ。なんとも気持ち良さそう。
なんだろう、特に嫌がっていないということはもっとやっても大丈夫そうだと言うことか。よしよし、撫で尽くしてやろう。
撫で撫で撫で撫でなでなでなでなで。
ミミカちゃんは周りの視線などお構い無しにおれの背中へと小さな手を回し、ギュッと力を込めてきた。ミミカちゃんの体温が感じ取れた。あったかいなミミカちゃんは。
おれも特に周りの視線は気にしていません。気にしていたら、こんなところでミミカちゃんのネコ耳をもふもふしていない。
おれは満足するまでネコ耳を撫で撫でし続けるのであった。




