23
仕事、きついっす
22
前回のあらすじ
精霊ルディアと契約するかも?
「それじゃ、呼ぶときはどうしたら良いんだ? 何か呪文でもいるのか?」
「ふふっ、いいえ、ただわたしの名を呼んでいただければ大丈夫ですよ? 呪文なんてわたしとお兄さんの間には必要ないです。あとこれも渡しておきますね、契約の証として」
ルディアが自分の胸の中へ文字通り手を突っ込んだ。トプンッと水面に小石が落ちるように波紋が広がる。精霊の身体って神秘的だね。あと何処から取り出すつもりなんだよ。
そうして、取り出したものは青い宝石のようなものが嵌め込んであるシルバーの指輪だった。ルディアは俺の手を取るとその指輪を手渡してきた。
「何だか高そうだが、貰ってもいいのか?」
「はい、お兄さんの為にわたしの身体の一部から作り出した指輪です。大切にしていただけると幸いです」
「身体の一部って、そんな大丈夫なのか? おれは精霊についてよく知らないから分からないけれど」
「ふふっ、心配してくれるんですか? 大丈夫ですよ、これくらいでなんとかなる程わたしはヤワじゃないですから」
ニコリと顔を綻ばせるルディア。ずっとおれにくっ付いたままである。
「まぁ、それなら良いんだが……」
おれは受け取った指輪を左手の人差し指に嵌め込む。何だこれ? サイズが合っていないぞ?
「お兄さん、お兄さん。その指輪は魔力を流せばちゃんとピッタリと嵌まりますよ?」
「そうなのか……おっ、本当だ」
指輪に意識を向けて、ぐっと魔力を込めると指輪が縮小し、ピッタリとおれの指に嵌った。特段きつくなくジャストサイズだ。改めて見ると本当綺麗だなぁ、この指輪。ルディアと同じ髪色の青い宝石がまた良い味を出している。
「そういえば、召喚するとき、ルディアがここの水辺から居なくなっても大丈夫なのか? 水の質が悪くなったりしないか?」
もし、水質が悪くなってしまったら、マルチ村のワインが作れなくなってしまうからな。これは重要な事だ。
「ふふっ、お兄さんは優しいですね。近くの人間の村のことを気にしているのですね。ですがそれは問題ないですよ? わたしの眷属の精霊がいますので、彼女たちがちゃんと水質は管理しています。というかわたしは殆ど何もしていませんね、ただ飯食らいって奴ですね、ふふっ」
「それなら良いんだが、ただ飯食らいってまた自分を卑下にするな……というかルディアは精霊としてそこそこ偉いのか?」
「そうですっ、わたしは偉いのですよ? 精霊ランク特一級という奴です。どうです? キスしたくなりましたか?」
「いや、何でそれを聞いてキスがしたくなるんだ……」
この青髪美少女精霊はキス魔なのだろうか? もしくはただただ魔力が欲しいだけの大喰らいなのかもしれない。案外ただ飯食らいって言うのも間違っていないかもしれない。
そうして、おれは水精霊のルディアと一晩中語り合い、夜を明かしたのだった。
〜
朝日が辺りを照らし始めた。
結局一晩中ルディアと話していたな。精霊のこととか、この辺りのモンスター、街、村、人についてなどなど、兎に角何でもどんな話題でも話の種になればいいと思って話してくれたし、おれも話した。
さてと、徹夜明けとはいえ、まだおれにはシルクちゃんとエメさんを街まで送り届けると言う使命があるからな。寝てなんかいられないぜ。
「んじゃ、話し相手になってくれてありがとうな。また用があったら呼ぶよ」
「ふふっ、もうお兄さんったら、わたしはいつでも暇しているのですから、用がなくても用があっても呼んでくれて構いませんよ? 常住坐臥の暇人といえばわたしのことです」
どうやらルディアは相当な暇人らしい。暇を持て余しているらしい。ちょくちょく呼んでやるか、おれも暇人みたいなもんだし。冒険者の仕事って一日にがっつり稼げば、一週間は持つからなぁ。まぁ命がけの仕事だからそのくらいはね、ないとね?
「わかったよ、んじゃおれ達はそろそろ帰るわ、ありがとな指輪とか何やら」
「いいえ、お兄さんの為ならえんやこーら、ですよ。ふふっ、ではお気をつけてお帰りください」
ルディアはそういうと、おれの左腕から離れ(あの感触がなくなるのは悲しい)水辺の方へ向かうとそのままゆっくりと入っていき、やがて見えなくなった。
人間みたいに見た目しているのに、やっぱり精霊なんだなぁと思う瞬間だった。呼吸とかどうなってんだろ?
「さてさて……」
エメさんを助けるだけだったが、結構、色々と収穫があったな、ルディアに会えたり、指輪とかもらったり、まぁ、バジリスクの素材とかは良い金になるかもな。
その金はエメさんの治療やシルクちゃんへのプレゼントとかに使おうかな。あとはあの花売りの幼女とかシスターとかにも何か買っていってやろう。エメさんの件でお世話になったしな、あの白い花、名前忘れたわ。
あっと、忘れる所だった。ギルマスのロココちゃんとミミカちゃんにもプレゼントしておくか、美少女とは仲良くなっておきたいからな。こまめに会うことが大事だと思います。マルチ村にやることがあればロティちゃんにもだな、あとヒスイさんもやっとくか。
やべぇ、おれこの世界に来てからと言うものの、美少女遭遇率が天元突破しているわ。最高です。神様ありがとうございます。感謝感激雨霰。
と、おれが神様へ報恩謝徳していると、
「マナブさん、おはようございます」
「あぁ、シルクちゃん、おはよう」
テントから出てきたシルクちゃんからの挨拶。美少女からの挨拶にはこう癒しの効果があると思います。はい。
「マナブさん、本当にありがとうございます。一晩中見張りをして頂いて……」
「いや、シルクちゃんやエメさんを守れるのであれば、全然苦じゃなかったさ。それにシルクちゃんこそエメさんの看病であまり眠れなかったんじゃないか? 深夜何度か起きていたようだし」
「はい、ですがお婆さまも、もう殆ど落ち着いたようでして、あとは家に帰ってゆっくり休養を取れば問題ないかと思います」
「そうか、それは良かった。あの白い花……なんて言ったか、まぁ、あれが役に立って良かったよ」
「ヨドシダ草ですね、たまたまマナブさんが持っていたものですから、びっくりしてしまいましたよ。結構希少な薬草なんですよ、あれ」
希少なのか……あれ。そんな希少な薬草を売っていたのか。実際のところ、あの白い花はいくらくらいが通常の値段なんだろうか? 聞いておこう。
「シルクちゃん、そのヨドシダ草は、おれは一束銅貨十枚で買ったんだが、普通はどのくらいの値段なんだ?」
「銅貨十枚ですか……それはまた安く買うことができましたね。ヨドシダ草は普通に買えば一束大銅貨五枚はかたいですね」
なんと、五分の一の値段で売っていたのか、あの幼女は……。然るべきところで売っていれば五倍の儲けだぞ? しかしまぁ、そういうのはコネがないとな。仕方がないのかも知れないが、ここはシルクちゃんに頼んでみよう。シルクちゃんも錬金術師だし、解毒ポーションの材料になるヨドシダ草は必要だろう。
「シルクちゃん、もし問題がなければ定期的にヨドシダ草を買わないか? 出来れば適正価格で。おれがヨドシダ草を売ってくれた人に話はつけるから」
「そうですね、お婆さまも、そのおかげで救われましたし、一束大銅貨八枚で五十束ほど、毎月買わせていただきます」
「よしっ、ありがとうシルクちゃん! 助かるよ、これで少しはシスターもマリーも良い暮らしができるだろう」
いやぁ、良かった良かった。プレの街に帰ったら、孤児院に行ってシスターやマリーに伝えるかな。きっと喜ぶぞ。




