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あのあと、シルクちゃんとゆっくりお風呂に浸かり、体を温めたあと俺たちは寝ることにした。
しかし、ベットは一つしかない。これはどうしたのもか。これはあれか? 一緒に寝ろという神様のお召し母子なのか? ありがとう神様っ!
「さて、そろそろ寝たいところだが……」
「……マナブさんっ、どうかベットをお使いくださいっ」
「いや、それだとシルクちゃんはどうするんだ?」
「わたしは、床でも何処でも寝られますのでっ」
いや、それはいかんだろ。美少女を床に寝かせて自分はベッドで寝るとか、おれはそんな高度なプレイはとてもじゃないけど出来ない。
美少女は全面的に保護し、愛でる為にあるのだとおれは思う。
「いやいや、シルクちゃんが床で寝るとか論外だ。ベットは広いし、二人で一緒に寝ないか?」
「えっ!? いいんですかっ!? わたしが隣で寝ても?」
「何言ってるんだ? いいに決まっているだろ。シルクちゃんならむしろ歓迎するぞ?」
「わ、わたしもマナブさんと一緒に寝られるのなら大歓迎ですっ」
シルクちゃんが、ぴょこぴょこと嬉しそうに跳ねながら、近寄ってくる。なんて可愛い生物なのだろう。これは何という美少女ですか? これはシルクちゃんです。天使なのです。
「そうか、じゃ明日も早いからな。今日の疲れを明日に残さない為にも、早めに休むとするか」
「はいっ、そうしましょう」
おれはダブルぐらいのサイズがあるベットの左側に寝転がり、右側にシルクちゃんが陣取る。
ふと思ったが、美少女と一緒に寝るのはこれが初めてのことであった。前世ではこう言った機会にはなかなか恵まれなかったからなぁ。前世の女の子は非常に厳しいっ!
隣を見ると、シルクちゃんがこちらを見るように横たわっている。若干顔が赤いがいつも通り可愛い。いや、顔を赤らめている方が三割増しで可愛い。可愛さが天元突破しそう。
「シルクちゃんは可愛いなあ」
「えぅ!? どうしたんですかっ、いきなりっ」
「いや、なんだか見ていたら、ふとそう思ったんだよ。その金髪とか綺麗だよな」
「……そ、そうなのですか? ──この金髪はお婆さま譲りの色なんですよ? わたしも気に入っています」
「へぇ、エメさん譲りね。という事はエメさんとシルクちゃんと同じ金髪なんだ?」
「はい、お婆さまの髪はまた綺麗なんですよ。こうキラキラしていて、わたしの憧れなんです」
その光景を思い出しているのか、シルクちゃんがキラキラとした瞳でうっとりしている。この子はおばあちゃんの髪の毛フェチなのだろうか? まぁ、女性の髪が好きなのは同感なのだが。髪は女の命ってな。
「そうか、でもシルクちゃんの髪のおれは好きだけどな」
と言いながら、窓から差し込む、月明かりにキラキラと光る金髪を撫でる。サラサラで指通りが滑らか、天上の触り心地だ。
「あぅ……」
シルクちゃんは髪を撫でられると、ほんとに大人しくなる。恥ずかしそうに俯くが、何処かうっとりとした表情も浮かべるので、実のところそこまで嫌がってはいないと思う。
撫でるのをやめると、こちらを伺いもっと撫でて? と目線で訴えてくる。こんな目で見られたら撫でるのをやめるわけにはいかんだろ? ずっと撫で続けていたい。
だが、明日はエメさんを助ける為にコーポリ山脈へと向かわねばならない。流石に寝不足でバジリスクとかいう強モンスター戦うのは面倒だ。ここは心を鬼にして寝るとしよう。
「それじゃ、シルクちゃん。そろそろ寝ようか」
「は、はいっ、おやすみなさい。マナブさんっ」
「あぁ、おやすみ。シルクちゃん」
おれはもう一回撫でると、ベットに仰向けになる。するとシルクちゃんがおれの左手をギュッと抱え込んだ。
「こうして寝てもいいですか?」
「あぁ、かわまないぞ」
「ありがとうございます」
シルクちゃんは何やら満足げな表情をし、目を閉じた。すると、数秒で寝息が聞こえる。
「……シルクちゃんも疲れていたのか」
まぁ、馬車での旅の疲れとか、ゴブリン騒動とかあったからなぁ。いろいろ精神的にも体力的にも疲れただろう。
「おれも寝るか」
シルクちゃんの胸の感触を左手に感じながら、目を閉じる。さぁて、明日はまた忙しくなりそうだ。
〜
朝、窓から火の光が差し込み、それを顔に受け目が覚めた。
「ふぁ〜ぁ、朝か」
目を開け、あたりを見渡すとシルクちゃんはすでに起きて、ベッドから出ているようだった。
「シルクちゃんは朝早いな」
さて、おれも準備をしないとな、とは言ってもおれが持っていくものなんてたかが知れているけどな。食糧と幼女にもらった白い花くらいだ。それ以外に武器は拳一つで十分だし、防具に至っては何かモンスターの皮で出来た軽装の鎧しか着ていない。
これ、《頑丈》チートなかったら終わってるな。普通の人がこんな装備でバジリスクと戦おうとかまじ無謀すぎる。神様には本当に感謝だな。やっぱり当たり前のことに感謝するのはおれは大事だと思う。常にあると思うな、当たり前がってな。
すると、扉の向こうから、トットットっとリズミカルな足音が聞こえてくる。
ガチャ、
「マナブさーん、起きてますかっ」
「おぉ、ロティちゃん。おはよう」
おれを起こしにきてくれたのは、ロティちゃんだった。いやぁ、素朴な美少女にお越しに来てもらえるのう感慨深いな。本当に嬉しい。
「おはようございます、もう起きていたのですね」
「あぁ、ここのベットは寝心地が良かったからな。よく眠れたよ」
「それは良かったです。あと、朝食できてま いますが、食べていく時間はありますよね?」
「あぁ、問題ない。いただこうかな、準備ができたら向かうよ」
「はいっ」
ロティちゃんは嬉しそうに笑い、扉を閉めてまたリズミカルにトットットっと歩いて行った。
さてと、さっさと準備を済ませて、朝食をいただきますか。
〜
準備を整え、居間の方へと向かうと、そこからいい香りが漂ってきた。これはパンの匂いか? 焼き立てのいい香りだ。
「おはよう」
「マナブさん、もう朝食できてるよ」
「あっ、おはようございますっ」
そこには、シルクちゃんとロティちゃんがエプロン姿で何やら調理をしているようだった。エプロン姿のシルクちゃんとロティちゃん、可愛いな。朝から目の保養をしてくれるとはなんて出来た美少女達なんだっ!
「っと、あれ? ヒスイさんは? あとカジも」
居間には、シルクちゃんとロティちゃんしかいなかった。あとの二人は何処へ行ったんだろうか?
「えと、ヒスイさんとカジくんは、イチさんのところに向かうといって先ほど出て行かれました」
「結局、お父さん昨日は帰って来なかったですからね。お母さんは朝食を届けに行ったんです。カジはお父さんの手伝いにでも行ったんだと思います」
「そうか」
昨日は帰ってこなかったのか、あの大男。まぁおれがボコボコにしてやったゴブリンどもの後処理を任せたからなぁ。結構数もいたし、しゃーなしかもな。まぁ、被害はほとんど出なかったのだから、それで勘弁してほしい。
「それよりマナブさんっ、今日の朝食はわたしが作ったんですよっ! 自信作ですっ、どうぞ召し上がってください」
「ちょ、ロティ! わたしも作ったでしょっ」
「そうだったそうだった、ごめんね」
「もうっ」
「二人ともありがとう、美味しそうだ」
主食は焼き立てのパン、あとは程よい焼き色の半熟の目玉焼きに、香ばしい香り漂うベーコンか。うまそう。
というか、この世界にも卵はあるんだよなぁ、やっぱり鶏がこの世界にもいるのだろうか? それともモンスター? 色々調べてみたいことが沢山あって困るなぁ。楽しいけれど。ベーコンもなんの肉を使っているのか気になる。猪みたいなモンスターがするのか?
「んじゃ、マナブさん、一緒に食べましょう」
「あぁ、いただこう」
「いただきます」
おれとシルクちゃんとロティちゃん、三人で温かい食事を頂いた。美少女に作ってもらう食事は本当においしい。おいしいったらありゃしない。最高だっ!