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銀河太平記   作者: 大橋むつお
97/409

085『パチパチに関する恵の新発想』

銀河太平記・085


『パチパチに関する恵の新発想』 本多兵二    





 人とロボットのちがいは魂があるかどうか。


 魂はソウルともゴーストとも呼ばれる。


 四半世紀前の満漢戦争までは、脳みそがあるかどうかが基準だった。


 優れたCPはパターンとして人間の思考をコピーすることはできるが、それはただのパターンでしかなく、パターンから外れて思考や行動がとれない。まあ、よくプログラムされたオートマタに過ぎない。


 それでも、情緒的リベラリストたちは『人とロボットを平等に扱うべきだ』と主張していた。


 そのリベラリストの主張が通ったのは、皮肉にもリベラリストが忌み嫌う軍隊だった。


 戦闘を担う兵士はロボットで十分だったが、指揮官は人間でないと、非常に高い確率で敗北する。


 理由は簡単で、パターンを読まれてしまうとパターンに対する対策が講じられて確実に裏をかかれる。


 だから、満漢戦争までは、指揮は必ず人間が担った。


 人間とロボットの割合は国によって開きがある。


 世界的にロボット化は2/3が限度だと言われていたが、日本などミリタリーアレルギーの強い国だと10%程度しか人間がいなかった。



 しかし、自分が生まれる前に決着を見ていた満漢戦争で、児玉元帥(当時は少将)が戦闘中に瀕死の重傷を負い、一か八かでロボットにPIパーフェクトインストールさせて戦闘指揮を継続して日本軍を勝利に導いた。


 なんと98%も戦力を喪失したうえでの勝利で、人類の戦史史上最大の劣勢からの挽回だった。


 世界は、日本海大海戦、真珠湾攻撃に並ぶ奇跡の戦闘だという位置づけになっている。


 PI後の児玉元帥は100%の機械人間で、それまでの法的な区分では児玉元帥ではなく児玉元帥のアビリティーをコピーしたロボットに過ぎない。


 しかし、ロボットに戦争指揮はできないし、勝利などあり得ない。


 世界は、一瞬で100%の機械人間をも人間と認めた。


 まして、PIしたロボットは敷島博士が渾身の技術と想いで作った美少女ロボットのJQだ。


 

 それ以来、世界はロボットに人権を認めるようになった。



 先日のA鉱区の落盤事故では人間にもロボットにも犠牲者が出た。


 人間の犠牲者は義体化率にかかわらず火葬にされ、ロボットの犠牲者は分解されて予備パーツのストックにされた。


 むろん本人が「人間だ」と言っている者が居れば火葬にするのだが、そういう者はいなかった。


 それほど、この西ノ島では人とロボットの区別が希薄だったのだ。


「親鸞聖人でも『わたしが死んだら魚の餌にしてくれ』とおっしゃっていました」


 坊主だった社員が、読経の後に微笑んだので、作業はわだかまりを持つことなく進んでいった。


「おまえ、聖人! マヌエリトの師、なれ!」


 ナバホ村の村長などは一大興奮を発したが「偉いのは阿弥陀様と親鸞聖人です(^_^;)」と頭を掻いて沙汰止みになった。


 

「よし、これでみんなと一緒に宴会に出られるよ!」



 三体のパチパチ(ニッパチ イッパチ サンパチ)の前には若干のサイズの違いはあるが少年の体格をしたロボットが立っている。


「ほら、入れ替わってみ。制御機器が変わるだけだから、怖くないよ」


 恵が手を叩いて急かせる。


 パチパチたちは、少々戸惑ってはいたが、ニッパチが『じゃ、せーので!』と言って、『『お、おう!』』とイッパチとサンパチが応えて、一斉に入れ替わった。


 ブン


 小さな電子音がして、三体のパチパチの稼働ランプが休止を示す赤に変わり、三体のオートマタの目に光が宿った」


「どう、違和感とかある?」


『お……いいかも!』


『珍妙でござる!』


『革命的アル!』


「スクラップ集めて作ったから、ちょっとチグハグかもしれないけど、これで人間と同じ機能よ。時代劇に出てくる電話の子機と親機みたいなもんだから、オフの時なんかは子機になればいっしょに飲めるわよ」


『『『おお!』』』


 三人揃って挙げた手だけがリアルハンド。


 あとはフランケンシュタインみたいなんだが、三人とも喜んでいる。


「手だけリアルだと、中には引く奴もいたからね」


 恵はよく見ている。


 西ノ島に見かけで人の値打ちを判断する者などいないけど、見た目というのは存外大事だ。


 チルルが今わの際に母との思い出を想起したのは、ニッパチのリアルハンドに母の優しさを思い出したからだ。


 自分たちも、あの事故から学んだのだ。


 パチパチは可変作業機械だったので、いかに変形させるかということに主眼が置かれていたが、内蔵CPを切り替えて体ごと変えてしまうという発想は新しいのかもしれない。


 その夜、さっそくパチパチたちは食堂の給仕サービスに出てみた。


「え、おまえら?」


「パチパチなのか?」


「いいぞ、かわいい!」


 好評だった。


 パチパチたちも楽しそうだ。


 それまでは、でかい図体を畳むようにしても人の五人分ほどのスペースが要った。


「よし、ツギハギは可哀想だから、補給部から必要なパーツをもらってカスタマイズすればいいよ」


 ヒムロ社長の許可が下りて、先行きの楽しみが増えた。


 

 西ノ島は落盤事故のショックから少しづつ立ち直り始めた。




※ この章の主な登場人物


大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子

緒方おがた 未来みく     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女

加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない

姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任

扶桑 道隆             扶桑幕府将軍

本多ほんだ 兵二へいじ    将軍付小姓、彦と中学同窓

胡蝶                小姓頭

児玉元帥              地球に帰還してからは越萌マイ

森ノ宮親王

ヨイチ               児玉元帥の副官

マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)

アルルカン             太陽系一の賞金首

氷室                西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)

村長                西ノ島 ナバホ村村長 

主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者


 ※ 事項


扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ

グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略

扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信

西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地


 




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