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銀河太平記   作者: 大橋むつお
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083『落盤事故から一か月』

銀河太平記


083『落盤事故から一か月』 本多兵二    





 A鉱区の落盤事故から一か月、犠牲者のうち八名の身元が判明して、それぞれの身内や縁者に引き渡された。



 まだ五名は、身元が判明しなかったり、遺族や縁者の消息がつかめなかったりで、それぞれ割り当てられたカンパニーの社員が遺骨の守りをやっている。


「やっと咲いたわ」


 一杯の桜を抱えて、恵が嬉しそうに食堂にやってきた。


 遺骨は、お岩さんの発案で、まとめて食堂に安置してある。


 食堂が、いちばん賑やかで活気があって、カンパニーのみんながリラックスしていて、日に三度は必ず訪れるところだからだ。


 食事の場に遺骨はそぐわないという意見も一部にはあったが、ヒムロ社長が「それはいい!」と手を叩いたことと、ナバホ村の村長や、フートンの主席が仲間を連れて線香をあげに来ても(線香をあげたあとは大小の宴会になる)対応がしやすく、みんな喜んでいる。


「促成栽培じゃ、ちょっと申し訳ないんだけどね」


 ごっつい体格にかかわらず、恵と二人で可憐に花を活けながらお岩さんが頬を染める。


「西ノ島じゃ、ろくな草花がないからね、ちょっと冒険だったけど」


「お岩さんの、活け方って、ちょっと池坊の感じがする」


「なにを言うのよ、こんな飯作る事しか能のないオバハンに(#^_^#)」


「フウマさんは、けっきょく分からなかったんだよね」


「フウマって漢字で書けば『風魔』で、いかにもだったんだけどね、公安十課にいたところまでは分かったけど、そこから前は皆目……」


「仕方がないよ、公安は退官した者の情報は完全に消去してしまうからね」


「そうよね、所属していた事実そのもが、本来は分からないもんね。所属していたことを突き止めただけでも、社長はよくやったわよ」


「まあ、分からなかったら、このお岩が居る限り、食堂で賑やかにお守してやるさ」


「チルルは、分かると思ったんだけどね……」


 亡くなる前、苦しい息の中で語ってくれたことで、チルルについては簡単に知れると思ったんだが、彼女についても経歴をトレースすることができなかった。


 この島にやってきた人間やロボットは、人には言えない過去を持ったものが多い。自分で、あるいは、ここに来るまで所属していた組織から経歴を消された者が多い。


 一見、気楽に見える西ノ島だけど、その地下に隠れているものはパルス鉱石ばかりではないようだ。


「あ、晩飯の仕込みしなくっちゃ! お骨にかまけてて忘れるとこだ!」


「手伝いましょうか?」


「すまないねえ、守りやくさんにお願いして」


「僕もやりますよ、火星じゃ野戦食とかやってましたから」


「いや、下ごしらえとかは別にして、厨房はお岩の城だからね。そうだ、マッシュルームが……(体格に見合わない身軽さで冷蔵庫を確認する)……あ、ちょっと切れかかってる! シメジ3キロ、シイタケ2キロ、エノキ1キロ、ついでにもやし3キロとってきてくれる?」


「「了解!」」


 恵と二人でB鉱区のマッシュルーム栽培庫に向かう。


「なんだか、兵二もカンパニーの社員みたいになってきたわね」


「ここに来て日が浅いから、こういう便利仕事にはうってつけ」


「それ、村長の考え? それとも兵二?」


「あ、両方だと思う」


「アハハ」


 ファジーでいいよね的に恵が笑う。


 恵も一筋縄ではいかないやつなんだけど、こういうところを見ると、冒険好きの女の子だ。


 

 しまった!




 栽培庫に入って、恵と二人で立ちつくしてしまった。


 マッシュルームの類は、どれも原木に実っているばかりで、一から収獲するところからやらなければならない。


 てっきり、コンテナかワゴンに種類ごとに入っているものを持っていくだけだと思っていた。


「お岩さんて、新鮮さを大事にする人なんだ……」


「必要な時に、必要なだけとってくる人なんだ」


 いちいち収獲していては間に合わない。急いでやったら、収穫に適さないものまで採ってしまいそうだ。


「……そうだ!」


「あいつに頼もう!」


 二人の意見が一致した。




※ この章の主な登場人物


大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子

緒方おがた 未来みく     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女

加藤 恵              天狗党のメンバー  緒方未来に擬態して、もとに戻らない

姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任

扶桑 道隆             扶桑幕府将軍

本多ほんだ 兵二へいじ    将軍付小姓、彦と中学同窓

胡蝶                小姓頭

児玉元帥              地球に帰還してからは越萌マイ

森ノ宮親王

ヨイチ               児玉元帥の副官

マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)

アルルカン             太陽系一の賞金首

氷室                西ノ島  氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ、お岩)

村長                西ノ島 ナバホ村村長

主席(周 温雷)          西ノ島 フートンの代表者


 ※ 事項


扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ

グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略

扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信

西ノ島      硫黄島近くの火山島 パルス鉱石の産地


 

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