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銀河太平記   作者: 大橋むつお
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070『今夜も酒盛り』

銀河太平記


070『今夜も酒盛り』 加藤 恵  






 氷室カンパニーは単純な者が多い。


 B鉱区のパルスガ鉱石に見込みがないと分かっても、一瞬ガッカリするだけだ。


「今度採れた分だけでも、とうぶん酒代には困らない、好きなだけやってくれ!」


 がっかりした社員たちに氷室がメガホンで言うと、瞬間で笑顔が戻ってきて「それなら今夜も!」と上機嫌の歓声があがる。


 ウオーーーーーーー!(^▽^)/!


 歓声が鎮まる間もなく、あちこちで酒盛りが始まった。


「二年分とは言わないのね?」


 後ろに立ってこっそり言うと、回れ右して顔を近づけてくる。


「そんなこと言ったら、これから二年間はろくに働かなくなる」


「なるほど……」


「『とうぶん』というのは人によって受け止め方がちがう。ほとんど永久だと思う者、まあ、一週間ぐらいだと思う者。一週間ぐらいだと思う者でも、一週間丸々飲んでいようという者もいれば、一週間後の作業再開の準備を心がける者といろいろだよ、ほら……」


 氷室の示した先には、とりあえず手近の酒瓶をラッパ飲みするやつ、倉庫に酒を取りに行くやつ、みんなで飲もうとテーブルや椅子を用意する者、酒の肴を作りにキッチンの火を起こす者、機械に油を差しておく者、二日酔いの薬をチェックする医療係り、いろいろだ。


「あ、ハナがゲートから出ていく」


「ハナは、近所に挨拶に行くんだ」


「あいさつ?」


「ああ『今夜もお騒がせします』ってね、ああ見えて、なかなか気配りのできる子なんだ。むろん、ハナ流のタメ口だけどね」


「なんだか過去を感じさせる子ね」


「ここに居る者は、みんな世間の標準よりは重い過去を持っているよ。それを尊重しあうというのが、わが社の数少ないルール。ここでは、本人が言わない限り人の過去には触れない、メグミのこともね」


「社長のことも?」


「お、初めて社長って呼んでくれたね。それが一番しっくりくるかな」


「あ、じゃあ、そうするわ」


 なんだかはぐらかされた、ま、いいか。


「よし、ボクは酒の肴でもつくるか!」


「社長が?」


「ああ、アセトアルデヒドを分解しにくい体質なんでね」


「……あら、キッチンは一杯みたい」


「大丈夫、おーい、ニッパチ!」


 人の輪の外で突っ立ていたニッパチの首が、こっちを向いた。


「酒の肴作るから、手伝え!」


『がってん!』


 氷室……いや、社長はニッパチを引き連れると、資材の中からコンパネの切れを取り出してまな板にして、手当たり次第に余りものの食材で調理にかかる。


 一度ニッパチに見本をやって見せ、少し説明を加えると、次はニッパチにさせて、うまくいくと褒めてやる。


 ニッパチも、わたしが付けてやったリアルハンドのスキルが上がるのが嬉しいようで、ボディーをガチャガチャ言わせながら、宴たけなわになっても嬉々として調理をしていた。


 ルーズなようで、微妙にバランスの取れている氷室カンパニーではあった。




※ この章の主な登場人物


大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子

緒方おがた 未来みく     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女

姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任

扶桑 道隆             扶桑幕府将軍

本多ほんだ 兵二へいじ    将軍付小姓、彦と中学同窓

胡蝶                小姓頭

児玉元帥              地球に帰還してからは越萌マイ

森ノ宮親王

ヨイチ               児玉元帥の副官

マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)

アルルカン             太陽系一の賞金首

氷室                西ノ島 氷室カンパニー社長(部下=シゲ、ハナ、ニッパチ)


 ※ 事項


扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ

グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略

扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信


 

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