表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
銀河太平記   作者: 大橋むつお
71/409

059『恩智の社屋』

銀河太平記


059『恩智の社屋』 越萌マイ(児玉元帥)   





 歴史的保存地区という訳でもないのだろうが、時間が停まったような町だ。


 山腹には今どきのパルス変電所があるのだが、そこから近鉄の駅に至るまでの緩い斜面には、この二百年の時の流れを感じさせない街並みが広がっている。


 街並みと書くと『街』になるのだが『町』と表現した方がいい規模と佇まいだ。


 信じがたいが、町の道路には電柱が立っている。パルス波で送られる電気は電柱や電線を必要とはしない。


 それを、わざわざ変電所から電柱を介して電気を街に供給しているのだ。


 さすがに町を走る車はパルス車なのだが、時々装輪車や電動自転車を見かける。


 

 斜面が屹立して山肌になろうかというところに、小高い丘がある。


 恩智城址公園。


 名前の通り、1500年前の南北朝のころに恩智城があった名残の公園だ。


 大阪平野を臨む西側に石段があって、登ったところに城跡らしからぬレンガの二本柱が立っている。


 明治初年に学制が布かれたころに城跡に建てられた小学校の門柱の跡だそうである。


 公園のいたるところにクスノキが佇立しているのだが、公園のなかほどにひと際大きな一木が聳え……



「回想録?」



 口をωにしてメイが覗き込む。


「あ、ごめん。ついね(*´ω`)」


 もう越萌マイになっているのだから、回想録もヘチマもないんだけど、根っこは満州戦争以来の老兵なので、つい感じたままを仮想デスクトップに打ち込んでしまう。


 よし!


 デスクトップを消して車を降りる。


 シマイルカンパニーのロゴが入った車は、そのままオートで、わたしたちの前を進んで角を曲がる。


「こっちが社屋よ」


 角を曲がると、ちょうど車がガレージに入るところで、ガレージの横には時代劇のセットかと思うような小振りな長屋門がある。


 門の脇には『越萌こすも』の表札と『シマイルカンパニー』の看板が掛けられている。


「看板のロゴは、最後まで悩んでね……」


 メイ(コスモス)が指を動かすとカタカナの社名が『越萌姉妹社』に変わった。


「気持ちは分かるけど、ちょっと読みにくいかなあ、『サザエさん』の出版社的だし……」


「こんなのは、どう?」


 漢字とカタカナの社名が二秒間隔で変わるようになる。


「目がチカチカするかも」


「じゃ、取りあえずカタカナで」


「あ、フォントが変わった」


「ああ、いろいろ試して消去してないもんだから(^_^;)」


 アハハハ


 陽気な美人姉妹らしくコロコロ笑って門を潜る。


「三百年は経ってる郷士屋敷なんだって、セットみたいっしょ」


「うん、歴史的建造物とかに指定されたりしてないの? そういうの厄介だよ」


「ううん、まんま残ってるのは門と塀の一部だけで、あとはレプリカ」


「わお、高くついたでしょ(゜Д゜)」


「会長の趣味だから」


「会長?」


「マーク船長」


「なるへそぉ……お、畳が新しい?」


 二間間口の玄関に入ると、ここ何年も嗅いだことのないイグサの香りがした。


「和室が四つあるから、しめて四十畳ほど畳がある」


「うう、畳に座って一杯やりたい!」


「ここは仕事場です、お姉ちゃん」


「でも、住居も兼ねてんでしょ?」


「フフ、すっかり越萌マイね」


「アハハ」


 元々は技研の敷島博士会心のスキルロボットJQだ、化けるテクはハンパではない。


「オフィスの方は……」


「お、檜の香り!」


「ちょ、お姉ちゃん!」


 ガラガラ!


 勢いよくサッシを開けると、そこは檜ぶろだ!


「おお、これは……( ゜Д゜)!」


「ひとっ風呂浴びるのは終わってから!」


「よいではないか、よいではないか(*´∀`*)」


「あ、お湯張るんじゃない! 脱いじゃあだめだって!」


「メイもいっしょにぃ」


「ちょ、元帥の人格はどこにいったんですか(#'∀'#)!?」


「そんなもん、回想録といっしょに仕舞った!」


「ちょちょ、自分で脱ぐからあ(#・◇・#)!」


  

 ちょっとリラックスしすぎてシマイルカンパニーの第一日が始まった。




※ この章の主な登場人物


大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い

穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子

緒方おがた 未来みく     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた

平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女

姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任

扶桑 道隆             扶桑幕府将軍

本多ほんだ 兵二へいじ    将軍付小姓、彦と中学同窓

胡蝶                小姓頭

児玉元帥              地球に帰還してからは越萌マイ

森ノ宮親王

ヨイチ               児玉元帥の副官

マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス・越萌メイ バルス ミナホ ポチ)

アルルカン             太陽系一の賞金首


 ※ 事項


扶桑政府     火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

カサギ      扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ

グノーシス侵略  百年前に起こった正体不明の敵、グノーシスによる侵略

扶桑通信     修学旅行期間後、ヒコが始めたブログ通信


 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ