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銀河太平記   作者: 大橋むつお
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序 : 07『JQのビタースマイル』

銀河太平記


序・07『JQのビタースマイル』  




 並の軍隊における人とロボットの比率は1:3だ。


 ロボットは優秀だが戦闘において独創性が無い。ロボットは戦闘行動や軍事行動の型を憶えているに過ぎない。それは型である以上、優れたCPやAIには読み取られてしまい、すぐに対策がたてられて勝敗が付いてしまう。むろん読みが早く深く、兵力の多い方が方が勝利する。


 CP同士の将棋を考えれば分かる。


 CPは、将棋のルールと無数の型を憶えている。型を読む早さと深さでCP同士の将棋は片が付く。


 だから、世界の軍隊は人間の参謀や指揮官を配置している。ミスを起こす可能性は高くなるが、軍の行動に不確定要因を加え、敵に予想させないためだ。


 人口が日本の十倍という漢明国は底辺の分隊長まで人間だ。


 米軍やロシア軍で小隊長クラス、我が日本軍は中隊長クラスにならなければ人間が居ない。


 三百年以上昔の敗戦が尾を引いて、いまだに軍隊は国民から忌避される風がある。


 その日本軍においても人間が師団長一人だけという編成は、このマンチュリア興隆鎮駐屯軍しか存在しない。



 日本政府は、人間を多く配置すれば漢明国を刺激しすぎると日和って、一時は駐留軍の全てをロボットだけにすることを本気で考えていた。


 ロボットは、いかに人間に近くなったとは言え道具に過ぎない。


 ロボットだけの軍隊ならば、いくら壊れても遺棄されても問題は無い。


 二百数十年前、ドイツ軍に追われた英仏軍はダンケルクから決死の撤退に成功して、40万人の英仏軍兵士は無事に救出された。


 そして、ダンケルクの海岸には数多の戦車や火砲、車両が遺棄された。遺棄された兵器を惜しむ者は皆無であった。それは単なる道具でしか無いのだから、もったいないという気持ちが起こっても、可哀想とは思われない。


 二十四世紀の今日、ロボット兵はまさに道具なのだ。仮に全滅しても日本国民の胸が痛むことは無い。国際的にも、人間がドンパチするほどの非難はしない。満州で日本製の兵器が破壊されたという認識に留まる。昔、中東戦争でトヨタのトラックが使われたと言って日本を非難する国が無かったようにな。



 政府と軍の意向を無視して、俺は満州に残った。



 駐留軍がロボットになっても、マンチュリアには多くの日本人が残っている。在留日本人たちは、駐留日本軍が完全にロボット化されることに不安と不信感を持っていた「乗員が乗っていない戦車だけを残したようなものだ」とカルチェタランで息巻く者もいた。「だから、さっさと日本に引き揚げろってことでしょ」と白けていたグランマが最後まで残っていたのも皮肉ではあるがな。


 俺が残ったのは、軍人としての矜持だ。


 日本とマンチュリアは骨抜きにされたとはいえ日マン安全保障条約が結ばれている。歴史的に日本の評判を考えるなら、やはり人間が残らなければならない。


 日本は武士道の国だ……って、恥ずかしいことを言わせるな。


「JQ、お前は、やっぱり単なるダンサーじゃないな」


「イマノ児玉サン、素敵デシタ」


「JQ、焼酎に何か入れたか?」


「愛情トリスペクトノ気持チ」


 敵の攻撃は今夜半中だと踏んでいる。司令官室で束の間の待機の相手をJQがしてくれている。敷島博士の調整がどうなっているのか、俺はつい多弁になってしまっている。CIC(戦闘指揮所)に籠って眉間にしわを寄せているのは性に合わない。カルチェタランの帰り道、三度にわたって襲撃を喰らったことから見ても、現状での敵情はほとんどブラフ、全くあてにならない。


「児玉サンハ、ロボットヲ可哀ソウニ思ッテクダサッテマス」


「JQ、おまえ、本当はグランマの全てをインストールし終えているんじゃないのか? 完璧じゃないのは、わざとじゃないかという気がするぞ」


「ドウシテデスカ?」


「ここに来るまでの戦いっぷりだ。俺も全ての戦術教範や戦闘術を熟知しているわけではないが、JQの戦いっぷりは効果的だ」


「ソウダッタデスカ?」


「三度目なんか、敵はJQの戦闘行動を解析しながら戦っていたが、すべて空振りだったぞ」


「敵ヨリモデータガ多イカラデス、JQノ戦術データハ認知シテルダケデモクロマニョン人カラノガアリマスシ、自分デ認知シテイルスペックハカタログデータニ過ギマセンシ」


「戦闘が始まったら、隙を見て逃げるがいい。思ったより敵は性急だ、状況によっては庇いきれないかもしれない」


「……ソレハ、司令ゴ自身、戦死ノ可能性ガ高イト言ウコトデスカ?」


「ああ、ここに来るまでの敵の戦いっぷりと、あとは俺の勘だ」


「心ガケテオキマス……」


 JQがビタースマイルになった。


 脳みその深いところで明滅するものがある、どうやら敵襲が近い。


 



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