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銀河太平記   作者: 大橋むつお
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032『ヤバい話』


銀河太平記


032『ヤバい話』ダッシュ   





 そこまでしなくても……


 

 マーク船長の言葉は途中で止まってしまった。


 怪しげな交易船の船長だけど、相手が宮さまとなると奥ゆかしいのか、宮さまの柳に風を思わせる風格のせいかは分からないけども、その中断が、会話の内容の重大さを感じさせる。


 四人ともダクトの真下に場所を移した。


「隠遁するんだったら田舎でしょう」


「火星なら、どこに行っても田舎だと思いますよ」


「でもね、扶桑の領域の内じゃ、いざという時に幕府に迷惑をかけてしまう」


「ザックリ言って、火星は西部劇の世界ですよ。比較的治安のいい扶桑でも、地方の町に行けば所属・国籍不明のやつらが自由にやってます。お奉行所も、その辺の力加減は分かっていて、無用の干渉はしてこない。宮様お一人、いくらでも身を忍ばせられます。火星の辺境で暮らすなら、水や空気の心配からしなくちゃなりませんよ。地方でも町なら、最低、空気と水は保証されてますから」


「ありがとう船長。でもね、やるなら中途半端はいけないと思うんだ。やっぱり……少なくても二三年は姿をくらましていたいんだ」


「しかし、なんでそこまでなさるんですか?」


「それは……」


 間が空いたと思ったら、今度は元帥が語り始めた。


「実は……謀反の兆候があるんだ」


 謀反? なんか超時代劇みたいなことを言ってる。


「クーデターですか?」


「いや、謀反だ。クーデターなら政府が倒れて、軍部なり野党なりが政権を握ってメデタシメデタシだ」


「え? どこが違うんですか? ポリティカルなことは、とんと苦手で……」


「謀反は、皇室そのものをひっくり返すことさ」


「え、皇室を!?」


 え!?


 俺たちも、ダクトの下で息が止まりそうになった。


「こないだ、靖国の前で陛下の車列を襲った奴らがいただろう」


「ヤタガラスだな」


「たぶん、悪だくみしているのはヤタガラスだけじゃないから確証はないがな」


「でも、あれは騒ぎを起こして、政府を倒すことが狙いなんだろう?」


「そうとばかりは言えんのだ、今上陛下は満州戦争の折に女性天皇を認めることになって即位された、その正閏を言い立てる勢力が出てきているんだ」


「ええ、今更か!?」


「ああ、それ以前の皇統でいけば、畏れ多いことだが森ノ宮さまだからな」


「そんなことが……」


「下手をすれば、南北朝の争乱になりかねない……そのために、殿下には、しばらく息を潜めていただく」


「アハハ、いやいや、僕は、そういうことは大の苦手なんでね、さっさ逃げちまおうって、そういうことなんだ。なに、僕が臆病なだけさ。ほとぼりが冷めたら、こっそり戻って『ボンヤリ宮様遁走記』でも書いて小銭を稼ごうと思ってる」


「ついては、火星で頃合いの隠棲地とかないだろうか、船長」


「本格的に身を隠したいと……」


「ロシア革命で、レーニンが身を隠したようなフィンランドの沼沢地のような……」


「火星に沼沢地はないからな……そうだ、扶桑の辺境に一つあることにはある……持ち主にことわらなきゃならんがな」


「どこだ?」


「カサギ、ちょっとした山だ」


「持ち主とは?」


「アルルカン」


 ダクトの下で息が止まりそうになった。


 アルルカンと言えば、太陽系を股にかけて暴れまわっていると言う賞金首の空賊。奉行所の指名手配のトップに、この十年不動の一位のポジションを確保している悪党だぞ。


「オラア! いつまで起きとる!!」


 不意を突かれてビックリした、すみれ先生が仁王立ちで、俺たちの後ろに立っていたぞ!




※ この章の主な登場人物

•大石 一 (おおいし いち)    扶桑第三高校二年、一をダッシュと呼ばれることが多い

•穴山 彦 (あなやま ひこ)    扶桑第三高校二年、 扶桑政府若年寄穴山新右衛門の息子

緒方おがた 未来みく     扶桑第三高校二年、 一の幼なじみ、祖父は扶桑政府の老中を務めていた

•平賀 照 (ひらが てる)     扶桑第三高校二年、 飛び級で高二になった十歳の天才少女

•姉崎すみれ(あねざきすみれ)    扶桑第三高校の教師、四人の担任

•児玉元帥

•森ノ宮親王

•ヨイチ               児玉元帥の副官

•マーク               ファルコンZ船長 他に乗員(コスモス バルス ミナホ ポチ)

•アルルカン             太陽系一の賞金首


 ※ 事項

•扶桑政府   火星のアルカディア平原に作られた日本の植民地、独立後は扶桑政府、あるいは扶桑幕府と呼ばれる

•カサギ    扶桑の辺境にあるアルルカンのアジトの一つ


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