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討伐は、安楽椅子で  作者: 海土竜
王宮密室殺人事件
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召喚の儀式

 儀式の間にてセフィリア姫が召喚の呪文を唱え始めた。

 窓の無い円形の石壁に囲まれた小さな部屋は、天井が暗くなって見えなくなほど高く、静かな笛の調べか歌のように聞こえる神秘の呪文が幾重にも響く。

 魔法陣の中央に姫が手を差し伸べると、そこに光の球体が現れ、その中を流れる光の螺旋が寄り集まり、やがて、人間の姿を映し出す。

 それは、王家の者のみに伝わる秘術。

 世界の危機に際して、世界各地より偉大な能力を持つ者を召喚する儀式である。

 初めに召喚されたのは、侵攻して来た魔王を討伐する力を持つ勇者ロドニアスだった。

 次に、俗世と縁を切り英知と魔法の研鑽を続けていた、隠遁の大魔術士マカカイエ・ジェストが召喚された。

 その次に、いくつもの戦場を渡り歩く生ける伝説とまで言われた常勝の傭兵王ゼイガス・ア・ルドスを召喚した。

 話に聞く、大英雄に、大賢者。

 誰も姫の召喚能力を疑う者などいない。

 そして、最後の勇者召喚で呼び出される者こそ、偉大な知恵と決断で勇者たちを導く存在であると言うのだから否応にも期待が高まる。

 どれほどの者が呼び出されるのかと。

 人影が実体化するほどに光の輪がゆっくりと狭まり、男の中へ吸い込まれて行く。

 まばゆい光が消え去ると、燭台の灯りに男の姿が照らし出される。

 詠唱を終えた姫が胸の前で手を交差させて恭しく頭を下げた。


「よくぞ、私の召喚魔法に応えてくれました。心から礼を言います、導師アンラ・クイス。私はエル・スフィア王国を治めるスフィア・アルバトス王の娘、スフィア・セフィリアです」


 紙の束を抱えた男は取り立てて特徴、戦士のような屈強さもなく、学者のような思慮深さや落ち着きもなく、ただ辺りを不安げに見渡してから、姫に吸い寄せられるように視線を向けた。


「……俺の事?」


 それが、世界を救うために呼び出された男の最初の一言であった。

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