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12.まさかの告白?!

「えっ? なんで??」

 突然映画館の前で友香が用事を思い出したと言い出した。


「ごめーん、お母さんが急用だからどうしても帰って来いって! 私から誘っといてホント悪いんだけど、せっかくここまで来たんだから、紘と二人で見ていきなよ!」

 そう言って目を丸くして驚いている紘の背中をバン!と力いっぱい叩く。


「……そんなぁ……。友香が見たいって言ったから来たのにぃ!」

 私はぷうと頬を膨らました。


「じゃ!!」

 友香は言いたいことを言い終えると、逃げるように私たちの前から走り去る。


「紘……どうする? 私と二人でなんて……嫌でしょ?」

 同じクラスの女子と二人で映画なんて、誰かに見られたらデートと間違えられちゃうもんね。


「別に……俺はいいけど。夏帆ちゃんが嫌じゃなければ」

 全く私と目を合わせない紘は、本当に嫌じゃないのかな?


「私も嫌ではないけど……」

 上映予定を見上げながら、結構見たかったものがたくさんあった。

 せっかく来たことだし……紘とは紛れもない友達だし。


「せっかくだから、見て行こうか!」

 私は気持ちを切り替えて紘を見上げた。


「あぁ!」

 嬉しそうな笑顔で私を見ている。


「紘見たいのある?私はホラーはちょっと嫌かな……」

 お化けとか幽霊とかが大嫌いな私はそれだけは……とお願いする。


「もちろん、俺はなんでもいいよ?」

 紘のそのお言葉に甘えて、ずっと見たかった洋画のラブコメを選ばせてもらった。


「本当にいい?」

 男の子はこういうのってあんまり見ないかもな……

 券売機の前に来ると心配になってもう一度確認した。


「俺は夏帆が見たいのを一緒に見たい」


 ……どういう……意味??

 前に友香が言ってた、紘は私が好きかもしれない……そんな話を思い出す。


 まさか……ね?


「ジュースとポップコーン買ってこうぜ!!」

 急に元気になった紘の背中を追いながら、列に並ぶ。


「わたし、飲み物だけでいいや。まだバイトとかしてないし、今月厳しいからさ」

 正直困らない額は朝陽さんがちゃんと私にお小遣いとして渡してくれるんだけど、やっぱり入籍もしてないただの居候である今、やっぱり自分のお小遣いぐらい自分で稼がなきゃ……そんな気持ちになっていた。


「何言ってんだよ? こういうのは男が出すもんだろ? 全部俺が奢るよ」

 そんな紘の表情はとっても優しくて、ちょっとだけ男らしく見えた。


「大丈夫! そのくらい私出せるから」

 暫く奢る奢らないの押し問答が続いたが、あまりにも紘が必死になって『頼むから奢らせてくれ!』と頭を下げるから、その勢いに押されてお言葉に甘えようかと思い直す。


「なんか、気を遣わせちゃってごめんね」

 男気溢れる紘の振る舞いに少し感動しながら、前を歩く彼についていく。


(男の子とこんな風に映画見るのなんて……初めてだな)

 そう、ふと思う。


 席について隣にいる紘の横顔を改めて見つめると、意外と整っている顔なんだなぁと思った。


「ねぇ、紘って中学の時モテたでしょ??」

 今なんで彼女がいないのか謎なくらい、背も高いし、清潔感あるし……

 普通にモテる部類に入るスペックがあるのに……


「えっ!? なんだよ、急に……」

 急に真っ赤な顔をして頭を掻く紘がなんだか可愛い。


「だってさ、普通にかっこいいじゃん?」

 フフフと笑うと、急に私をじっと見つめてくる。


「なぁ、夏帆……」

 そう紘が何か言いかけたとたん、照明が落ち、映像が流れ始める。


「ほら、始まるよ!!」

 話の続きは後で聞こうと、私は会話を遮った。



 笑いあり、涙ありの充実した内容に大満足の私。

 紘はずっと何か言いたそうに私の横をチラチラ見ながら歩いているけど、こっちから問いかけても変にはぐらかしてくる。


「……ねぇ、どうしたの? 映画、つまんなかった??」

 動きのおかしい紘を見かねて聞いてみた。


「いや……面白かった。面白かった……けど……」

 目を合わせない紘。


「……けど……?」

 背中を押すように聞いてみる。



「夏帆のことが好きだ!!」


 …………え?

 えぇ?!!!



 突然の告白に固まって動けなくなった。


 確かに、ポップコーンを取る手が何度も紘の手と当たって……その度にぎこちない空気が流れて……

 今振り返れば、いくつもフラグは立っていた気がする……


 でも、まさか……まさかって思ってたし……

 あぁ、なんで『かっこいい』なんて言っちゃったんだろう……

 つい思ってることすぐ口に出ちゃうんだよな……私。


 はぁ……どうしよう……

 結婚してないけど結婚してることになってて、でも居候で……相手は担任の先生で……その先生が私は好きで……


 あぁ、こんな事情話したって理解できるわけないし、そもそも言えるわけもないっっ!!


(……どうしよう……)

 どうお断りしようか、俯き考え出す私。


「あ……あの……」

 思い切って『好きな人がいるんです!』とだけシンプルに言おう!

 突っ込まれたら、誤魔化して逃げるしかない!!

 そう決心した時だった。


「あ、ごめん! 今の忘れて!! 夏帆とは、ずっと仲良くいたいからさ」

 一呼吸も置かずに一気に言い放つ。


「えっ? どういう事??」

 意味が分からなくて聞き返す。


「好きなんだけど……これでせっかくの友達関係が壊れるくらいならなかったことにして欲しいんだ」

 そんな……私もう聞いちゃったんだよ?

 紘の告白……


「夏帆の顔に、付き合えないって書いてあるのがわかったから、俺は別にそれでもいい。でもこれで、完全に夏帆との関係が切れちゃう方がもっと嫌なんだ」


 分かる……気はする、そういう気持ち。

 でも、実際今までみたいに友達としてつきあえるんだろうか……?


「もし、夏帆の気持ちがほんの少しでも俺に傾いたら……その時は前向きに考えて欲しいんだ。ごめんな、急に困らせるようなこと言って」

 ハハ……と力なく笑う紘に今私がかけられる言葉がみつけられない。


「……ううん。なんか、気を遣わせちゃって、ごめんね。でもせっかく紘とは仲良くなれたんだし……これからも友達としてだけど、よろしくね」

 これが精一杯だった。



 家まで送るっていってくれたけど、とてもそれは頼めない。

 映画館を出て、すぐに私たちは別れた。


 ぼーっとバスに乗りながら、怒涛のような一日を振り返る。

 朝陽さんのボタンを付けて幸せを感じたり、出来たばっかりの友達に告白されたり……


「はぁ……、なんだか疲れた……」


 バスから降りて見上げた『我が家』に一刻も早く帰りたい。

 そう思って、いつの間にか駆け足になっていた……


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