揺れだした心
翌朝、いつものように目覚めると
野村さんからメールが入っていた。
昨日、家まで送ってもらった時に
アドレスを交換したんだった。
野村恵美:
(おはよー(●^o^●)
生身の女の味はどうだった?
缶コーヒーより甘かったかい?(笑))
なんか、、、エロい・・・
煌太:
(昨日は送ってもらってありがとう(*^▽^)/★*☆♪
職場とは違う雰囲気で、本当の野村さんの
魅力を見た気がします)
遅番で、昼頃職場に入ると
野村さんはいつもの感じで
チラっと僕を見ただけで、黙々と仕事をしていた。
僕の方は変に意識してしまい
近くに寄るだけでドキドキする
たった一度、ドライブして、
アドレスを交換しただけなのに、こんなに意識するなんて
これが生身の女性の魅力なの?
文字デートでは味わえない感覚…
こういうのも、いいかな?
久しぶりに、青春してるな~って感じ
仕事帰りの電車の中、
もう夜も遅い時間とあって、乗客はまばらだ。
サイトを開こうとすると野村さんからメールが入った。
野村恵美:
(煌太、お疲れさま~(≧∇≦)
今日はなんか、ぎこちなかったね~(笑)
もしかして、私のこと意識しちゃったかな~?
大丈夫よ~、私は煌太しか見てないから…
ナンテね♪───
じゃ、また明日ね~(⌒0⌒)/~~)
いきなり呼び捨て・・・
僕……からかわれてるのかな?
どうなんだろ?
女って、さっぱり分からない・・・
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「ねえ~? 人は死んだらどうなるの?」
9月になり、先週からまた病院に戻ったゆう。は
巡回してきた看護士の加瀬弘美に聞いた。
「どうしたの~? 今日は?」
「私…もう長くないみたい…」
「何言ってるの! 頑張らなくちゃダメじゃない!
サイトの彼氏に会うんでしょ!」
「ううん…」
「私はもう…」
「きっと合う薬が見付かるわよ」
看護士の加瀬も
さすがに元気づける言葉が見つからない…
たしかに、この2~3日体調が悪い。
抗癌剤も効いてないし、
ましてや膵臓癌は進行も早い。
「もうそろそろかな…」
「私に残された時間も」
「さっ、明日もあるんだから
今日はお休みなさい」
看護士の加瀬は居たたまれなくて
電気を消して病室を出て行くしかなかった。
「死にたくない…」
深夜、
また腰の痛みに襲われた
今までに無い痛みだった────