2話 はろー・にゅーわーるど
文章を少し追加しました。
3秒でわかる前回のあらすじ
剣を抜いた。
気が付くと、俺は真っ白い空間にいた。床も壁も天井も、全てがこの世のものとは思えないほど白い。影もなく、どこまでが壁でどこまでが床か分からない。
そんな白の空間の中に、目の前にひとつ異質なものが存在していた。白とは正反対の漆黒。それは空間の中にぽっかりと空いた穴のようだった。
特に見るものもなく、俺はその漆黒を見つめる。
すると、その漆黒から声が聞こえてきた。
「壊せ…殺せ…。この世界に蔓延る害虫を滅ぼすのだ」
腹に響くような低い声。どうやらこの漆黒は何かの影のようだ。
俺はその声に質問を返す。
「滅ぼす?害虫ってなんだよ?Gか?てか誰だあんた」
「我は世界の秩序を保つ者だ。害虫よ」
「は?害虫?俺が?つかなんだよ世界の秩序を保つ者って」
影は続ける。
「そうだ。お前ら人間がこの世界の害虫だ。世界を食い潰す諸悪の根源。それがお前ら人間なのだ」
「ちょっと何言ってるか分からない」
「なっ!?貴様何も考えずに即答するな!!というか、なぜ我の声を聞いて平然としている!?普通ならば我の力に押し潰されて人格が崩壊するはず…!!」
いやほんと何言ってんだコイツは。なに?力に押し潰されて人格が崩壊とか。意味わからん。
「なんかうぜぇなぁコイツ…」
思わず俺は小さく呟いた。それも仕方がないだろう。なにせ言葉の端々から厨二臭さが滲み出ているのだ。一人称我だぞ?ないわー。マジでないわー。もうね、なしよりのなしよりもないと思う。正直言って御退場願いたい。
ガシャンッ!!
俺がそう思った瞬間、床から蒼い鎖が飛び出してきて影に絡みついた。
「うぉっ!?」
「な、なんだこれは!?動けぬぞ!?」
「知らんわ!!俺も驚いてんだよ!!」
俺と影は思わず驚きの声を上げた。
そしてさらに変化は続く。影の下の空間に、ぽっかりと穴が開いた。それはまるでブラックホールのようだった。
ほんとに何なんだろうこの謎空間は。
すると影は何か思い出したのか、声を荒らげた。
「ま、まさか、貴様⿴⿻⿸かッ!?」
影の声は1部聞こえなかった。いや、聞こえなかったと言うよりも俺の知識になかったから聞き取れなかったのだろうか。とにかく、人間には発音出来ないような意味不明な響きだった。
「な、何て?」
俺は何と言ったのか気になって聞き返した。しかし、影は俺の疑問に答えない。
「ならばッ!!」
影がそう叫んだ途端、影の周りに何か黒いものが集まりだした。それはまるでゲームなどで必殺技を出す前の溜めのように見えて。俺はかつてないほどの恐怖を感じた。身体中の毛が逆立つ。
しかし、影の攻撃は失敗に終わった。
白い空間にまたもや変化が起こったのだ。何もないはずの空間から、突如として人一人分くらいの光が現れ、影に纏わりついた。
「グハッ!?な、何なんだこれは!?…や、やめろッ!!やめるのだッ!!」
そして身動きを完全に封じられた影は、ブラックホールに飲み込まれて行った。
残された俺は訳が分からなくなり、思わず叫ぶ。
「な、なに?何なのこの流れ!?俺の情報処理能力を軽く上回ってるんだけど!?一体何が起こってんの!?」
勿論何も声は返って来ない。
人間は一人でいると途端に弱くなる。それは俺も同じだった。頭の中を不安に埋め尽くされ、不安は恐怖へと変って行く。
すると、さっきの謎の光がまた現れた。影の時のように、俺も葬られるのではないだろうかという考えが無意識に浮かんでくる。俺は死への恐怖で震えながら後ずさった。
「や、やめろ!!」
しかし、光は俺をどうにもしなかった。俺を慰めるかのように、包み込んだだけ。
僅かに温もりのあるその感触に、俺は安堵した。どこかで感じたことのある温もりだった。まるで家に帰って来たかのような安心感を覚えた。
そしてそのまま、俺の意識はゆっくりと沈んでいった。
♢
「……!!…ぇ!!」
誰かの声がする。そして身体を揺さぶられる感覚。
「ねぇ!!大丈夫!?しっかりして!!」
俺はゆっくりと目を開けた。すると目の前あったのは、いつもの幼馴染みの顔だった。
俺は寝惚けたまま声を返した。
「なんだ、光か。」
しかし、光は何言ってんのこいつとでも言うような顔をする。
「はぁ?ヒカル?何寝ぼけてんのシン。私はチクーロでしょ?」
「は?お前こそ何言ってんだ?俺の名前は辰巳だぞ」
俺は違和感を覚えながらも、のっそりと立ち上がった。
見渡すと、辺りの風景は全く違うものになっていた。荘厳な神殿のような場所に、俺は立っていたのだ。所々崩れているところがあるが、そこから光が差し込み逆に神聖な雰囲気を醸し出している。先程の洞穴の姿は見る影もない。
この神殿のような場所には、俺と光(チクーロ?)の他にも何人か人が立っていた。神殿の雰囲気に合わない神主のような格好をした人が1人。スーツのようなものを来た人が2人。スーツの人はどちらも男で、60代くらいと20代くらい。神主の人は80代くらいのお爺さんだった。
そのうちの20代のスーツの人が近づいて来て俺の肩をガシッと掴んだ。興奮した口調で話しかけてくる。
「す、凄いじゃないかニーベルグ!!聖剣バルムンクを抜くなんて!!英雄ジークフリードが刺した後、1度も抜けたことがなかったってのに!!」
「は、はぁ」
俺は勢いに押されて小さく答えることしかできなかった。これ、多分俺に話しかけてるんだよなぁ…。俺の苗字、冰彗なんだけど。
続けて60代のスーツの人も話しかけてくる。
「その通りだニーベルグ。君はこの世界の歴史上、唯一英雄に並んだんだ。もっと誇るべきだよ」
「せ、世界って…」
何言ってんだこの人?この歳で厨二病とか救いようがないぞ。てか相変わらず名前間違えられたままだし。
「なんてことだ…。何故私の代でこんなイレギュラーが…。どんな対応をすればいいんだ…」
神主の人は頭を抱えて蹲っていた。ストレスを溜め込んでそうだ。ハゲないことを祈る。
俺は状況が飲み込めず、棒立ちしていた。さっきの夢といい、訳の分からないことばっかりだ。
「すみません、コイツ借りていいですか?」
「ん?あ、あぁ…」
「少しなら別に良いが…」
すると何を思ったか光(チクーロ?)は2人に断りを入れ、俺の手を引っ張った。
スーツの2人は唐突に言葉をかけられ、思わず同意する。
「ほら、ちょっとこっち来なさい」
「お、おう」
有無を言わさぬ口調で言われ、俺も同意するしかなかった。
俺は光(チクーロ?)と一緒に神殿の部屋を出て行った。俺が握った手には、バドミントンをやっているなら必ずつくはずのマメがなく、柔らかくスベスベとしていた。
~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・~・
同時刻。
とある洞穴でソレは目を覚ました。
8時くらいから降り始めた雨によって用水路は増水し、洞穴の中に流れ込んでいる。
体に引っかかっているシャトルを手で払いのけ、ソレはゆっくりと起き上がる。
雨は段々と強まり、豪雨となって滝のように降り注ぐ。空には雷鳴が轟いた。
どうやら嵐になりそうだ。
何故チクーロという訳の分からない名前にしたのか…。答えは、Google翻訳のギリシャ語をやって見れば分かります。さぁ、日本語で「暗黒」と打ち込んでみましょう!!(適当かよ…)
ものすごく遅れてしまい申し訳ありません!!先の展開を考えると気が滅入ってしまいました…。
でも、ラノベの単行本10冊や150話程度のネット小説3個くらい読んでいて思ったんです。思ったようにやればいいと。
下手の考え休むに似たり。変に考えるのは辞めにしました。次からはもっと早く登校できるよう尽力する所存であります!!
誤字や文法ミス、ストーリー自体に対するご意見等ございましたらコメントしていただけると助かります。感想もお待ちしておりますのでどしどしコメントお願いします!!