反省会(ルシフェル・ロゼ×エルディ)
R15です。
念願を達成したのはいいが素直に喜べない可哀想なエルディです。
「それで?何でこんな所で一人寂しく酒飲んでるんだ?」
ある日の夜。ルシフェルは珍しく酒場にいるルディを見かけ声をかけた。
「ロゼは酒を飲まないからな、と、いうか飲ませるつもりも無いが」
ロゼはからみ酒なので危ない。絶対飲ませたくないエルディである。
「店主俺も同じのくれ。で?いじけてんのか?」
「・・・何がだ」
にやにや笑っているルシフェルに無表情に返事を返す。相変わらずの愛想のなさである。
「最近忙しくてロゼとイチャイチャ出来ないだろ?そういやどうよ?いい加減やった?」
ルシフェルのあからさまな言いようにルディは眉を顰めた。しかしルシフェルは苦笑いになり少し真剣な顔をした。
「そういうのはさっさと済ましといたほうがいいぞ?長引く程後が大変になる。特にお前は」
「?どういう事だ?」
「まぁ今まで殆どを人間として暮らしてきたから理解しろというのも難しいかも知れないが。言ったろ?魔人は伴侶に対する想いが強くなりすぎるって」
確かに本人にも自覚はあるので素直に頷いた。
ルシフェルは声量を少し落としてエルディに忠告する。
「あまり我慢するとその反動がくるぞ?実際その場面になった時自制が効かなくなる」
「今までそんな事は無かったが?」
「だから、それはロゼ以外だったからだ。お前多分自分でも驚くと思うぞ。まぁ今言ってもわからんか」
ルシフェルはガシガシと頭をかいて出された酒を飲んだ。
「ロゼにも負担がかかるし、そうなった時、後で後悔するのはお前だからな。そんなお前にこれをやろう」
ルシフェルは小さな小瓶をエルディに渡した。中に液体が入っている。目で何かと尋ねるとルシフェルはまた酒をあおった。
「避妊薬だ。どうしても無理そうなら使え」
「は?何が無理なんだ?」
「はっきり口にした方がいいか?今子供が出来るのは困るだろ?」
あ。コイツ殴ろうかな。
エルディはゆっくり立ち上がろうとした。しかしルシフェルは真剣な顔をした。
「いや、冗談じゃなく。魔人の夫婦はすぐに子供が出来る。その欲求が強いんだよ。子供が出来ると大分落ち着くはずだが・・・しばらくは無理だろ?欲求に抗えなくなったら使え」
そんな、思春期の子供ではあるまいしエルディはいい大人である。そもそもエルディは今までの経験上その行為に対して我を無くしたことなどない。どちらかと言えば淡白な方だと思う。
「人生の先輩の言うことは聞いておけよ?いつそんな事態に陥いるか分からないぞ?これは一応持っておけ」
「・・・・そんな日は当分来ないと思うが?」
ロゼは歳は取らないがもうすぐ18歳くらいだ。
女性の成人を迎える。ロゼが了承してくれるならいいタイミングではあるが、拗らせているのもあり中々機会が訪れない。エルディは半端諦めている。
「そう思って油断してると痛い目みるぞ」
それに適当に相槌を打ってエルディはとりあえず引き下がらないだろうルシフェルから瓶を受け取った。
そして、そう時間も立たないうちにルシフェルの言う事態はやってきた。
ある日ステラ達が請け負った依頼を代わりに引き継ぐことになりロゼと二人で出かける事になった。
グリフォンという鳥の羽根を回収するのだがそれが中々見つからない鳥である。探すのに数日はかかると見越してしっかり寝泊まり出来る場所も用意してあった。
「早く見つかるといいけど。今の時期だと難しいかもね」
ロゼは何箇所かに罠を仕掛け崖から降りた。
ヒラリと降りてくるロゼを受け止めるとロゼは嬉しそうに笑った。
(うっ!)
思わず抱きしめそうになってエルディは我慢した。
ロゼはエルディがそういう事をすると何故か、怖がる。
「今日はこれくらいにして明日また来ましょう。これで駄目ならまた別の方法を考えるわ」
ロゼは地面に降りるとエルディの手を握った。二人きりなので積極的である。エルディもその手を握り返した。
「しかし、何故ステラ達はお前にこの仕事を?確かに難しい内容だが、お前に頼まなくても他に頼む相手がいたのでは?」
ロゼ自身何か得をする依頼でもない。ロゼは少し困った顔をしてから素直に事情を説明した。
「気を利かせくれたのよ。最近私とエルディが二人でゆっくり出来てないからって。心配させちゃったみたい」
それでエルディはやっと納得した。少し赤くなるロゼにエルディは揶揄い半分で尋ねてみた。
「では期待に応えなくてはな?今日ぐらい一緒寝るか?」
てっきり怒り出すかと思っていたエルディは黙って頷いたロゼを見て内心非常に狼狽した。
ロゼが赤くなった顔でエルディを見上げてくる。
エルディの頭の中で警報がけたたましく鳴った気がした。
「いや、すまん冗談だ」
エルディは思わずそう言ってしまった。
(俺は何故あんな事を・・・・・・)
今エルディは空き家の部屋で寝る準備をしている。
あれからロゼは不機嫌なままである。
それはそうだ。ロゼだってかなり勇気を出したに違いない。それを何故かエルディが断ってしまったのだ。
(ルシフェルとあんな会話をした後だったから余計に警戒してしまったのか。あれはしばらく治らんだろうな)
あれからロゼは目も合わせてくれない。エルディも自分に非がある事が分かっているので、甘んじて受けている。
エルディは深く溜息をついた。もう寝ようかと思っていると部屋のドアが勢いよく開いた。
「もう寝るの?」
若干怒気を含んだロゼの声がエルディの耳に入ってくる。
エルディは身体を起こすとベッドに腰掛けた。
「そうだな。そうしようかと思っていたが?」
これは機嫌を直す事が出来るかも知れないとロゼの返事を待っているとロゼは思いもよらない事を口にした。
「確かに私はエルディと比べたら大分子供だと思うし、こういう事に慣れてはないと思うけど、だからっていつまでも子供扱いしないでほしい」
エルディにそのつもりは無かったがロゼはエルディに手加減されていることをそう捉えていたらしい。
エルディは苦笑いした。
「子供扱いなど、していない」
エルディの表情を見てロゼはうっと一歩背後へ下がった。
しかし気をとりなおしてエルディの前まで来るとその勢いのままエルディを跨いでその上に座った。そのまま首に手を回す。
「じゃ、じゃあ証明して!今日は一緒に寝ましょう?」
「ああ、構わない」
ここまでされて断ったら流石に嫌われてしまうだろう。
エルディは自分の警報を無視する事にした。
彼女の柔らかい唇を味わって舌を深くさし入れる。
ロゼもそれに応えてくれる。キスは何度もしているのでロゼも抵抗なく受け入れてくれる。
素早く彼女の服の紐を解いて脱がせていくと見た事が無かった服の下の肌が見えてエルディの心はざわつきだした。
「はぁ・・・ルディ」
息継ぎの間のロゼの声がそれに拍車をかけた。
身体が凄く熱い。エルディは自分が着ている上着を脱いで放りだした。こうやって見てみるとロゼの身体はとても綺麗だった。胸の形も良く腰も程良くくびれている。エルディは下着姿になったロゼをベッドに寝かせて覆い被さる。エルディがロゼの下着に手をかけるとここでロゼから間の悪い要求があった。
「あ、エルディ。明かりを消して・・・」
しかし部屋はそんなに明るくない。
ロウソクだけなのでこれを消したら真っ暗になってしまう。全く見えないのは嫌だなとエルディは思った。
「そんなに明るくはないが?」
「で、でも私男の人に裸を見られるのは初めてで・・・凄く恥ずかしいのだけど?」
ロゼの言葉にエルディは思考が停止した。初めて?
「・・・・・・ロゼ、変な事を聞くが今まで経験が無いのか?」
「え?うん」
エルディは何かにガツンと頭を殴られたぐらいの衝撃を受けた。よくよく考えてみれば分かりそうな物なのに全くそんな考えにならなかった自分自身に驚いた。あれだけ男性にモテるロゼが今まで全く誰とも付き合う事なくいたなど思いもしなかったのだ。しかも彼女は冒険者で出会いも多い筈なのに。・・・・・・・自分が初めての相手。
「・・・・・ロゼ、大丈夫だ。今でもそんなに見えてない」
「え?」
急に声音の変わったエルディにロゼはポカンと目を向けた。目の前でエルディがロゼの足首を持ち上げてロゼの形のいい細い足にキスしている。その眼が酷く熱を持っていた。
「全部俺に任せてくれればいい。安心しろお前が辛く無いようにする」
ロゼの敏感な部分を撫でられてロゼはびくりと身体を震わせた。
「あ、あの、手加減を・・・」
「分かってる。痛くはしない」
初心者のロゼはその意味を分からないまま頷いた。結果とんでもない目にあう事になった。
****
「おう。何やってんだ一人で。ロゼはどうした?」
ある日の朝。ルシフェルはエルディが一人食堂にいる所を見かけまた声をかけた。
「そういや昨日帰ってきたんだろ?依頼は無事終わったのか?」
「ああ」
エルディの声に元気が無い。ルシフェルは向かい側に座ると首を傾げた。
「なんだ?ロゼと喧嘩でもしたのか?」
「依頼は結局俺一人で片付けた。ロゼが動けなくなったから」
そう言うとエルディは片手で自分の目元を覆った。
ルシフェルはその様子に只事ではない何かを感じとった。
「・・・・・まさか。早速やらかしちまったか?」
「もっとお前の言う事に真剣に耳を傾けておけばよかった」
そう。エルディはやらかした。
ロゼが初めてだと分かった時エルディの鉄壁だった理性は崩壊した。初心の彼女を何度も何度も追い上げて優しく責め続けそんな彼女に自分の欲望を押し込んだ。
「俺は獣だ。人じゃない」
「あーまぁそんな落ち込むな。ロゼは怒ったのか?」
「・・・怒りはしないが。怯えてた」
そりゃそうだ。
ルシフェルは気がかりだったことを聞いてみた。
「で?耐えられたのか?」
「何とか。だがそのせいでとんでもなく長くなった」
欲求がおさまらなかったのである。
しかもその頃には初心者のロゼも気持ちよくなり始めてしまい益々火がついてしまった。
「一年はやはり長かったか。魔人にしてはお前はかなり理性的な方だからな。その反動が出たな」
「しかも、一度してしまったせいで今度は我慢するのがかなり辛い。だから距離を置いている」
それで一人でいるのか。ルシフェルは呆れた。
「アホ、そこで離れるから悪化する。もうずっとくっついてろ。その方が気持ちが安定する。後ちゃんとロゼに事情を説明しろ。あいつは話せば分かってくれる」
「どうにかならないのか。これは」
エルディは本気で悩んでしまう。
しかしこれは全ての魔人が抱える問題であった。
基本魔人は皆一途なのでそこまで問題が悪化する事は無い。普通に惹かれ合い結婚し子供ができるとお互い落ち着く。しかしそのサイクルが崩れた時問題が発覚するのだ。
「種族特有の性質だからな。やはり異種族同士だと難しい。一番の解決方法があるとすれば子供を作るしかない」
「子供・・・・」
「まぁ。難しいわな」
ロゼはこの世界を救わねばならない。それに果たして今のロゼとエルディに子供が出来るかは謎である。二人はいわゆる人とは呼べない者になっている。
「で?何回ぐらいしたんだ?結局」
下世話な話しに戻したルシフェルにエルディは疲れた顔で知りたいのか?という顔をした。
その回数を聞いてルシフェルは顔を引きつらせた。
「そりゃあ。猛反省もするわな」
ルシフェルは憐れむ顔でエルディの肩を叩いた。
エルディは力なくうなだれる。
果たして次こんな機会がやってくるのか。
エルディは言い返す気力もなく手を付けられていない朝食をルシフェルに差し出すのであった。