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カスタモニカにて(ロゼ、リュカ、ゼイル、エルディ)

リュカ達と再会してしばらくたってからのやり取りです。


ある日の昼下がり。

ロゼはカスタモニカの入り口をくぐった。


「お久しぶりですねロゼ。約束のものは出来ていますよ」


この店の店主リュカは美しい顔面で微笑みながらロゼを迎えた。彼はロゼと同じく装飾技師である。彼は今ラーズレイで店をかまえている。


「無理言って悪かったわね。こちらは貴方に頼まれたものよ確認してもらえる?」


ロゼはリュカに物を渡す。

ロゼは冒険者で各地に旅に出ている為、中々手に入らない素材を手に入れる事が出来る。大体二人のやりとりは物々交換である。


「そういえば今日はゼイルがいないわね?いつも貴方に引っ付いているのに。珍しい」


ゼイルはリュカはの補佐兼護衛である。

リュカから離れることはあまりない。


「貴方が来る事を知って貴方を迎えに行きました。入れ違いになったのではないでしょうか?」


ロゼはそれを聞いてジト目でリュカを見た。絶対わざと入れ違いになるようリュカが操作したに違いない。


「リュカ。あまりゼイルを振り回して遊んでると本気で嫌われてしまうわよ?」


ロゼの忠告にリュカは笑顔を作る。人の話を聞く気は無いらしい。


「ゼイルはロゼがお気に入りですからね。ほどほどにしておきますよ」


ロゼはそれは笑って流しリュカから受け取った中身を確認する。


「狭い範囲ですが魔力の影響を建物に与えないよう結界を作る事が出来ます。中からの声も盗聴されないようにしてありますから、人に聞かれたくない会話をする時にも役立つでしょう。部屋の四隅に置いて下さい」


ロゼがリュカに頼んだのは魔力の暴走で建物が壊れたりしないようにする結界である。これは魔力が不安定になった時とても役に立つ。


「素晴らしいわ。こんなもの作れるのは貴方ぐらいしか今の所いないでしょうね」


リュカの装飾技師としての腕はロゼを遥かに凌ぐ物である。ロゼは純粋に技師としてのリュカを尊敬している。


「満足頂けて良かったです。これで色々安心ですね?」


リュカの含みのある言い方にロゼはまたジト目になった。


「否定はしないけど肯定もしないわよ?」


否定しないんだ?とリュカは楽しそうに笑っている。ロゼは少し頬を染めた。


「ロゼは本当にエルディ一筋ですねぇ?他の男性に興味を抱いた事はないのですか?」


「何?突然。私だってそれなりにあるわよ?子供の時だけどね」


そう言いながら苦笑いした。ロゼには恋愛をする余裕など無かった。


「そうなんですか?では例えばエルディが居なかったとして純粋に貴方の好きなタイプはどんな人なんです?ガルドエルムの中でなら誰が一番好みでしたか?」


急にそんな事を聞かれてロゼは首を傾げる。いつものリュカの悪ふざけである。


「ゼイルとか私とか。変な含みは無く好ましいと思う男性はいませんでしたか?強いて言うなら誰です?」


そこに自分も含めてくる所がリュカらしい。純粋に興味があるのだろう。ロゼはしばらく考えてまぁ強いて言うならと口を開いた。


「まぁ、強いて言えば。クライスかしら?」


ミシリ。と建物が軋んだ気がしたロゼは、ん?と後ろを振り返る。何もない。気のせいか?


「確かファイズ家の若い執事ですね?何故彼なんです?」


「率直な所かしら?それに仕事もスマートにこなすし、よく気が回るのよ?一緒にいて気持ちがいいわ。私言いたい事はハッキリ言う人が好きなの」


ファイがそういうタイプだからだろう。純粋に好ましく思うのだ。


「それに粘着質に見えてそうでも無いのよね。自分が間違っていると思ったら素直に受け入れて正す事が出来る人よ。彼と一緒になる人はきっと幸せになるでしょうね」


「中々の高評価ですね?ではエルディがいなければ彼と一緒になった可能性はありましたか?」


「それは無いわ。エルディが居なければ知り合いすらしなかったもの」


ロゼは笑って否定した。それと同時に店の扉が開く。


「酷いなぁ、あんなにアプローチしたのに俺の事は掠りもしないんですね?」


振り返るとそこには荷物を抱えて戻ったゼイルと・・・。


「え、エルディ?」


その隣で無表情に佇むエルディの姿があった。


(は、嵌められた!!!)


エルディはスタスタとロゼの前まで来ると物凄く不機嫌な声を出した。


「今の話は決してクライスに言うな」


え?とロゼは首を傾げた。一体どんな場面でこんな事クライスに伝えるというのか。


「絶対に知られないよう頭から抹消しろ。そして二度と口にするな」


エルディの異様な様子に話を振ったリュカ自身もおや?と首を傾げ一拍置いてニッコリ笑った。


「なるほど・・・エルディ。貴方も気苦労が絶えませんね?私達の用事は済んだので、どうぞお持ち帰り下さい」


リュカの言葉にロゼはギョ!としてエルディを見上げた。


「私が差し上げたその装置が今すぐ役立ちそうで良かったです。ちゃんと部屋の四隅に置いて下さいね?エルディ」


「承知しました。失礼します」


エルディはロゼを担ぎ上げるとサッサと店の出入り口へ歩いて行く。ロゼは呆然と担がれたままハッと手を振るリュカを見た。


「ちょ!!リュカ!?嵌めたわね!!!」


「いい加減観念しなさい。エルディが気の毒ですよ?」


去って行く向こう側からロゼの怒りの叫びが聞こえて来る。ゼイルは笑顔で手を振り続けるリュカを呆れた目で見た。


「何です?何か言いたい事が?」


リュカは笑顔でゼイルを振り返った。

ゼイルはそんなリュカに溜息をつくと少し思案してから呆れた口調で非難した。


「こんな事しなくても、二人は大丈夫だと思いますが?そんなに不安だったんですか?」


リュカはゼイルのその言いように少し首を傾げた。珍しくゼイルがリュカに噛み付いて来ない。


「リュカって・・・本当に俺の事大好きですよね・・・」


ゼイルのそのセリフにリュカは思わず持っていた袋をボトリと落とした。ゼイルはそれを見て微かに笑うとまた深い溜息をついたのだった。




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