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ルシフェルとリュナ①

ルシフェルとリュナ二人の関係のお話。

続きものです。

「この子はリュナだ。ルシフェル、お前に暫く預ける」


ルシフェルは友人の男の紹介を聞きながら、呆然と目の前の子供を見下ろした。


(嘘だ)


彼は、その時沸き起こった自分の感情を全力で否定した。

こんな事、あっていいはずがない。


「リュナです。よろしく」


そこには薄ピンクと銀の輝く長い髪を、可愛いらしく結いあげた10歳の女の子が立っていた。

ルシフェルはこの時17歳だった。


「俺はルシフェル。よろしくな」


ルシフェルの様子に友人の男は首を傾げた。

いきなり子供のお守りを押し付けられ、断られるか非難されるのを覚悟で連れてきたのだ。


「・・・なんか悪いもんでも食ったのか?ルシフェル?」


その男の言葉にさえ、まともに反論出来ないほどルシフェルはリュナしか見えていなかった。


彼は信じられない事に彼女に会った瞬間、恋に落ちた。




「もールシフェル!散らかさないでよ!」


リュナが来て数日が経ち、彼女はすっかりルシフェルとの生活に慣れた。元々気安いルシフェルとリュナの相性は良かったが、ルシフェルはこの二人だけの生活に危機感を覚えていた。とにかく、彼女に触れたくて堪らなくなるのだ。

危ない。自分が。


「無理して片付けなくてもいいぞ?大変だろうが」


気にしないルシフェルにリュナはプンプン怒っている。

ルシフェルはなるべく彼女を見ない様にした。


「ちょっと!聞いてるの!!」


するといきなりリュナが背後からルシフェルの首に巻きついて来た。ルシフェルは自分の体温が一気に上がった事に気がついて焦った。しかもリュナの顔が、近い。


「お客様が来る場所はちゃんと片付けて!!慌てて片付けるの大変なんだから!!」


「あ、ああ。わかったよ」


(落ち着け、相手は子供だ。だからこんな事するんだ。いちいち狼狽えるな俺)


最初全力で否定していたルシフェルも日が経つにつれ自分がリュナに抱く気持ちを否定出来なくなっていった。


生まれてこれまでこんな激しい衝動を覚えたことがないからだ。ルシフェルにはこれが何なのか薄々わかっていた。だが、認めたくなかった。


そんな苦悩の日々の中、ロゼとファイがやって来た。

ルシフェルは、正直ホッとした。

彼の思惑通りリュナの関心がルシフェルからロゼ達に移りリュナがルシフェルに絡む回数がぐんと減ったのだ。

だが今度は何故かルシフェルが我慢出来なくなった。


(クソ!なんで・・・・・)


彼女が自分を見ないことが許せなかった。

彼女の関心が自分以外の者に向けられる。それがとても耐え難い。ルシフェルの中で凶暴な感情が生まれそうになり、それを抑えるのに彼はとても苦労した。


「ルシフェル。眠れないの」


ある日リュナが珍しくルシフェルに甘えてきた。

どうも怖い夢を見たらしい。ルシフェルは嬉しい気持ちを隠して彼女が寝るまでリュナの寝顔を見守った。


「・・・う、ん」


やっと寝息を立て始めたリュナの頭を優しく撫で部屋を出ようと立ち上がった時リュナの口からその名が呼ばれた。


「マギル」


ルシフェルは、かっとしてリュナを見た。

それは多分、男の名前だ。


ルシフェルは寝てるリュナに覆いかぶさると彼女の柔らかい頬に手を触れた。


(よせ!やめろ!)


「お前は俺だけ見てればいいんだよ」


ルシフェルはそのままリュナの唇に自分の唇をそっと当てた。その感触に、ルシフェルは震えた。

リュナは全く気付かず眠っている。

ルシフェルは思った。自分は、最低だと。

何故なら、ルシフェルは、リュナを、こんな成熟していない子供を、今すぐ抱きたいと思ったのだ。



「最近さぁ、なんかルシフェルの様子がおかしい気がするんだよね?」


リュナは台所でファイとジャガイモを剥きながら呟いた。それに対しての返答は。


「あ?アイツは年中様子がおかしいだろうが。問題ない」


で、あった。


「そうだけど、いや、そうじゃなくて・・・」


何故かルシフェルに避けられてる気がしてならない。しかもリュナだけである。


「もしかして、私嫌われてるのかな?」


「それはない。アイツはお前が好きだぞ?」


ファイはストレートに言ってみた。しかしストレート過ぎた。


「まぁそうだよね。家族みたいなもんだし、今更嫌いってこと無いと思うけど、なんだろ?」


ファイはそんなリュナに項垂れた。鈍すぎる。だが年が離れている為しょうがないかもしれない。まさかルシフェルが子供の自分を女として見てるなど誰が想像出来るだろうか。


「ん?なんの話し?」


二人の背後から夕飯の鳥を持ってきたロゼが話に入ってきた。


「ルシフェルが最近、よそよそしいの。なんでかな?」


「まぁ彼も一応男の人だし。私達に気を使ってるんじゃ無い?ほら思春期になると男の人が駄目になるっていうし?」


ロゼの言葉にファイとリュナは首を傾げた。


「それに、ルシフェルだってお年頃よ?彼女の一人や二人はいるでしょ?そういうの、私達に悟られたくないんじゃない?」


それにはファイが心の中で「それはない」と、突っ込んだがリュナは、間に受けた。


「え?そうなのかな?いつの間に・・・・」


リュナの様子にファイはおや?と彼女を覗き込んだ。彼女は複雑な表情をしている。ロゼは無邪気にそんなリュナをからかった。


「あら?もしかしてぇ。焼きもち?」


ファイは「あーあ」と、溜息をついた。そんなからかい方をしたらリュナの返答は決まっている。


「そんな訳ないでしょ!!別にルシフェルが誰と付き合おうと興味ないから!!」


「「あ・・・」」


リュナが叫んだ瞬間ファイとロゼは同時に入り口に立っていたルシフェルに気が付いた。そこには無表情のルシフェルが立っていた。

ファイは心の中で謝罪した。


「今日は俺、飯はいいわ。俺の帰りが遅くても先に寝てろ」


そう言い、そのまま部屋を出て行ってしまう。

リュナは、口を開いたまま固まっている。無視された事に驚いたらしい。いつものルシフェルならどんな悪口にも必ず一言物申して来る。ファイは頭を抱えた。


(これは、こじれそうだ)


ファイの勘は的中した。

この日からルシフェルの帰りが遅い日が続いたのである。

そしてそれが、さらにリュナの誤解を招く事態へ発展した。


リュナはその後、冒険者になりルシフェル達とギルドの依頼をこなしながら生活していた。

この頃すでにリュナの中でルシフェルは女癖が悪い節操なしというレッテルが貼られていた。

それでもリュナはルシフェルの事を家族だと思っていた為とても信頼はしていた。いや、そう思い込んでいた。

それが自分と彼を繋げる唯一特別なものだと思っていたからだ。


「あれ?ファイは?」


ラーズレイに帰る途中一緒に行動していたファイが突然いなくなった。ルシフェルは呆れた様子で訳を説明した。


「なんかずっと探している奴の気配がしたから探しに行くってよ。ほっとけ、もう」


もう今日中にはラーズレイにはつかない。二人はとても久しぶりに二人きりになった。


リュナは何故かとてもそわそわした。


「今日はこの辺りでもう休憩する?近道も無いし。私何か採って来るよ」


「いや、非常食がある。それより水がないか見てきてくれるか?」


「分かった!見て来るわ!」


リュナは何故かウキウキしながら走り出した。

こんな風にルシフェルと普通に話すのも本当に久しぶりなのだ。嬉しい。


リュナは中々見つからない水辺を探してどんどん奥に入って行った。そしてその奥にとても美しい水源を見つけた。


「・・・わぁ!」


底の方まで水が透き通っている。

リュナは水筒に水を入れると辺りを見回して服を脱いだ。


「もう、身体ベタベタ。少しくらい遅れてもいいよね?」


リュナは一人納得して水の中に飛び込んだ。

水の中はとても美しかった。深さも結構あるのに全然濁っていない。リュナはひとしきり泳いで景色を堪能して身体を水面から出した。そして・・・。


「お、おまっ・・・・・」


思いっきりルシフェルと目があった。


帰りの遅いリュナを心配し探しに来たルシフェルは、その水辺が大きな岩で囲まれていた為、状況を把握出来なかった。その為中まで入って来てしまったのだ。


リュナは驚いて目を瞬いた。そして、怒ることもせず苦笑いした。


「ごめん。もしかして心配して見に来た?」


その反応に、ルシフェルは絶句した。


彼女は身体に何も身に付けず生まれたままの姿を見られているのに平然としていたのだ。


「流石にもう気持ち悪くて。あ!ごめんタオルとってくれる?」


ルシフェルは彼女から目線を外すと乱暴にタオルを拾い彼女に差し出した。リュナは水面から出てタオルを身体に巻きつけた。ルシフェルは何とかその言葉をひねりだした。


「見張りも付けずこんな所で裸になるな。誰に見られるか分からないだろうが」


「大丈夫よ。ちゃんと確認したし。この辺りはルシフェルしかいなかったわ」


「その俺に見られただろうが!!」


確かに。だが、ルシフェルは家族だ。


「いや、でも。ルシフェルだし別にいいじゃない」


彼女がもし、少しでも彼の気持ちを知っていたならきっとこんな対応はしなかっただろう。


ルシフェルもリュナに気持ちが悟られないよう注意していた。だから、誰も責められない。

だが、この時ルシフェルの中で何かが、ブチリと切れ弾け飛んだ。


「・・・それは、どういう意味だ」


「え?」


リュナはいきなり二の腕を掴まれルシフェルに顎を掴まれて固まった。明らかにルシフェルが怒っているのが分かったからだ。


「俺の前なら裸になろうと何しようと無害だから気にしないって?お前の中で俺は平気で裸になれる、意識すらする必要もない、そこら辺の男達以下の存在なんだな!?」


彼の銀色の瞳が真っ直ぐリュナを睨んでいる。リュナには何故ルシフェルがこんなに怒っているのか理解出来なかった。乱暴に顔を上げさせられそのまま唇を塞がれてリュナは慌てた。こんなルシフェルは知らない。


「い・・・・や・・・」


嫌がるリュナにルシフェルは更にカッとなって彼女を地面に押し倒した。そして彼女の身体に巻いてあったタオルを強引に剥いだ。


「お前の身体に俺を刻みつけてやる。俺が本当はどんな奴なのか。もう二度とこんな態度が取れないように」


リュナは美しいルシフェルが自分に覆いかぶさって来るのをただ震えながら見ていた。

彼女が憧れていたその営みをルシフェルはその日粉々に打ち砕いた。


ルシフェルが正気に戻った時。そこには動けず涙を流すリュナと色を無くしたルシフェルがいた。


二人はその日から絶縁状態になった。


****


リュナは一人酒場で項垂れた。


あの日。何故ルシフェルがあんな事をしたのかずっと考えていた。


しかしそれをつい先日、知ってしまったのだ。


「そんな事、今更・・・」


リュナはずっとルシフェルに腹を立てていた。家族にまで手を出す最低な見境のない奴だと思い込んでいた。


いや、もしかしたら自分の事が好きだったのかもと考えなかった訳ではなかったが、その後のルシフェルの態度がその考えを否定した。ルシフェルは徹底してリュナを避けた。避けなかったのはあの日の直後、そしてその後の確認の時だけだ。


(あ・・・・・・)


それを思い出し、リュナはまたへこんだ。

そう、ルシフェルはリュナが妊娠してないか確認しに来たのだ。その時リュナは怒りに任せルシフェルに言い放った。


「してない。してたとしてもあんたの子なんて産まない」


それがどれ程ルシフェルの心を抉ったか想像すると居た堪れない。魔人にとって愛する者との子は何ものにも代え難い愛の証なのだ。


(うううううーーーーー!)


リュナは決して悪くない。

一方的にルシフェルが悪いと思う。

ルシフェルもそれをよく分かっているのだろう。

だが、あの時一番傷ついたのはやはりルシフェルだ。


「どうしよう。どうしたらいいの」


ルシフェルに避けられてもう何年も経つ。

この前久しぶりに接触してきたのはロゼがピンチの時だった。リュナはよくよく考えてみる。


「今もまだ私の事すきなのかしら」


断言できる、好きだろう。彼は魔人。一途である。

リュナは身体を起こした。


「もう!しょうがないなぁ!!」


リュナは完全に開きなおった。

元々グチグチ考えるのは性に合わない。


「私が折れるか。いつもみたいに」


そう言いながら彼女の頬は赤くなっている。

きっとルシフェルは気付いていないだろう。


「どうして私も好きだって気付かないかなぁ?」


実はリュナもルシフェルを見た瞬間彼に恋したという事に。

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