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彼女と彼と、  作者: 結記
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僕と彼女

僕(剣の公爵子息)視点

彼女は、僕に執着してる。


何かに囚われているように見えた。



先ず、僕の話をしよう。

僕は、剣の公爵子息。長男ではあるけども、側室の息子で継承権はなく、次男の正妻の息子が剣の公爵家を継ぐことになっている。

僕は、剣の才も無いけど、頭は良かったため、どちらかと言うと脳筋よりの弟を支えるため秘書官を目指すつもりで、学園で生活している。もう、継承権については、とっくの昔に決着がついている。なのに、彼女は……


彼女と出会ったのは、12歳の春。偶然だった。最悪の出会いだと今も思っている。

彼女は、盾の公爵家の一の姫。可愛らしく、大人しい子だと思った。

彼女は、弟の婚約者になる予定だった。だが、あろうことか、僕を婚約者と思い込み、好意を寄せてくるようになった。

何度も何度も、君の婚約者は弟だと言っても聞き耳を持たない。それどころか、僕には弟がいないと思い込み、さらには、僕しかしならない事を口にしては慰めの言葉を言うようになった。

第一に、僕にはちゃんと婚約者が別にいる。

伯爵家の令嬢で、真面目な女性だ。

僕は、令嬢のことを好きだったし、彼女も同じだ。学園卒業後結婚を確約していて、解除することは出来ないし、しない。


妹と仲良くなった、と聞いたときは、ありえないと思った。

妹は確かにいるけれども、第2王子の婚約者になったことを期に、王家の習わし通り王宮で暮らしている。

まだ成人してないため、たまに帰ってくることはあるけども、それは年に一度。妹の誕生日パーティーの時のささやかな時間で、そのパーティーもまだ先のこと。彼女が仲良くなる時間なんて無いはずだった。

妹に後日確認の旨を書面で届けると、挨拶はしたことはあるけども親しくはないと返ってきた。


弟は、その時にはすでに彼女の婚約を断っており、彼女が家に来ることは出来なくなる筈……だった。


ことある毎に、屋敷に訪れる彼女。

最初は笑顔で対応していた両親だけども、だんだんその対応は戸惑いを浮かべ始めた。

屋敷に来る度に、愛を告げてくる彼女。


「早く結婚しましょう?」

「愛してるわ」

「貴方と私の子供は、可愛いと思うの。楽しみね。」


怖かった。笑顔でそれを言ってくる彼女が心の底から怖かった。


彼女が来ると数時間後、盾の公爵夫人が彼女を引き取りに来る。


「申し訳ございません。きつく、言いつけるので……」


そう頭を下げる盾の公爵夫人には申し訳ないけれども、助かったといつも思っていた。


なぜ、彼女が僕に執着するのか。分からなかった。

彼女の弟が教えてくれた。


「姉は、妄想のなか生きている。

その中では、貴方は剣の公爵家の継承者で姉の婚約者。数年後に、その仲を邪魔する女が現れて、自分は婚約破棄される。それを阻止するために、結婚するのだ。と言う考え」なのだと。



ある日、恐るべき事を彼女が口にした。


「お父様がやっと許可を下さったの。私達、結婚できますわ!」


直ぐ様、盾の公爵家に連絡を取り、彼女は連れて帰られた。


「すまない。本当にすまない。娘は、修道院に送ることにする。君の前にはもう現れないだろう。」


後日、盾の公爵直々の謝罪を受け、事は終わった。

長い、彼女曰く「愛している」と言う強迫から、僕は解放された。


数年後、僕は秘書官として弟の下に付き、婚約者の伯爵令嬢と結婚した。

今では、三人の我が子に囲まれて過ごしている。


彼女がその後どうなったのか、偶然耳にした。


曰く、最終的に修道院の中でも過酷な場所に送られ、そこで石像に向かって僕の名前を紡いでは、愛を囁いているらしい。

一月の間は、身震いが止まらなかった。



ある日、いつもの日課で外出て、ランニングをしていた。

門の前に差し掛かったとき、一人の女がたっているのが見えた。


朝日が彼女を照らし出し、その顔を確認した瞬間、僕の体は固まった。


彼女、だった。


彼女は、ぶつぶつ繰り返すようになにかを言い、近づいてくる。

動くことが出来ず、僕はただその動きをスローモーションのように捕らえていた。


「アイシテルワ」


そう、彼女は言うと、僕を抱き締めるようにナイフで腹部を突き刺した。


滲んだ汗が、頬を滑り落ちた感覚がした。


事態に気づき、駆け寄ってくる大切な家族。

駆け付けた衛兵により、彼女は連れていかれた。

幸い、傷口が浅く致命傷にはならなかったが、僕は後遺症として外に出ることが出来なくなった。




外に出たら、彼女がいる。

そんな、幻覚が僕を支配した。


剣の公爵子息:長男であるが、側室の息子で継承権はない。秘書官を目指しており、伯爵令嬢の婚約者がすでにいる。盾の公爵令嬢に対して恐怖心を抱いている。


盾の公爵令嬢:彼女の弟曰く、妄想に生きている。



この国では、王家以外では、公爵家のみ側室を一人持つことが許されている。本妻に、息子が生まれた場合は、側室の子の継承権は無くなるが、将来は自分で決めれ、約束もされている。

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