私と彼
私(盾の公爵令嬢)視点
よくあるよくある展開。
私は、盾の公爵家の一の姫として生まれ、僅か7歳で婚約を結んだの。
相手は、剣の公爵家の長男。
完全なる政略結婚ではあると分かっていたけども、私は彼に一目ボレしたの。
と、同時に思い出したの。
この世界は、さる乙女ゲームに酷似していると。
婚約破棄は、勿論あったわ。
このまま成長していくと、私は彼を束縛して、彼に近づく女を虐め抜き、彼の手によって婚約破棄される……。
好きな人に近づく女を虐めてしまう心情は、分かるわ。
幸い、この世界は現実である。つまること、回避する術はあるわ。
この国では、16歳で親の許可さえあれば、結婚できるの。条件として一年は子を産めないが、新婚生活が一年も出来ると考えれば儲けもの。
ゲーム通りに世界が動くとしたら、ヒロインが現れるのは、学園に入って2年目。つまり17歳の時。それまでに、結婚できれば、離婚できないわ。なぜなら、貴族、それも公爵家だから!
日頃から彼に好意があることを示し、12歳になった頃には16になったら結婚したいと言う旨を両親、婚約者一家にほぼ毎日のように伝え、彼の妹とは、彼以上に仲良くなったわ。ちなみに、彼の妹は、彼にそっくりでとても可愛いの。自分の弟は、ふてぶてしいから、この愛らしさを見習ってもらいたいものだわ。
そんな、弟も彼にはなついてるから、そこは私の弟なだけあると思っているわ。
勿論、盾の公爵家の姫としての役割はきちんとわきまえているの。公私を混合することはないし、外では氷の令嬢、なんて言われてるらしけど、知ったこった無いわ。
そして、長年の苦労の果て、三つの条件のもと、結婚を許してもらったのよ。
一つ、学園はきちんと出て、盾の公爵家に恥じぬ成績を残すこと。
一つ、学園を出るまで、子供を作らないこと。
一つ、学園卒業までは、実家から通うこと。
が、条件。
学園は女子は3年なので、別に大丈夫。
この許可が下りたのが15歳の夏だったので、ほんとギリギリだったから、条件について文句言う暇がなかったのもあるの。
16の冬。私の誕生日パーティーと同時に、彼と結婚したわ。
正式な披露宴は、彼が学園を卒業してからになるので、身内だけの結婚式となったの。
それでも、社交界では私と彼が16歳で結婚をしたことは噂になり、一時期不名誉を浴びることになったけど、こっちは公爵家。すぐ消えたわ。身分って強いわね。
あ、結婚する前に、ちゃんと彼には了承してもらったのよ?と言うか、彼からプロポーズを貰ったの。
今まで私が好き好きって言うだけだったから、実のところ不安だったけど、『初めてあった時から好きだった。結婚してください』って
心臓が爆発しそうだったわ。
それから、 17歳になり、彼女は現れた。彼は靡かなかったけど、彼の友人が次々と堕ちていくのは、見事な手際だと思ったわ。
でも、大丈夫なの。だって、私は。私達は、
「ねぇ、貴方。愛してるわ」
そう、微笑みかけたら、彼は愛しそうに
「僕も愛してるよ。」
こんなに、あいしあっているのだから。
盾の公爵令嬢:美しく大人しい令嬢。婚約者を愛しており、いずれ来るヒロインに騙されないようにするため、結婚しようと考えている。
剣の公爵子息:剣の腕が立ち、すでに学園に通っている。
学園は、男子は15歳~20歳まで入ることができる。