⒉ 真目(2) 恐怖
時は午前八時十分。布都部南中学校では朝礼が始まる時間帯の頃であった。
「田所麻結です」
紫乃と同じクラス内にて、そこにはシンプルに名を名乗るだけの素っ気ない自己紹介をする彼女の姿があった。
紫乃と対照的な黒髪……に近しい《灰髪》に、ボブヘアーよりロングスタイルのロブヘアーと呼ばれる髪型をした少女。
「では、麻結さん。そこの空いている席が貴女の席になりますので、そちらに座って下さい」
そう言うのは、紫乃のクラス担任を務める若手女性教師ー『不知火千里』である。
麻結は言われた通り、一つだけ空いた後ろの席へと静かに座った。
すると、その席の周辺に座る一人の女子生徒が麻結に声を掛けた。
「よろしくね、麻結さん」
麻結は言葉を返さず、彼女の方をチラッと一目見ただけに終わった。
まるで自分に馴れ馴れしくしないでと言わんばかりに冷たい態度を取る麻結。
それは授業が一段落終わり、昼休みになってもその態度が変わることはなかった。
教室内で自分の席に着いたまま何処か遠くを見つめている麻結を見た紫乃は思い切って彼女に近寄り、声を掛けることにした。
「ひ、久しぶりだね………、麻結ちゃん」
「あ~っ!紫乃ちゃんってば、やっと声を掛けてくれた!慣れない環境だから、声掛けてくれるの待ってたんだよ。
もうっ!気付いていたなら、もっと早く声を掛けてくれれば良かったのに。てっきり私のこと、忘れてしまったのかと………」
「まさかっ、忘れてなんか………そうしようと思ったのだけれど、なんだか近寄り難いオーラを発していたから、なかなか声を掛けずらかったというか。あはは……」
(あれっ?私とは普通に会話してくれている。ってことは、知らない子ばかりで緊張して誰とも口を利けなかったのかな?)
なんて紫乃が思っていたのも束の間――、麻結は軽蔑の眼差しで周囲の生徒たちを見るなり、こう言った。
「やっぱり紫乃ちゃんもあんな平和ボケした奴らと一緒に連みたくないから、クラスでも孤立していたんでしょう」
「えっ?」
「だって今日、紫乃ちゃんを観察してみて思ったけど、仲の良いお友達……いなさそうだったじゃん。でも安心して、今日から私が付いているから」
「う、うん。そうだね」
この時、当時一緒にいた時には感じなかった恐怖というものを抱いていた。
「じゃあまた明日ね、紫乃ちゃん」




