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PiLLEUR DE OEiL -ピヤー ドゥ ウイユ- 〜Eye-Land GAME〜 アイランド・ゲーム  作者: ちゃいあん。
-ピヤー ドゥ ウイユ- アイランド・ゲーム2 第二部 ⒈ 目交
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⒈ 目交(5) 二人って付き合ってるの?

 そうしていつの間にか放課後を(むか)え、普段はこのタイミングで未予と一緒に目魂狩(めだまが)りに行くのだが、今日は目崎(めざき)悠人、保呂草(ほろくさ)未予に加え夢見華(ゆめみはな)も同行していた。


 未予は悠人に耳を貸すよう手招(てまね)きすると、なにやらヒソヒソと話を始めた。


「……ちょっと、あの部外者(ぶがいしゃ)をどうにかしてくれないかしら?」


「俺だってそうしたいけど、あいつとは生まれが同じでいわゆる幼馴染(おさななじみ)ってやつでさ。

 久しぶりに一緒に帰りたいってしつこくせがんでくるものだから、昔の馴染として断りずらい立場ってものがあるだろ。

 頼む、この通りだ!悪いけど、あいつを送ってからで良いかな」


大方(おおかた)、事情は分かったわ。それにしても幼馴染ねぇ。なんとも面倒くさい女が現れたものね」


「ちょっとぉ、ゆっとってばさっきからなんでこの子とばかりヒソヒソ話しているの、ねぇ?」


 彼は(あわ)てて未予との距離を離すと、華に話を合わせた。


「ああ、悪い。何か俺に聞きたいことでもあるのか?」


「さっきからずっと気になっていたんだけど、二人って付き合ってるの?」


「それは無いから」 「それは無いわ」


「でもなんだか息ぴったりって言うか……」


誤解(ごかい)だ。こいつとはなんつーか説明しづらいんだけど、と、友達ってことで理解してくれ」


「なんか良く分からないけど、とにかく二人は恋人同士ではないってことでOK?」


「OKだ」 「OKよ」


 再び声が揃う悠人と未予。


 それを誤魔化(ごまか)すかのように話を変える悠人。


「え〜っとそうそう、未予に一つ報告しておくことがあったんだ。

 なんていうか魔夜(まや)さんの目のことなんだけど、眼科医だった俺の父さんの同僚(どうりょう)で 仲の良かったって人から貰っていた連絡先を(しる)した紙がようやく見つかってさ。

 電話したところ、お客を紹介してくれたからってことで特別にその客の移植手術代をまけてやるって言ってくれたからよ。

 ひとまずやるべきことを終えたらすぐにその人が診療(しんりょう)している眼科にあいつを連れて行こうぜ」


「それは良かったわ。あの件で失ってから、ロクに学校にも行かなくなってしまったメガネには良いリハビリにもなるんじゃないかしら?」


 医療がより発展する現代において、iPS細胞を(もち)いた生身の眼球を人工的に生成する、義眼(ぎがん)に変わる新しい眼球の移植性が導入(どうにゅう)されたこの世の中。


 旧式の義眼移植で面倒だった毎日の取り外しによる洗浄作業をやる必要がなく、研究に研究を重ね更なる拒絶反応が起きない特殊な免疫(めんえき)型のiPS細胞の開発に成功したことで、治療的活躍がされた新しい眼球移植。


 まだ全国的にその技術が普及しているわけではないが、どうやらこの島にはそれが可能な環境が(ととの)っているようで、まさに目魂狩(めだまが)りに(てき)した布都部島(バトルステージ)とでも言うべきか。


 それはそうと、この会話に一人ついていけない華はなんのことかと口を(はさ)む。


「ちょっと、眼球の移植ってなんのこと?失ってからって言ってたけど、まさか………」


 何を言い出すのかと思い、緊張(きんちょう)のあまりゴクリと生唾(なまつば)を飲み込む悠人。


「その魔夜さんって人、視界がもう………」


 そう言って、突然泣き出す華。


 どうやら彼女は眼球そのものを失ったと受け取ったわけではなく、病気か何かで視界を失ったという方で受け取っていたようだ。


 まあ普通の人ならそう受け取るだろうと思った上で普段の声量で話した…というより、ヒソヒソ話はさっき注意されたばかりだったので普通に話した訳だが、彼女がそのように受け取ってくれたことに内心ホッとする悠人であった。


「な、泣くなよ。これで魔夜さんは視界良好(しかいりょうこう)になる訳だし」


 確かにそれは間違ってはいない。だが、目魂主(めだまぬし)としての命を取り戻せたかというと嘘になる。


 初めから目魂(めだま)を片目しか持たない悠人には命が一つしか無いが、魔夜には元々二つあった命――、それが一つになってしまった現実を義眼なんかで埋めることはできない。


 元々無かったのと、元はあったものを一つ失うのでは、(いのち)有れどもつらいところがある。


 人よりあったものを失った人間というのは、自然と心に余裕が持てなくなってしまうのだ。


 それでも彼女を外に連れ出さなくてはならない。


 奪わなければ死ぬのは、自分自身なのだから…………


 そんな境遇(きょうぐう)にいるであろう魔夜に、涙を流す幼馴染を彼が(なだ)めながら、三人は彼女の家に向かって歩き続けた。


 そして歩くこと数分、彼らは夢見宅の玄関前に来た。


「ありがとね、ゆっと。私のわがままに付き合わせちゃったりして」


「久しぶりに会ったんだから、一緒に帰ることくらいどうってことないって。

 それじゃあ、俺達は用があるからもう行くよ」


 家に着くまでに泣き()んでくれた彼女を送り届け、身軽になった悠人と未予はその場を後にした。


 その流れで華は家に入ろうとしたのだが、二人が視界に消えたその瞬間――、彼女は突然その足を止めた。


(ちょっと、二人して用があるって一体どんな………?やばい、気になるよぉ〜〜。よーし!こうなったら、二人の追跡(ついせき)だわ!)


 こうして夢見華による二人へのストーキングが今始まるのだった。

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