⒈ 目交(1) ゆっと
《布都部島》ーそれは震災による多くの建物の崩壊によって、まるで【布】のように平地と化し、そのかつての場所が沿岸に面したとある県の首【都】大陸であり、そこの大地の一【部】が分断され出来た孤島からその名がきているのだと言う。
これはその歴史的とも言える大震災をいつまでも忘れぬよう、ここで暮らす人達で島の名前を募集し合った結果――、布都部という名前が名付けられたと言われている。
そんな孤島へとある人物が渡ってきた。
「……ようやく、着いたんだ」
船着場に足を踏み入れた乗客のその殆どは大人が多い中、海風にまかせて耳前から肩下にかけて緩やかなカールを描く巻き毛がなびく空の下――、一人年若き少女の姿があった。
両腕に外温防護用のアームウォーマーを付け、女の子らしくおしゃれの一環か、将又、この厳しい時代ならではの強烈な日差しから来る紫外線対策か――
頭には可愛らしいマッシュルームハットを被っており、ワンピースタイプのNEMTDーPCで女の子らしさを感じさせる装いをしたベージュ色の髪をしたその少女は、日本本土にあるNEMTD株式会社(旧本社)で働く両親の転勤の関係で今日からこの度、布都部島にて生活することとなった。
「こらっ、華ったらッぼーっとしちゃって。これから島上陸の為の審査も控えているのだから、早くしないと日が暮れるわよ」
「おーい!早くこっちに並んで来なさい」
「あ、待って!母さん父さん」
通常、一般人が布都部島に上陸することは不可能とされており、ある条件をクリアした者のみ、その地に足を踏み入れることが許されている。
元々が島の存在を伏せられているぐらいであるからして、何か色々と深い陰謀やら秘密やらありそうなことは想像も付きそうものであったが、その真相は最早――
全世界の生活環境を支えていると言ってもいい、NEMTD株式会社の本社がこの島にあるということで金利的な問題もあってか、研究技術を盗もうとする輩を近づけさせないよう、色々と規制が厳しく設けられている。
事実、NEMTD株式会社社長の『本間凞彦』の強い権力によって、島の一部に軍事基地が設置されており、海はおろか空からの侵入を一切受け付けないようにしているぐらいだ。
唯一上陸する為の課せられた条件:それは係留施設前に佇む、丸々一隻の船が通れる程の巨大な扉に埋め込まれた液晶モニターを介して出入港管理局とのやり取りの末――
事細かに上陸理由を伺ったり、ドローンを使った荷物検査だったりを出入港管理局が厳正な精査で行い、その結果で揚陸許可の許諾が降りた者にのみ、通行許可証のIDカードを出入港管理局より手配され、初めてその扉が開かれる。
だがそれも、生き返って目魂主となった者が目神ヘアムによって、この島へと飛ばされて来た場合は別の話だが………。
ちなみに漁師がお仕事の為、島の外へと一時的に離れる際にも、必ず漁をする為の許可証なるものが必要不可欠であるのだとか。
それを貰う為には〈漁目的で布都部島からの無断出港しないこと〉を約束に、万が一にも破ってしまった時には罰金が科せられることを、毎度その度にサインを書かされては――
島から一定の距離を離れると光と音で出入港管理局に知らせる、島の漁師に配当している専用アラームが出港漁船の目立つ箇所に予め取り付けられていることを確認の上、漁船登録番号と乗組員の名前、それと出船の時間を記録され、あれこれチェックを受けるのだとか。
はっきり言って、面倒臭い規制である。
「元気にしてるかなぁ、ゆっと」
彼女はどこか懐かしむ様にそう言葉を漏らすのだった。




