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⒍ 洞視(2) 謎の追跡者

「……(なん)でまた、このようなものを用意しろと、お嬢様は言ったのでしょうか?」


 あれからというもの――、メカニカルなデザインをした片っぽのキツネ耳のカチューシャを付けたメイドのジョジョ・ユ=ルナールは、刹直(セツナ)の武器作りに必要な材料を(そろ)えて来て欲しいと買い出しをさせられ、今はその帰りだった。


 格好……に至っては特に気にする素振りも見せず、同じくブシュラの使用人である町田リンジーも同様――、二人の着ているメイド衣装は他では出回っていない特注のNEMTD(ネムテッド)PC(ピーシー)であり、金持ちの財力を遺憾(いかん)なく発揮した二人の為の一張羅(いっちょうら)である。


 それ故にこのメイド衣装のまま外出をしたところで何も変なところは無いのだが、いかんせんイヤリングは別として、その奇抜な衣装性と片っぽのキツネ耳のカチューシャの存在感足るや――、通り過ぎる人々から注目を浴びせられていた。


 家主のブシュラから直接――、“プレゼント”と称して例のゲーム開始の宣言が通告されてから程なくして二人宛に渡してきたこの【イヤリング】と【カチューシャ】だが、渡す際にメイド(使用人)二人に向けてこのような言葉を残したという。


 『これは二人に向けた御守りのようなものだ。肌身離さず身に付けておけ』――と。


 わざわざそのようなことを口にしてまで手渡したからには、まるでこれらの品を介して主人への忠誠心を試すような真似をされているような気がしてならず――


 自然と身に付けて続けているこの二つのアイテムだが、実はこのプレゼントにはメイド(使用人)二人とも気付いていない、ある秘密がその中に()()()()()()()


 それぞれの【カチューシャ】に付けてある獣耳の中には綿に紛れて()()()()()、【イヤリング】には()()()が仕込まれており、絶対的な信用を常に持ち続けられるようにと研究やら開発やら好きなブシュラ自作の品である。


 まさに二人の身分を利用した手で自然とそれを携帯させ、今この時も監視されているとはいざ知らず――


 ジョジョはそんな独り言を漏らしながらホームセンターのビニール袋をぶら下げて屋敷に向かって歩いていると、下はミニスカートタイプ、上はファスナーの付いた、赤いパーカータイプのNEMTD(ネムテッド)PC(ピーシー)羽織(はお)った何者かが彼女の後を付けて来ていた。


 その者はフードを目深に(かぶ)っていた為に顔がよく見えず、まさにジョジョを嗅ぎ付ける《不審者》といった感じだった。


 すぐにそれを察知したジョジョは近くの角を曲がるとその瞬間――、勢いよく駆け出した。


 走りづらいメイド衣装のNEMTD(ネムテッド)PC(ピーシー)を着ているにも関わらず、それをものともしない軽やかな動きでみるみる内にその怪しげな存在から逃げるように、大きく距離を離して行く。


 すると奴はすぐにジョジョの跡を追う訳でも無く足を止めては、フードの奥からは怪しげに光る二つの光の存在があった。


 その者はしばらくの間だけ前方を直視していると、彼女が曲がった道とは別方向に向かって走り出した。


 一切の迷いも無しにクネクネとした道を駆け回っては、一つの道に差し掛かったタイミングであろうことか再び、その者はジョジョと遭遇をする――。


「なっ……!」


 ジョジョは何故(なぜ)こうも容易く追い付かれたのか、訳が分からず驚いてしまうもすぐに近くの路地裏へと駆け込んだ。


 だがそこに足を踏み入れた直後――、その先が行き止まりであることに気が付いたジョジョ。


「しまっ……」


 すぐに奴もここに現れるとどうしたものかと思ったジョジョは、休業中の看板(かんばん)がぶら下がった酒屋と隣の家のフェンスの間の(わず)かな隙間に向かって無理矢理に身体を押し込み、奥へ奥へと進んで行った。


 ドタバタしているあまり、店先に置かれたお酒の空き(びん)を次々と割り落としていくジョジョ。


 追い掛けてきたその者が割れた酒瓶の欠片をいくつか拾い上げると、それをジョジョに向かって放り投げる。


 欠片は彼女の(ひたい)耳輪(みみわ)、右腕やメイド衣装を何ヶ所か切り付けられ、所々から血液がツーっと一線を描くように(したた)り落ちる。


 負傷しながらもどうにかその狭い隙間を抜け出すと、そこから更に少し進んだところでジョジョはスカートのポケットから、何やら透明な液体の入った小瓶を取り出していく。


 蓋を開け、中の液体を手の平に何滴か垂らし、それを傷口に塗りたくり始めると、(またた)く間に傷痕が消えていき、元の綺麗な肌を取り戻していく。


 何やらその液体にファンタジーゲームであるところの《ポーション》のような即効性回復効果でもあるのか、もしもそんなものがこの世界にあるとすればそれは常識を超えた力を振るう、目魂絡(めだまがら)みの力が働いていることだろう。


 何を隠そう――、このジョジョも目魂主(プレイヤー)の一人であり、気になる能力はすぐに明らかとなった。


 すっかり傷の癒えたジョジョは先程から自分を付け狙う、奴の能力の正体が掴めていない状況とはいえ、いくら逃げ続けていてもすぐに追い付いてくる不気味さに嫌気が指し、ある一つの手段に出る。


 ジョジョは近くに捨ててあったゴミ袋を目にすると、自身を含め、身に付けてあるものや手に持っているもの、それらが全て彼女が視界に(とら)えたゴミ袋へとその姿は()()()()()()


 それはまさに、化け狐の変化(へんげ)を思わせるような現象であった。


 どうやらジョジョが持つ目魂(めだま)には、目で見たものに変身出来る能力でも宿っているようだが、その効果範囲は意外にも大きいようである。


 フードを被った謎の人物も同様――、狭い抜け道を通り抜けるとそこでジョジョの姿を見失ってしまい、辺りをキョロキョロと見回し始める。


 奴は両目を光らせ、何処(どこ)か遠くを見つめるような仕草もしていたが、謎の能力を持ってしても、ゴミ袋の姿になったジョジョを(とら)えることが出来なかった。


 その者は舌打ちを鳴らすと捜索(そうさく)(あきら)めたのか、この場を後にした。


 視界から奴の姿が見えなくなったところでジョジョは能力を解除し、元の人の姿へと戻った。


 目魂主(めだまぬし)の治癒力を持ってすればあの程度の傷はすぐに完治した筈だが、彼女は能力を使ってやり過ごそうと考えた為、変化(へんげ)する上で痕跡を残さぬよう、あの液体の力で()()()()()完治させる必要があった。


 中途半端に治りかけの状態でゴミ袋に変化するとあっては、姿は誤魔化(ごまか)せても流れ出る血液までは隠せない。


 ごみ袋から血液が流れていたら、奴の目から逃れることが出来なかったであろう。


「私の変化(へんげ)を見破ることが出来なかった………ということは、奴が私を追い掛け回すことが出来たあの力の正体はもしや――

 万が一にも警戒していた、《探知系能力》では無かったというもの…………。

 となれば、奴が使った能力は『見破る』のではなく『見透す』力――

 それこそ――【透視】………もしくはそれに近しい……………

 何にせよ、この事は屋敷に着いたらすぐにでもお嬢様にお伝えしなければ」


 ジョジョは急いで、屋敷へと戻るのであった。

〈能力解説〉目力:【化視(バカ・シ)


目で見たものと同じ姿をとることが出来る異能


ただし、あくまでも外見上同じ姿になれるだけなので、人に変化(へんげ)した場合はその人の声色までもが同じになれる訳では無い。


また、能力の作用は能力者の身体の内部ごと変化を可能とする為、化けた状態でレントゲン写真撮ろうとしても、中の骨の骨格やら臓器が残った形で映る訳でなく、それすらも形を変え、化ける対象物と何ら遜色の無い完璧な変化(へんげ)を可能とする。


例えばゴミ袋なら中に入ったゴミを再現、機械類なら動力源や内部パーツなどにその形を変えるようなものである。


                         情報提供者:M.K.   

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